わたしの「仕事論」
こんにちは!現在カナダのVancouverに留学している日本の大学生、sasaと申します。coop(コープ)という「勉強とお仕事」が合体したプログラムの元、ローカルのマーケティング会社での営業の経験(+葛藤と辞職)を通じて、今回は、現地での経験をもとに「お仕事とは何か」に関する自分なりの見解と、自分の将来のキャリアについて大切にしていきたいなと思う考え方を、文章にしていこうと思います。
今回は”留学生”という視点ではなく、帰国後、就活をする前の一学生として、自分がこの一か月、考えに考えぬいた自分の中での「仕事論」みたいな感じの一部を、皆さんにシェアできたらと思います。
現地企業・オフィス勤務への憧れから企業へ...?
もともと、カレッジではビジネスを勉強していました。就労期間には現地の企業で働くことが夢だったので、「~の店員さん」という接客のお仕事よりは、オフィスワークみたいなOLさんみたいなお仕事に非常に憧れがあって、デスクワークや、ミーティングを経験して、会社の内部のお仕事を実際にやってみたい気持ちがあったので、自分が興味のあるマーケティングのエントリーレベル(初心者)のポジションをIndeedでひたすらに応募していました。
そこで、他の企業のマーケティング部門を担う、アウトソーシング会社の「Marketing assistant」というポジションに応募し、後日2度に渡るインタビューを通じて採用メールを頂きました。憧れのオフィスワーク。フォーマルな恰好をして来いと言われ、オフィス用のYシャツやパソコンの入るバッグを買ったりして、初出勤を楽しみにしていました。
初出勤、ドキドキしながらドキュメントに書かれてある住所に行ってみても、それらしき会社の表札はどこにもありませんでした。たまたま関係者の方とすれ違い、案内された2階のオフィスらしき部屋には、イスも机も一切置いておらず、5人の枠で入ったmarketing assistantのポジションでしたが、オフィスにはざっと10人ほどの新しき社員がいて、その職場の雰囲気や人の”感じ”から、「なんか、違う。」と思いました。
コントラクトと、インタビューの話と全てが違う
私が行っていた業務内容を簡単に説明すると、私が任されたのは、街中で人に声をかけまくってNPO団体の募金調達を行うというお仕事(外でやるセールスみたいな感じ)でした。日本式で考えると結構すごいことをやっているイメージありますよね。キャッチみたいな感じで全っ然知らない人に声をかけて、募金のお願いまで持っていく、そんな仕事です。
任された業務はJob description(業務内容)に書いてあることと、何一つ一致しませんでした。月から金のfull timeだと書いているのに、土曜も出勤だと言われ、タイムカードはない。毎週会社内での飲み会があり、親睦を深めるためか毎週どこのバーに行くかを朝のミーティングで話し合ったりする。9時出勤であったが、朝の12時までの時間はミーティングとトレーニングのため、労働時間には含まれないと告げられます。インタビューを受けて採用された人は"Employee Guaranteed Pay"というベーシックのお金が入ってくると紙には書いてあるものの、、そのようなベーシックペイも何も存在せず、給料は全てcomission(出来高)だと上司に言われました。ポジションの名前も、予想されるお給料も、indeedに書かれてあった内容と全く異なり、実際にもらうお給料を時給計算してみると、最低賃金15.2ドル(ざっと1520円くらい)のバンクーバーで、時給4ドルにしかならないことが同僚との会話で発覚します。全てcomissionなので、売り上げがなかった日は「タダ働き」をしたという解釈になります。
セールスの世界は、ほぼcomission(出来高制)のようなものかもしれません。「それが営業の世界だ」と言われてしまえばそれまでですが、家族全員公務員の、最低限の生活が保障された”安定”を求めるタイプの家庭で生まれ育った私には未知の業界すぎて、会社の同僚ともうまく馴染めず、仕事もうまくいかない日が続きました。
NOと言われる日々・毎日泣いて退勤
私の仕事は、とにかく身体的にも精神的にもかなりハードでした。12時から6時まではずっと外で立ちっぱなし。一日中駅の改札前で行き交う人々に話しかけまくります。最初は手を上げて人を止めることすらできませんでしたし、人に話しかけても、とにかく’NO’と言われるようなお仕事です。また、知らない人には迷惑にならないような丁寧なアプローチをしたいと思ったり、ある程度の「礼儀正しさ」には気を遣いたいという私なりのcultural identityみたいなものもあって、でもそんなことを気にするようでは人に止まって話を聞いてもらえない...。最初の一週間は、本当に仕事になりませんでした。
そして、行き交う人ももちろん優しい人ばかりではありません。「〇ね」だの「くたばれ」だの、「どうせ金が欲しいんだろ」とか、毎日信じられないような言葉をシャワーのように浴びます。駅前でホームレスの方が私に近づいてきて飛び蹴りしてきそうになった日もありました。コーヒーをコートにぶちまけられたことのある鉄人の先輩が、黄金のメンタルで「気にするんじゃない!」と私を励ましてくれましたが、もうとっくに私自身のメンタルはズタボロで、退勤時のバス内では必死に涙をこらえながら、家に帰った途端糸がプツンと切れたかのように、この5月はほぼ毎日泣いていました。
このセールスのお仕事を、せめてもの1か月は頑張って続けようと思っていました。自分のcoopプログラムのための修了証のためにも働かなければならないという気持ちもありましたし、長い期間のhiring processを経て採用をもらった会社でもあったので、頑張って手に入れたお仕事を、短期間で辞めてしまうこと、新しいことをやり始めてはすぐに棄ててしまうことに対する抵抗感から、心のどこかで「今の自分の身体とメンタルに良くない」と自覚していながら、「仕事に行かなきゃ」という謎の責任感に囚われ続けていました。ある日、吐き気が止まらなくなって、食べることが常に生きがいな私から、とうとう食欲さえも消えてしまい、ついに本当の意味でメンタルが崩壊してしまいました。「頑張って手に入れた環境だし、辛くても、それでも何か学べることがあるはずだ」とその職場を信じたいという気持ちもありましたが、様々な事を考慮した上、自身の健康を優先することを決断し、その週末に仕事を辞めることを上司に報告しました。
coopの仕事はまた振り出しに戻ってしまいましたが、今は自分の身体を少しだけ労る期間にしていて、食欲もだいぶ戻っています。オフィスワークをやるものだと思って始めた会社で、予想もしていなかった、そして想定していなかった仕事環境など、そんな広い意味での「お仕事」を経験した身として、この一か月、全く正反対の2つのことを学んだと思っています。
Takeaway①「それが仕事だ」
一つは、「これが仕事というものだ」という現実。
人生でフルタイムで働くのはこのお仕事が始めてで、日本で就活をした経験がない私だからこそ純粋に感じるのかもしれませんが、何でもやりたい仕事が、最初からできるわけではないということ。
客観的に、そして厳しい目で判断したとき、私が所属していた会社は、結局のところ、かなりのブラックだったと思っています。雇用契約も、労働条件もほぼ違法で、身体を壊した今だからこそ、今冷静になって、結局あの職場から離れたことは賢明な判断だったのではないかと感じています。
私の所属していた会社は少し変な例かもしれませんが、どのお仕事もやってみないと本当のつらさもやりがいもわからないのは確かです。ノルマのあるお仕事。自分で成果を出してお金をもらって、自分で食べていかないといけないのがお仕事というもの。ある程度の生活が保障される仕事では全くなくて、一から自分で築き上げていかなければいけないという、厳しい仕事の世界を見た気がしています。
「マーケティングがやりたい」「会議で自分のプレゼンをやってみたい」「オフィス勤務がやりたい」…将来の理想のワークスタイルを語る人はきっとドラマで見るような素敵なオフィスワーカーを想像するでしょうし、私自身もその1人です。大学生としても、ドラマの世界とはまた別の、生の現場を見れる機会ってあんまりなくて、強いて言うならば、就活前の企業インターンなんかで、少し会社の方からお話を頂けることがあるくらいです。ジョブオファーをもらって、入社してすぐ最初から何でもやりたかったこと・好きなことを任されるわけではないですし、もっと多くの先輩や上司に揉まれて、仕事環境にもたくさん悩むことがあるだろうし、うまくいかないことの方が多い、というのが「お仕事」というものです。
心のどこかで、「自分の天職に早く出会いたいな~」という気持ちになることはしょっちゅうあります。天職に出会うのは、”巡り合い”なこともあるかと思いますが、たいていの場合、その仕事が「天職」として発見されるのではなく、「自分自身がその仕事を天職にしていく」という解釈の方があっているのではないかなと思います。自身がパズルの1ピースだとすると、職場環境や、慣れない仕事をうまくやっていくためには、自分自身がうまい具合に形を変形させて、その周りの環境(他のピース)に馴染んでいくしかない。最初はやりたくないような、”汚い”お仕事だってやらされるし、自分が好きだと思う仕事をやるためには、もっとその前の段階での色々なプロセスをたどっていかなければいけない。どれだけ売れているアイドルも芸能人も、今成功しているビジネスマンも、自分でやりたいことのみを選択してテレビに出てきたわけではない。どれだけすごい人でさえ、みんな泥の中をもがいてきた過去があるんだと思います。
Takeaway②でも、変形しきれないときもある
自分が予想していたのとは異なった分野で、色々仕事を経験して、見える世界も広がるし、経験したことのない世界で味わったことのない苦痛や葛藤に揉まれ、また一つ違う世界を知って、自分なりに馴染んでいこうとする能力はきっと、仕事だけではなく、勉強や、新しい物事に取り組むときでさえ、役に立つ力だと思います。ただ、その会社や仕事を頑張って取り組んでみるけれど、自分自身がその環境や仕事がどうしてもうまくいかず、自分が上手いように「変形しきれない」ことも起こり得ることだと思います。自分のメンタルが削られてしまうだけの、toxic environemntに身を注ぎ続け、結局自分が壊れてしまってはいけない。
同僚や上司はタフかもしれない。自分のようにあまり細かいことを気にしなくて、毎日のように暴言を吐かれても、痛くもかゆくもない鉄人のような先輩ばかりで、「自分もあんな感じになりたい!」と思いしばらくの間はもがき苦しむこともあると思います。でも、自分が同僚と同じようになれる、自分も周りの人間と同じようにその仕事をこなしていけるという保障はないし、結局は私たち個人の「キャパシティ」が全てなんじゃないかと思っています。自分の抱えられる容量よりも、もっと膨大なことをやろうとしていて、身も心も潰れてしまっては、元も子もない。
だから、仕事がつらいとき、自分なりに最善を尽くしてもうまく行かない場合、「逃げる」という選択肢を常備しておくことは決して悪いことではないはずです。何年も同じ業界での仕事を続け、会社を離れないことが、会社に対する「忠誠心だ」という”loyalty”が特に日本ではより美徳とされていて、仕事を辞めることがそんなに簡単ではないのも事実ですし、「転職」の概念が普及し始めたのも、本当に最近のことです。でも、結局のところ私たち自身の人生ですし、他人がああだこうだと評価することで、自分の価値を決めることだけはしたくないはずです。その会社が世界にただ一つの会社ではないですし、世界にたった一人の雇用者でもないですし、他の分野で私たちを雇ってくれる会社はいくらだってある。「機会はいくらでもある」と楽観的に捉える方が開放的になれますし、自身の思う理想のキャリアに近づいていけるのではないかなと思います。
正直、仕事というのは半分適性な部分もあるのかなとも思っています。やっぱり合う合わない職業というのは存在するし、「向いている・向いていない」を判断するというのは、仕事選びには大事な観点だと思っています。
だからこそ、「仕事選び・就活」というのは、そういった意味で「自己分析」だよなぁと私は考えていて、インターンシップや、セールス、自分のやったことないお仕事、自分の任されると思っていなかった、全く興味のないお仕事を任されて、色々な葛藤を通じて初めて、そのお仕事を理解することになる。会社に就職して、何でも最初から好き勝手やらせてもらえるわけではないし、全て自分が満足するようなシナリオになるとは限らない。様々な経験を通じて、「私ってこうかもしれない」「こういうのは難しいかもしれない」という自己探求の一部になる。
実は、カナダに渡航してからは現地で色々なお仕事を経験していて、無給インターンも換算して、かれこれ5職ほど経験しました。自分がその職場環境で同僚と揉まれたり、文化の全く違う人と切磋琢磨して仕事をすることで、自分自身がより成長していると感じますし、何より自分の強みや弱みがより明確に理解できるようになりました。自分のキャパシティに対する理解や、自分の見えている視野が色んな葛藤を通して、どんどん広くなってきている感覚があります。様々な分野で経験を積むことは、ある意味で「自己探求」にもなり得るのではないでしょうか。
最後に
5月。なかなか辛いお仕事にひたすらに向き合おうと最大限の努力を尽くした上で、様々なことを考慮したのち、「辞職」という選択を決断しました。正直今でも、「1か月も続けられなかった自分が情けないなぁ」とか、「また達成できなかったなあ」とかいうネガティブな感情が、まだ消えずにあって時々涙が出てきてしまうこともありますが、言い換えるならば、「自分のキャパシティと、心と素直に向き合うことのできた、悩みと思考の多い1か月」でした。また少し、自分の将来のキャリアに関する新たな知見を開拓できたんじゃないかと思います。😊以上、私の経験からお話しする、私なりの「仕事論」でした!
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