【創作】note:Data 2021/02/01/1、天鈿女命3
太陽が日中突然消えてしまう皆既日食は、古代の人々にとって天変地異であり脅威でした。古代の中国では天変地異は政治の上で非常に重要な事件で、詳しく調べられ記録もたくさん残っています。中国を治める天より与えられた「天子」ですから、天の声に従って国を統治しないといけません。そのため、天文官という専門職も設けられました。
太古の日本は中国の先進文明の恩恵をまだ受けていないアニミズムの世界で、日食・月食を天文学的に予報する科学力はありません。しかし、例えば「卑弥呼」=「日巫女」ですから、太陽信仰があって、太陽という絶対神から統治権を与えられていました。その太陽が日食で陰る、というのは、「日巫女」の力が削がれた、なくなったこととなります。
日本の歴史書に記されている日食の最初の記録は、日本書紀の「三月丁未朔、戊申日有蝕尽之、日有蝕尽之(三月の丁未の朔、戊申に日、日蝕え尽きたること有り)」である。西暦628年4月10日(推古天皇36年3月2日)でした。
しかし、推古帝の前の時代、西暦247年3月24日、248年9月5日とたった一年半の期間で、二度も日本に日食が起こったことがありました。
247年3月24日の時は、アフリカから朝鮮半島まで、中国(魏)の洛陽や長安では夕方、皆既日食が見られました。日本では、すでに太陽が沈んだ後でのことです。しかし、部分日食は日没前に始り、その欠け具合は西にいくほど大きかった。近畿では日没時に半分欠けましたが、北九州では八割くらい欠けました。地平線近くで欠け始めて、細くなりながら地平線に隠れていく太陽を見て、当時の日本人は、明日はもう太陽が二度と昇って来ないのではないかという不安を駆り立てる光景でした。
この日食で、狗奴国の国王で男性の卑弥弓呼王は、「ヤオロズ」達に「卑弥呼」=「日巫女」の霊力に対する疑いを述べました。卑弥弓呼王は、邪馬台国傘下の諸国を扇動して、卑弥呼を謀殺させることに成功しました。卑弥弓呼王が邪馬台国を簒奪することとなりました。「ヤオロズ」達もそれを認めました。
ところが、翌年、一年半しか経っていないのに、またも太陽が欠けることが起こりました。
248年9月5日、早朝。日の出前にすでに日食は始まっていました。太陽が昇って来た時にはすでに真っ黒く欠けていました。午前七時までで日食は終わりました。皆既日食が見えた範囲は、能登半島から北関東さらに太平洋上でしたが、邪馬台国と傘下の諸国のある九州、山陽山陰地方でも太陽は九割ほどの部分日食となりました。
一年半の期間で二度目の日食。「ヤオロズ」達は、やはり男性の王では、「卑弥呼」=「日巫女」たり得ないと判断し、卑弥弓呼王を謀殺、卑弥呼の宗女(卑弥呼の一族の首長の娘)の「壹与/台与」(とよ、いよ)を二代目の「卑弥呼」=「日巫女」として、邪馬台国の女王の地位を継がせました。一代目の卑弥呼が謀殺されたのが七十才の時でした。「壹与/台与」が即位したのが十三才の時です。
二代の「日巫女」が「卑弥呼」、「壹与/台与」という名でしたが、いずれにせよ、絶対神としての名称は、同じ「アマテラス(天照)」でした。
247年正月、天鈿女命は巫女の正装に着替えて、玉砂利の道を本殿の脇にある卑弥呼の寝殿に歩いていました。卑弥呼が人類の女性にβ3が憑依(常にではなく、必要なときだけ憑依していた)しているのに対して、天鈿女命は、δ3が人類女性に実体化した姿です。
例えてみれば、卑弥呼は、ウルトラマンが科学特捜隊のハヤタ隊員という実在の人類に憑依しているのに比べて、天鈿女命は、ウルトラセブンが人類に実体化したウルトラ警備隊のモロボシ・ダンのようなものです。
ですから、憑依していないハヤタ隊員は単なる人類で、人類男性の能力以上の能力は発揮できないのに比べて、純知性体δ3が実体化しているようなモロボシ・ダン隊員はウルトラ一族の能力を変身しなくとも持っているようなものです。
ただし、ウルトラマンがM78星雲に帰ってしまっても、ハヤタ隊員は地球に存在しますが、ウルトラセブンが死んでしまったら、その変身前のモロボシ・ダン隊員の存在も消えてなくなります。
そのような状態に、卑弥呼と天鈿女命はありました。正月に天鈿女命が卑弥呼にアポをとって、彼女の寝殿に向かったのは、三ヶ月後の3月24日に迫った日食に対する純知性体としての対応策を相談するためです。
卑弥呼は、最近、人前に出ません。寝殿から正殿に行き来するだけです。七十才という年令による老いをさらしたくなかったためです。卑弥呼の世話は以前から弟の月読命(ツクヨミ)と天鈿女命が洗脳した人類女性の巫女集団が行っていました。
天鈿女命は、卑弥呼の寝殿に行くのが嫌いでした。それは、卑弥呼が憑依される時の儀式に対する嫌悪感からです。
天鈿女命は、彼女の率いる巫女集団に自分のプルーブを憑依させる際には、九字を切らせ、神楽鈴を鳴らして巫女舞を踊らせ、巫女たちがトランス状態になった時に憑依させます。
ところが、卑弥呼、卑弥呼以前の王国の「ヤオロズ」達のトランス状態の持っていき方は、「性交」によるエクスタシー状態の時に憑依するものでした。それも、血族ではない男性は儀式の秘密が保てないために、「日巫女」の憑依儀式の「性交」の相手は、兄弟や従兄弟だったのです。
建速須佐之男命(スサノオ)が出雲に追放される前は、卑弥呼の性交の相手はスサノオでした。スサノオが追放された後は、卑弥呼の弟の月読命(ツクヨミ)が性交の相手となりました。
七十才の老婆が六十代の弟と性交して、トランス状態になり、β3が憑依する。その行動を御簾の背後とは言え、天鈿女命は見ていなくてはなりません。そういった近親相姦のおぞましさは、δ3としては耐え難かったのです。β3は、別段、高天原の「ヤオロズ」一族の太古からの儀式に干渉する気もなく、たかが人類のアニミズムに基づくものだから、そのまま執り行わせていました。しかし、人類に実体化したδ3は、ある程度の人類の感覚も持ち合わせたために、その行為に嫌悪感を抱いたのです。
卑弥呼は、七十才の老婆とは言え、β3の憑依体ですので、美熟女と言ってもいい。美貌は昔よりもはるかに衰えましたが、まだまだ、現役です。彼女の精を吸収している弟の月読命(ツクヨミ)も六十代よりもはるかに若い。その二人が獣のように御簾の内でまぐわっている。卑弥呼がエクスタシーを迎え、トランス状態になるのに、この老人たちは一時間以上もセックスに費やしているのです。
天鈿女命は、それを御簾の外、彼らがまぐわっている直ぐ側で待っている。実に気持ちが悪い行為と言えますが、δ3としてもβ3が放置している儀式に文句は言えません。
また、最近は、卑弥呼の宗女(卑弥呼の一族の首長の娘)の十才になる「壹与/台与」(とよ、いよ)にもトレーニングと称して、彼女の弟との性交をさせています。
(こういう近親相姦を容認しているから、純知性体のβ族はダメなんですわ。δ族とは方向性が異なるわね)と天鈿女命は思いました。
御簾の内で、獣のような声も収まりました。月読命(ツクヨミ)も御簾の外に出て下がりました。御簾の内側から、卑弥呼に憑依したβ3が天鈿女命に声をかけます。
「あ~、この女の体、まだジンジンしてるわ。さて、ウズメ、δ3、今日は何の用事ですの?」
「ヒミコ、β3、あなた、気持ち悪くないの?そんな体に憑依して?」
「何十年もしてるので慣れてしまったわ。この『ヤオロズ』族の女系DNAは、淫乱淫靡の形質を持っているので仕方ないでしょう?この体の何代か前のイザナミだって、あまりの淫乱さで一族に謀殺されたじゃない?』
「御簾の外でそれを聞かされる私の身にもなってほしいわ」
「私は、あまりこの一族に干渉したくないのよ」
「私の神楽鈴なら、いつでも貸してあげるのに。私の処女の巫女達は清らかにトランスに移行しているのに。元締めのあなたがセックスしているのって、なんだかなあ~と思うわよ」
「でも、あなたの巫女達はレズってるじゃないの?」
「処女を守るのに、その程度は容認してます」
「まあ、どうでもいいわ。それで何の用事ですか?δ3?」
「247年3月24日と248年9月5日の日食は知っているわよね?」
「ああ、ベータの天文ユニットが教えてくれたわ」
「それで、どういう対処をするの?」
「そうねえ、もう、この老婆も飽きたし、壹与に代替わりさせるのにちょうどいい機会だと思うのよ。そうね、ウズメに一芝居してもらおうかしら?」
「どういうように?」
「まず、247年3月24日の日没後、ヒミコには天岩戸、あの洞窟に入らせる。ウズメはヤオロズ達に耳打ちして、卑弥弓呼王にヒミコを謀殺させる。その後、ヤオロズ達が卑弥弓呼王を邪馬台国の王に即位させる」
「248年9月5日の時は?」
「日の出前に壹与を天岩戸に入らせて、ウズメが岩戸の前で得意の踊りをしてもらって、七時の日食が終わる時間に壹与をウズメが引き出す。その時に鏡とか、道具も忘れずに。それから、ヤオロズ達に卑弥弓呼王を忙殺させて、太陽を復活させたヒロインということで、壹与を二代目「卑弥呼」=「日巫女」として、アマテラスの地位に即位させる、こういう筋書きでどうでしょう?」
「β3、老婆のセックスを見させた後、私は今度は幼女のセックスを見学させられるの?」
「そのくらいは我慢しなくちゃあ。ベータの知識とデルタの知識の物々交換、知識増大のためですもの。壹与もなかなかのものよ。ヤオロズのDNAを引き継いでいるから、もう毎日、弟と近親相姦ゴッコをしているわ。憑依するのも若いから楽よ。なにせ、月読命(ツクヨミ)と違って、壹与はすぐエクスタシーに達するし、壹与の弟も早漏ですから。ウズメの待ち時間も短くなるわ」
「気持ち悪いんですけどね。近親相姦に変わりはないもの」
「まあ、我慢なさい。壹与の後のストーリーも考えてあるから、その内説明するわね」
「しょうがないわねえ。でも、この実体化したウズメの体は、強化してあるから、寿命も長いし、脳の容量も普通の人類の1ペタバイトの十数倍に設定してあるから、壹与の寿命が尽きた後も、ウズメはヤオロズ一族に付き合えるわ」
「ウズメには、天孫降臨まで頑張ってもらわないとね」
「天孫降臨?」
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