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#219_【文化財】山岳保全活動@白嶽

昨日、「金田城跡登山道清掃×南門見学ツアー」について記事を書きました。

実はこのイベントを実施した週末、金田城がある城山とともに対馬を代表する山「白嶽」でも、登山道の整備を通じた研修会が行われていました。
主旨と照らし合わせますと、山岳保全活動という言い方が適切ですが。

そちらの日程が先に決まっていたので、金田城の企画をかわせるようにしたいところでしたが、2年前に同様のコンセプトで行われた登山道整備に参加したところ、登山口から数百メートル丸太を運んだり、山中から両手を添えて運ぶ石を多数調達してきたりと、かなりのガチ仕様な内容でしたので、おそらく客層は重ならないだろうと判断し、泣く泣く同日に設定しました。

残念ながら、一番ハードで中身のある「登山道整備作業体験」に参加できなかったのですが、久しぶりに城山の軍道以外の登山道を歩きながら、市教委文化財課の課長の解説とともに整備後の状況を見てきたところ、いまさら言ってもしょうがないのですが「こういう考え方で整備しておいたら良かったんじゃない?」と感じることが沢山ありました。
個人的な備忘録みたいな感じになりますが、書き残しておきたいと思います。


研修会が企画された経緯

10年前、城山や白嶽に行くと休日でも人に会うのが稀なくらい「ソロ活動」を満喫できましたが、最近は平日でも駐車場に車が停まっているのを見掛けることが普通で、隔世の感があります。
根拠となる統計やデータは持ち合わせていませんが、金田城の「最強の城」認定や、低山ブームなどにより、対馬の山に対する注目が高まっているのだろうと感じます。

【金田城跡です。】
【白嶽です。】

人が出入りすることにより目が行き届くやすくなるという面もありますので、全てが悪いということもないのですが、シカの食害による土壌流出に、集中豪雨も重なり、登山道の荒廃が以前よりも目に付くようになりました。

そこで、昨年12月に設立されました「対馬市エコツーリズム推進協議会」が研修会を企画し、山梨県北杜(ほくと)市で植生回復をしながら山岳保全に取り組む「一般社団法人北杜山守隊」の方から、登山道が荒廃する過程や、適切な整備のあり方と実践をご指導いただきながら、保全組織の体制づくりについての意見交換も行われました。

【まずは、なぜこの状態になったのかをよく観察します。】
【今後どのようなことがことが起こりうるかを想像し、対応策を考えます。】
【石など周囲にあるものを活用し、植生を復元させながら土壌を安定させます。】
【倒木を使って土砂や落ち葉を受け止めます。】
【倒木や落ち葉を利用し、人の歩く道を誘導します。】

学んだこと

技術的なことだけでなく、ワークショップのプログラムづくりについても大変参考になりました。
私個人の感想で、内容もざっくりしていますが、以下の通りです。

  • 周囲の地形をよく観察しながら、人が手を加えることによって水や土砂などの流れなど、時間の経過でどのような変化につながるのかを考える。

  • 自然の復元力を引き出し、活用する。そのため、整備した後がどのように変化するのか気にしないといけないし、おそらく気になると思う。

  • 雨の日に山に入ると、水の流れが分かりやすい。

  • 常に監視できないので、人間の行動心理を利用する。

  • 整備に利用する資材は、外から運んでくるより現地にあるものを活用したほうが、運搬の労力も少なく済むだけでなく、環境に馴染みやすい。

  • 作業には、専門性が求められる内容と、人海戦術で効率的に行える内容がある。人海戦術が使えるものは、ワークショップのネタにできる。集団で作業することにより、チームビルディングにも活用できる。

  • 作業は朝から晩までギッシリ詰めない。北杜山守隊さんでは、14時以降に事故が増えるので、作業はそこまでに切り上げて、ワークショップをしている。

さいごに

ちょうどこれから、弊社では史跡保全の活動を始めるところですが、ある部分は金田城跡の整備後の様子と比較することにより、べつに誰かをディスる意図はありませんが、自然に逆らうとどこかでひずみが生じてくることを実感しましたし(実際、城を作るときには地形を考慮し、ある部分では利用もしていると思います)、保全作業の構成については、文化財課の課長の経験則と共通していることが多いと感じたりと、研修会で意図していたこととは違うところにも、多くの学びがありました。

【水が急に流れないよう平らな部分を作った箇所ですが、倒木や枝で詰まってしまいました。(金田城跡)】
【昔に作られた登山道の階段です。踏み板は腐食し金属が飛び出ているいる箇所もあります。(金田城跡)】

日々色々なことに追われておりますが、思わぬ学びにめぐり合えるよう、一見関係なさそうなことでも「きっとその先に、いま取り組んでいることとつながっている」と思える余裕を持ちたいところです。


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佐藤雄二_ビーコンつしま
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