【今さら聞けない?】暦年課税と相続時精算課税制度の変更点!
はじめに
今年の漢字は税金の「税」!!
税制改正によって、暦年課税と相続時精算課税制度が変わるのはなんとなく聞いたことがありませんか?
2024年1月分の贈与から、生前贈与の手段である暦年課税と相続時精算課税制度の制度が少し変わります。
そもそも今の制度がどんな制度で、どう変わるのか、ざっくり解説します!
贈与の基礎知識
贈与とは、財産を渡す人(贈与者)ともらう人(受贈者)との書面や口頭での合意により成立する契約のことです。
贈与税を払わなければならないのは、受贈者です。受贈者が1年間で受けた全ての贈与を足して、贈与税の計算をします。
課税方法は下記の2つがあります。
①暦年課税:1年ごとに計算する方法
②相続時精算課税制度:贈与と相続を一体的に課税する方法
ちなみに、贈与税ってなぜ存在するのでしょう?
贈与税は相続税を補完するものであるという考え方があります。人が亡くなった時にその人の財産にかかる相続税は、資産の一部を国に納めることで資産の再分配はかるものです。生前に財産を贈与によって移転すれば相続税がかからないというのはおかしいので、贈与税が存在しているのです。
では、贈与税の課税方法それぞれの制度内容を現行と改正後と比較しながら見ていきましょう!
暦年課税
①贈与者と受贈者の間柄:制限なし
②控除:毎年110万円(基礎控除)
③申告:贈与額が110万円以内なら不要
④相続発生時の相続財産への加算:相続発生3年以内の贈与財産を加算
→〈改正〉順次7年以内に延長、3年超7年以内の総額100万円までは加算無
⑤税率:贈与財産の額によって異なる(贈与額が大きいほど税率が高い)
④の相続発生時の相続財産への加算方法が改正ポイントです。
事例で確認してみましょう。
【事例】暦年課税で父から子に毎年500万円10年間贈与をし、相続発生した場合
税率は課税価格によって定められていますので、最下段の贈与税額については所定の計算方法で算出しています。
2023年12月31日までに相続発生の場合
①相続発生3年以内の贈与財産を加算するので、500万円×3年=1,500万円を相続財産に加算する
②相続税額から3年分の贈与税額(既に払った贈与税)を控除するので、53万円×3年=159万円を相続税額から控除する
2024年1月1日以降に相続発生の場合
①相続発生3年以内の贈与財産(1,500万円)と相続開始前3年超7年以内※の贈与財産から100万円を控除した額(500万円×4年−100万円=1,900万円)の合計3,400万円を相続財産に加算する
②相続税額から7年分※の贈与税額(既に払った贈与税)を控除するので、53万円×7年=371万円を相続税額から控除する
※順次延長
暦年課税は改良?改悪?
相続財産に加算される贈与財産が増えるという点では、改悪かもしれません。
相続開始までの期間が長い世代の方が、メリットを得やすい制度になったとは思います。
しかし今まで通り、基礎控除が使えることや贈与者と受贈者の間柄に縛りがないことは引き続きメリットとなります。また、基礎控除以下の贈与なら申告不要で使える気軽な制度です。
次は、相続時精算課税制度を見ていきましょう。
相続時精算課税制度
①贈与者と受贈者の間柄:60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫へ
②控除:累計2,500万円(特別控除)
→〈改正〉毎年110万円(基礎控除)、累計2,500万円(特別控除)
③申告:贈与の都度申告
→〈改正〉初年度は申告が必要。以後、贈与額が110万円以内なら不要
④相続発生時の相続財産への加算:制度を選択してからの全て
→〈改正〉制度を選択してからの全てのうち、毎年110万円差し引く
⑤税率:20%
それでは、事例で確認します。
相続時精算課税制度の税率は一律20%です。
「選択してから2,500万円の特別控除を使い切るまでは贈与税がかからない」と考えるとわかりやすいので、事例では「特別控除枠」と表現しました。
また、事例は改正前と改正後に分けて解説します。
【事例】相続時精算課税制度で父から子に毎年500万円10年間贈与をし、相続発生した場合
2023年12月31日までに相続発生の場合
①相続時精算課税制度を適用して贈与したすべての財産(500万円×10年=5,000万円)を相続財産に加算する。
②相続税額から既に払った贈与税を控除するので、100万円×5年=500万円を相続税額から控除する
2024年1月1日以降に相続発生の場合
①相続時精算課税制度を適用して贈与したすべての財産(5,000万円)から、毎年110万円の基礎控除額を差し引くので、110万円×10年=1,100万円を差し引き、5,000万円−1,100万円=3,900万円を相続財産に加算する
②相続税額から既に払った贈与税を控除するので、46万円+78万円×3年=280万円を相続税額から控除する
相続時精算課税制度は改良?改悪?
相続時精算課税制度については、現行制度より使いやすくなると言えます。父母・祖父母から子・孫への贈与には限られますが、基礎控除が創設されることが大きいですね。基礎控除のおかげで、相続発生時に相続財産に加算する贈与財産も暦年課税よりも少なくなります。
まとめ
贈与税は一般的に税率が高いので、基礎控除などをうまく活用していきたいところです。
「結局どっちの制度がいいの?」という声が聞こえてきそうですね。
その答えは、「人それぞれなんです」。
みなさんの年齢や贈与の期間、金額によって暦年贈与と精算課税のどちらが勝つかは違ってきます。
また、今回は紹介しませんでしたが、相続税や贈与税には各種特例があります。教育資金や結婚・子育て資金の贈与、宅地を相続する時、などに使える特例が存在します。相続時精算課税制度と併用できない特例などもありますので、よく検討する必要があります。
ご家族とよく相談して、得を取るばかりではなく気持ちも尊重できるように、考えていく必要があります。
今回の改正で、生前贈与が進むでしょうか?
では、また〜〜♫フォロー、コメントなど、リアクションをお待ちしております!!