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大学生時代、本の感想だったアカウントを再び復活してみました。今後どうしようかと

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大学生時代、本の感想だったアカウントを再び復活してみました。今後どうしようかと

最近の記事

『法廷遊戯』を読む。

ミステリーとして超一流。でもそれだけで終わるのではなくて多くのメッセージを含んでいる。 読み終わった後にそう思った。 ロースクールに通う学生の間で流行り出した法廷遊戯、無辜ゲームから始まり、三人の登場人物を主軸にしながら物語はどんどん展開を早めていく。 見えそうで見えない伏線の数々、論理的であろうとする法律の中で織りなされる複雑な人間関係、読み手を引き込んではなさないストーリー展開。 面白いです。 でも、そこにあるメッセージは深い。 人が人を裁くという矛盾 司法

    • 『大学生活を極める55のヒント』を読む。

      人生に失敗というものがあるのなら、何もしないこと、それが失敗なのであって、全力で何かをして失敗すること自体は、大きな成功なのだと思うのです。p.92 著者の京大での貧乏大学生活の経験をもとにした、読みやすいエッセイです。最初に断っておきたいのは京大は日本の中でもかなり自由度の高い大学であるし、著者の学生時代は特に牧歌的な大学の学びが許されていたということ、つまり今とは違うということです(現大学生の自分からするといやいやそれはないと思ってしまうこともある)。単位は空から降って

      • 『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこを読む。

        「Empathy(他人の感情や経験などを理解する能力)とは何か?で、お前は、何て答えを書いたんだ?」 「自分で誰かの靴を履いてみることって書いた」p.73 今更ながら読んだけどこれはおすすめ。イギリスの元底辺中学に通う息子とブレイディみかこさんのリアルな自伝的エッセイ。 わかりにくいことをわかりにくく書く本や、わかりやすいけど中身スカスカな本はたくさんあるけど、こんなに面白くてシニカルでウィットに富んでるのにズシっとくるやつは久しぶり。ぼくはイエローで、ホワイトで、ちょっ

        • 『四畳半神話体系』森見登美彦を読む。

          さえない主人公、黒髪の乙女、漂う悲壮感と馬鹿らしさ、比喩と言い回しの美しさ、ミステリアスで、でもどこか引き寄せられてしまう京都の街並み。 これこそ森見ワールド全開の作品です。 森見登美彦さんの作品は決してスピーディかつダイナミックに進んでいくわけではないです。むしろあっちに行ったりこっちに行ったりと寄り道しながら、カオスの中で何かを求めているのです。 あと、言葉が心地よい。シニカルで屁理屈な言葉をここまで高尚なものにできるのかという矛盾に打ちのめされる。 「異性との健

        • 『法廷遊戯』を読む。

        • 『大学生活を極める55のヒント』を読む。

        • 『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこを読む。

        • 『四畳半神話体系』森見登美彦を読む。

          『僕は君たちに武器を配りたい』瀧本哲史を読む。

          これから社会で生きていくためには、、、 コモディティ化するよりスペシャリストになれ。 前半で繰り返し語られる、スペシャリスト(誰もができる仕事、サービスではなく、専門性を持った分野を持つ)になれと言う言葉に共感します。 今や人間の能力すらコモディティ化(ありとあらゆる物、サービスの価値が均等化し量産されること)するようになった時代において、誰もができる仕事、分野で安心と安定を望むことはできない。 その人がどんなフィールドに進むかによって変わるだろうが、学生時代、若い内

          『僕は君たちに武器を配りたい』瀧本哲史を読む。

          『君たちはどう生きるか』吉野源三郎を読む。

          すごい本を見つけてしまったという嬉しさでいっぱいです。 今更ですが、読みました。正確には僕が読んだのは写真にある改装版ではなく、岩波文庫の古い方なのですが、内容は同じなので新しい方の写真を載せました。 中学2年生のコペル君とおじさん。コペル君は日々生きていく中で感じたこと、考えたことを、たまに現れるおじさんに伝えます。 おじさんはおじさんノートというものでそれに真剣にユーモラスに答えてくれる。 題名にあるように僕たちはこれからどうすればいいのか、何を考え、選び取ってい

          『君たちはどう生きるか』吉野源三郎を読む。

          動物記(高橋源一郎)真っ正面から見たこの世界は本当なのかい?と問われる一冊。

          源一郎先生の本は何冊か読んできましたが相変わらずカオスです。 常識とか、当たり前の真理とか、そんなものを乗り越え、いやぶっ壊そうとしている。 でもそっちが本当の人間の姿なのかもしれないとも思わされるんです。 動物記というタイトル、かわいい動物のイラスト、のほほんとした小説なのかなあという人間的予測は31ページで終わる。 みんなは物事を真っ正面から見るのが正しいとか思っているけど、それは本当なのかい?と問われる。 この本は世界を斜めから、いやもう逆さまから見ているんだ

          動物記(高橋源一郎)真っ正面から見たこの世界は本当なのかい?と問われる一冊。

          「This is the Life」アレックスシアラー を読む

          決して有名ではないが、大好きな作家の1人です。 アレックスシアラー の自伝ともいえるフィクション小説。 なんだろうこれまで読んできた彼の作品とはTasteが全く違う。 それでも所々に見られるシニカルでウィットに富んだ言葉のキレが心地よい。 現実と過去が、フィクションとリアルが、希望とあきらめが、新しさと古さが同居するような書き方にどんどん溺れていく。 『だが、それはこの世界じゃない。おれたちはこの世界でやっていくしかない。』P.90 ただ生きるために生きることに意

          「This is the Life」アレックスシアラー を読む

          『舟を編む』を今更ながら読みました。

          まず、舟を編むという想像力をかき立てる名前が秀逸です。 辞書という大きく、広大な言葉の海を渡る舟を編んでいく物語。 言葉を生業とする人々の世界の奥深さもさることながら、個性と愛情溢れる登場人物も魅力的です。 全く色の異なる登場人物たちが、入れ替えわり立ち替わり話の視点が変わるので読み手を飽きさせないです。 『大渡海』という広大な辞書を編纂中の彼らはいつも時間に追われています。 でもこの物語に流れる空気はどこか温かくのんびりしているのです。 時間がないと感じられる時

          『舟を編む』を今更ながら読みました。

          斜陽(太宰治)を読んでみた。

          春休みに入っていつも読まない本を読んでみたくなって斜陽を読んでみた。 高校生の頃、人間失格を読んで強く感銘と共感を覚えた。 太宰治に共感を受けてたら社会で生きていけなくなりそうだなと思いながらも引き込まれた。 斜陽を流れる空気は、退廃的で、破滅的で、虚しさと、寂しさでできている。 でも、その中に何か捉えがたい熱があって、灰色に見える世界がよりひかりを放つ。 ここには論理的構成も、明確な読者へのメッセージもない。 ただ人が生きている、生きていこうともがく姿が描かれて

          斜陽(太宰治)を読んでみた。

          初ノートなので自己紹介を勝手にやってみる。

          まず、自分を紹介するという行為に客観性はない。 ポジティブに捉えてもいいし、ネガティヴに捉えてもいい。 自分で好き勝手に自分を考えてみる。 僕は身長はまあまあある。至って健康。目が悪い。運動神経は良いらしい。数学ができない。 趣味は小説を読むのが好き。寝るのが好き。人がやらないようなチャレンジをするのが好きだ。 多数派であるよりは少数派でありたいと思っている。 人の目なんか自分の価値に関係ないと思いつつ、かなり人目を気にする矛盾にいつも悩まされている。 人生は常

          初ノートなので自己紹介を勝手にやってみる。