文章と自分のリハビリ【Long版 ⑤】魔力と画力の関係
只今、こころの充電中につき。
一日一題、お題にそってものを書いて投稿するサイトに出したものより。
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以下は、前回予告しました、《形の無いもの》をお題に書いた文章です。
(もともとのサイトでは、段落の頭を下げずに書くのをマイルールにしてますが、note ではしっくりこなかったので、1マス下げてます)
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師匠が香の煙にむかってなにか低く唱えると、煙はゆうるりとたなびき、うずを巻き、香炉の形になった。
まさしく、いましもこの燻煙がたちのぼっている香炉と、全くおなじ形に。
「わかりますか。《形なきもの》は、このように操ります」
私は、その《形なきもの》が形をなした香炉を両手で持ち上げてみた。ずっしりと、重みが両手に伝わってきた。
「水は方円の器に従う、といいます。それと同様に《形なきもの》も、我らが念じた形に従い、形をなします」
と、師匠がまたなにか唱えた。するとどうだろう。さっきまで精巧な細工の香炉だったものが、きゅうに、子どもの落書きのような不細工な形に変わった。
「!?」
あまりの不細工さに、かえって私は目を奪われ、じっと顔を近づけて凝視してしまった。
「もしかして、あえて、下手くそな図画を、念じられたのですか」
「そうですよ」
師匠はにっこりしながら、こんどは香炉を壁の掛け軸と同じ形に変じた。私の手の中で突然のびひろがってひらひらしだしたそれを、私はあわてて受けとめなおした。
「これは、……辛天頌の掛け軸……」
落款を確かめて、私は絶句した。辛天頌は我が国最高峰の画家だ。それを、師匠は……。
「筆で形を写し取れるものは、すべて、《形なきもの》に模倣させることができます。春華、あなたにもできます」
そして、師匠は硯を取り寄せ、みてごらんなさい、とでもいうようにさらさらと、絵を描きはじめた。
「我が国は、書画を能くすることを国是とし、文化により国を建てることをうたっていますが、それは表向きのたてまえです」
くだんの辛天頌と瓜二つの牡丹図が師匠の筆の下であっという間に写し取られていく。
「本来の目的は、卓抜した写生能力を持つ者を育成し、その者に《形なきもの》を操らせることにあります」
ひとつ目の牡丹が描きあがった。辛天頌の真骨頂とされる生気、画中に生けるが如き、と評される生気までもが写し取られた、それはそれは見事な牡丹であった。
「あなたが画試及第を目指して描画の鍛錬をし実際に五次にわたる試験を突破した目的は、画家として立身出世し、一族に安泰をもたらせること、だったはずです。だけど、それはあなたの目的」
師匠は二つ目の牡丹を描きさしたまま筆を止めた。
「国家は画家を必要としていません。必要なのは、《形なきもの》に満足な形を与えられる術者です」
私は、その牡丹の続きを描き足すよう指示され筆を運んだが、できなかった。形はたしかに、版木を刷ったようにそっくりそのまま描き写すことができたが、筆勢まで真似ることは、到底不可能であった。本物の牡丹を剣ですぱっと断ったものに、くたびれた造花を継ぎ足したような、不格好な花の絵が、そこにはあった。
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最近、note での反省が全然おいつてないので、あっさりいきたいと思いますが……できるかなぁ。
お題の《形の無いもの》からすぐに連想したのは「水」や「虚」。「上善は水の如し」みたいな、老荘思想っぽい世界です。なかでも、「水は方円の器に従う」というのがどうしても頭からはなれなくて、こうなりました。
つまり、人間が物体の外形を念じて、それを外枠として魔力とか精霊とか《形の無いもの》を入れ込むような魔法っていうのはどうだろう?、ってアイデアです。そこから、魔力ではなく画力が魔法の優劣を決める、という一風変わった魔法の世界を思いつきました。
この「単純に魔力が強けりゃいい、ってわけではない魔法」っていうコンセプトが、われながら気に入ったみたいで、後日、書いた剣と魔法モノの文章でも、ひと味変わった魔法を生み出すことにつながっていきました。
この世界では、描画するにあたっての個性や苦手が、もろに術者の個性や苦手として反映します。目をデフォルメしてラブリーな絵にしがちな術者が魔法で猫を出すと、目が大きめの若干リアリティに欠ける猫が出てきたりします。細部が雑な術者だと、薔薇の花が不細工になったりします。場合によっては、今回はパス!、と逃げます。
というわけで、ふつーの剣と魔法モノなら、魔力を高めるための修行をするところが、この世界では、毎日の写生で画力を高めるのが修行です。「ミツバチのうぶ毛が細か過ぎてオレにはムリだ〜_| ̄|○ il||li」とか、「豆腐がただの直方体になってしまったではないか……_φ(=_=;)」とかとかと悶絶しながら魔法の修行をするような世界です。
この世界で、伝説の最強の魔法使いになれるとしたら、まちがいなく、牧野富太郎です。ピカソは逆に、ありえないモノを生み出す能力でナンバーワンになれるかもしれません。こーゆーひとたちを5人組にして、クセや短所を補い合いながら戦わせる物語っていうのも、面白そうです。
それはさておき、この意表をつく魔法の設定のおかげか、いちばん評価が高かったです。
ストーリーも最後まで意表をつかれっぱなしで、自分自身が、師匠に、
と発言させておきながら、マジかー、この国エグすぎる……とビビってました。
なんでこんなふうに、数行ごとにどんでん返しが来るようなストーリーにできたか、自分でもよくわかってません(^_^;)。
面白いものを書くのって、むつかしいですね……いまだにこれを超えたな、と感じられる文章は書けていません。
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では、ロゴーンです。
一致指数 ベスト3
① 佐高信 66.2
② 末弘厳太郎 66
③ 九鬼周造 64.9
一致指数 ワースト3
① 岡倉天心 35.6
② 橋本龍太郎 44.6
③ 田中美知太郎 45.7
「文章の硬さ」はAで、文章がやや柔かい、との評価です。やはりこれは会話が多いからかな……?
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いま、病気で家にいるので、長い記事がかけてます。 だけど、収入がありません。お金をもらえると、すこし元気になります。 健康になって仕事を始めたら、収入には困りませんが、ものを書く余裕がなくなるかと思うと、ふくざつな心境です。