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#137_【調査・研究】軍事史跡との向き合い方

連休中は次の仕事の仕込みのことを考え、ずっと引きこもる予定だったのですが、連休前の天気予報よりも好天に恵まれ、何もしないのはもったいないと感じ出掛けることにしました。

最初は白嶽か金田城に、と思いましたが、最近メディアで取り上げられる機会が増え、お客さんが多いと予想。それ自体はありがたい話なのですが、車で行くと駐車スペースに限りがあり、よく行く我々でも難儀します。
他所の方からしたらなおさらかと思い、ならば観光客がいないであろう芋崎にしましたf^_^;)。


芋崎ってどんな場所?

【この看板があるところから歩きます。】

時は幕末文久元(1861)年2月、ロシア軍艦が、土地の租借を要求し、約半年間占拠した地です。ロシア側の要求に対し、日本駐在英国公使がイギリス艦を対馬に派遣して折衝した結果、対馬から退去しました。
徳川幕府の時代が終わりを告げ、明治政府の時代に移った後も対馬は重要な場所であるという認識は変わらず、日清戦争前の明治20(1887)~21年にかけて芋崎砲台が築造されました。

芋崎砲台

秋から春にかけては、よく山や軍事史跡に行きますが、5月くらいになりますと、ガイドで依頼されない限りは行きませんので、まぶしさを増す新緑と軍事史跡の組み合わせが新鮮でした。

【石造りの棲息掩蔽部です。】
【レンガ造りの棲息掩蔽部と砲座です。】
【対馬要塞防空隊陣地跡です。軍事史跡というより古代遺跡という感じですね…。】
【探海灯が格納されていた場所です。】

ロシアの痕跡

ロシアが芋崎を占拠した時に造られたと思われる構造物の跡が、今でも残っています。

【ロシアの建屋の跡だそうです。】
【不自然に浅い海底は、波止場の跡だとか。】
【ロシア軍艦泊留地の跡には石碑が建てられました(露寇之碑)。】
【ドックは少し離れた場所に造られました。】

芋崎の突端

浅茅湾を航行していると必ず目印として紹介される芋崎ですが、陸からでも到達できます。
もちろん景色は独り占め…( *´艸)。

【浅茅湾の目印、芋埼灯台です。】
【対馬にはいい岩肌が沢山ありますが、芋崎は特に美しいです。】
【露寇之碑から突端に向かう途中の「くびれ」です。】

雑な思いつき

近代化遺産まわりの人と会う機会が増え、最近不思議に思うことのひとつに、それらの史跡を扱う方は、なぜか「古代が専門の方ばかり」というのがあります。
そもそも近代を専門とする方がほとんどいない、しかし文化財の担当部署で扱わないといけないという事情から、専門外だろうがとりあえず誰かがやらねばならないと人選したらたまたまそうなった、程度の話にも思えますが、中世や近世であれば、古文書をはじめ文字の記録もそこそこ残っているのに対し、それより昔となると、そもそも文字を読める人が限られますし、仮にあったとしても、天災や戦乱などによりほとんどが滅失していそうです。
もしかしますと、古代の研究をされている方は「発掘されたものと向き合うしかない」場面が多いので向いているのかもしれない、と思ったりします。

と、古代を扱う方を持ち上げる感じの結論になりかけたのですが、近代には文献資料も沢山あります。

そして、中世や近世を扱う方々とお話をしていますと「その情報、どこから見つけてきたんですか?」「背後にどんだけ情報を持ってるんですか?」というレファレンス能力を感じることがあります。
近年、国会図書館を筆頭に様々な施設で、一般人でもアクセスできるデジタルアーカイブが充実し、対馬にいながらにしても多くの資料にアクセスできる時代となりました。一方で、ひとつの施設のアーカイブだけでも、素人が闇雲に太刀打ちできるような物量ではありませんので、情報のアクセスの仕方を知る人の存在も重要になるはずです。

余談ですが、軍跡マニアの日課は「うがい、手洗い、アジ歴!」だそうです。
※アジ歴:国立公文書館アジア歴史資料センター。近現代の日本とアジア近隣諸国等との関係に関わる歴史資料をweb上で見られるデジタルアーカイブを公開しています。

そして、近代化遺産関係の資料で、他の時代と様相が違うのが、文書だけでなく図面や設計図のようなものも多くあります。
鎮守府日本遺産は、まさに「理系で読み解く日本遺産」ということで、工学系の研究者や高専なども加わり、ドローンや3Dスキャンなど新しい技術も駆使しながら、様々な学術交流が行われています。
文書については、古文漢文の知識がなくてもサクサク読めますが、理数系の知識がないと話についていけない場面に遭遇することが時々あります。

締め

とりとめもなく話をとっ散らかしましたが、つまるところ、探究の場面においては「できないことや興味がないことから目を逸らして、可能性を狭めてはいけない」ということなのだろうと感じましたf^_^;)。
尻込みするようでは、まだまだ夢中になりきれていないということですね…。

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佐藤雄二_ビーコンつしま
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