『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこを読む。
「Empathy(他人の感情や経験などを理解する能力)とは何か?で、お前は、何て答えを書いたんだ?」 「自分で誰かの靴を履いてみることって書いた」p.73
今更ながら読んだけどこれはおすすめ。イギリスの元底辺中学に通う息子とブレイディみかこさんのリアルな自伝的エッセイ。
わかりにくいことをわかりにくく書く本や、わかりやすいけど中身スカスカな本はたくさんあるけど、こんなに面白くてシニカルでウィットに富んでるのにズシっとくるやつは久しぶり。ぼくはイエローで、ホワイトで、ちょっとブルーなんて感じる必要もないように見える日本で生きてるからこそ読まなきゃって感じました。
以下本文抜粋
「うん。どうしてこんなにややこしいんだろう。小学校の時は、外国人の両親がいる子がたくさんいたけど、こんな面倒なことにはならなかったもん」
「それはカトリック校の子達は、国籍や民族性は違っても、家庭環境は似ていたからでしょ。みんなお父さんとお母さんがいて、フリー・ミール制度なんて使っている子いなかったでしょ。でもいまあんたが通っている中学校には、国籍や民族性とは違う軸でも多様性がある」
「でも、多様性っていいことなんでしょ?学校でそう教わったけど?」
「うん」
「じゃあどうして多様性があるとややこしくなるの」
「多様性ってやつは物事をややこしくするし、喧嘩や衝突が絶えないし、そりゃないほうが楽よ」
「楽じゃないものが、どうしていいの?」
「楽ばっかりしてると無知になるから」p.59
最近よく多様性を大事にするって言葉をよく聞く。言うの簡単だけどそんな簡単にできることじゃない。でも、大事なんだということを教えられる。
「うちの息子なんか、アイリッシュ&ジャパニーズ&ブリティッシュ&ヨーロピアン&アジアンとめちゃくちゃ長いアイデンティティになっちゃいますよ」私が言うと校長が答えた。
「でしょ?でも、よく考えてみれば、誰だってアイデンティティが一つしかないってことはないはずなんですよ。」p.65
アイデンティティはこれだ!なんて明確にできたら楽だろうけどそんな簡単に自分を定義づけることなんてできない。だからこそ面白いのかも。
「差別はいけないと教えることが大事なのはもちろんなんだけど、あの先生はちょっと違ってた。どの差別がいけないって言う前に、ヒトを傷つけることはどんなことでもよくないっていつも言っていた。だから2人を平等に叱ったんだと思う」p.70
人種差別、偏見、排除、疎外、レイシズム、Blacklivesmatterという言葉を頻繁に聞くようになったけど、人を傷つけたら、自分が傷ついたらどう感じるのか。そこをみんなで共有できたら世界はもっとシンプルになるのにって思っちゃいました。
ワイルドサイドをほっつき歩けも読みたいなあ。