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読書という名のアヘン②
自身の思い出や思考の痕跡を残す意味でも、一週間に一回はNoteを更新できればと思っていたのだが、忙しい時期が来るといとも簡単に更新できずに時間が過ぎてしまう。
今週~先週は、一部の授業が終わりに近づいて、課題やら試験に追われたり、とあるカンファレンスにボランティアとして参加して朝から夜まで駆り出されたり、週末を使ってフランスのニースへ旅行へ行ったりと、ドタバタしつつも、割と充実していた。
とはいえ自分の性格的に、ある程度まとまって考え事をしたり、内省する時間が取れないと、脳みそに老廃物が溜まっていくような感覚があり、少し疲れてしまった。
ニースは、友人が良かったと言っていたので訪れてみたが、想像よりもずっと素敵な街だった。
コートダジュールの海に面する美しい街で、天気も穏やかで過ごしやすく、ご飯も現地の美味しい魚介を使ったフレンチなどが楽しめて、ゆったりと過ごすにはぴったりの場所だった。
特に個人的にはシャガールの美術館をゆっくり回れたのはとても良かった。
聖書をモチーフにした連作は非常に見応えがあり、この美術館を再訪するためだけに、時間とお金が許すなら、もう一度ニースに行きたいくらい。
さて、こういう書き物をしていると、続きを次回書きますと言っときながら、気が向かないと全然関係ないこと書くのが自分の悪い癖なので、今回はきちんと書き切りたいと思う。
前回は、読書は良いことだということは前提にしつつ、ただただ何も考えずに本を読んだり、多読・濫読に走ると、読書自体に満足して、頭が良くなった気になり、逆に自分の頭で考えることをサボる口実になりうる点について、だらだらと書いてみた。
今回は、そのようなリスクを踏まえたうえで、より具体的にどのように「能動的」読書を行うべきか、自分の頭の整理がてら、言語化してみたい。
1. 読めば読むほど馬鹿になる?
2. 大事なのは、「何を読ま"ない"か」「読んでどうするか」
3. 何となく良さそうな読書法:"能動的"読書のススメ (←今回はここから)
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① 読書の目的・戦略:なぜ読むのか?何のために読むのか?
何事もそうであるが、まずは読書の目的を改めて言語化することから始まることは、あまり異論がないだろう。
1. 読書の目的の明確化・具体化
読書の目的は、大きく(a) 知的生産のためのインプット (b) 行動・習慣の変革 (c) 娯楽、の3つに分けられるのではないかと思う。
大枠としては、(a) (b)は読書を手段として、専門書やビジネス書を読むようなイメージ、(c)は読書体験そのものを目的として、小説などを読むようなイメージ。
より具体的には、(a)の知的生産のためのインプットは、何かしらの示唆を生み出すために必要な知識や情報を得るための読書である。
仕事で短期的に必要な情報・知識の収集が分かりやすいが、中長期的に、自身の関心のある分野の知識をストックしておく、という趣旨の読書も含まれる。
(b)は特定の個人や集団を念頭に、ある状態を実現するために必要なアクションを知り、実行するための方法論や手法を知るための読書である。
(c)は、活字を通じた非日常の疑似体験や感情的な起伏を含む読書体験を、娯楽として楽しむ種類のものである。この場合の読書は、そこまでかっちりと読書法を意識する必要はなく、基本的に気楽な気持ちで、自身の面白そうな本を読むのが良い。ただし、読書を通じて得た発見や、自身の感情を観察・内省を言語化しておくと、より”深い”読書が可能となる。
単純に知的好奇心を満たすための読書は、ある意味(a)と(c)の中間に位置するともいえるが、可能な限り(a)を想定して読書をしておいた方が、自身の血肉になりやすい。
ここで意識すべきは、なるべく目的を具体的に言語化するという点で、5W1Hを意識して言語化してみるのが良い。
例えば、「海外の友人が日本に遊びに来るから、案内するために京都の歴史について調べたい」というレベルではまだ抽象的で、「来月海外から訪ねてくる友人を案内するために、2週間後までに、友人が訪れると良い観光地Top5を調べて、その観光地に関する特に面白い歴史や豆知識をメモにまとめておく」、というくらい具体的だとより望ましい。
2. 問い(論点)の明確化
目的が整理出来たら、今度は自分が抱えている疑問を、箇条書きで書き出してみる。例えば上述の例であれば、、
友人が知らないが、実は外国人が観光で訪れると喜ぶ観光地はどこか?
金閣はあんなに豪華なのに、なぜ銀閣はあんなにぼろいのか?その背景にある歴史的な背景は?
清水の舞台から飛び降りる、とあるが実際に飛び降りた人の生存率が8割を超えるというのは本当か?あの高さから飛び降りて、なぜそんなに生存率が高いのか?・・・
などなど、まずは思いつくままに、疑問に思う点を箇条書きで書き出してみるのが、手軽で良い。多すぎても、少なすぎても微妙なので、目安として5-10個くらい、列挙してみる。
慣れている人は、構造化して、粒度をそろえて、とかまで意識すると、後々思考としておさまりが良いと思われる。(興味のある方はロジカルシンキング系の本を読んでみてください。)
重要なのは、問いを書き出した後、自分または特定の相手の関心が高い(=優先度が高い)問いを、改めて見つめなおしてみる、という点。
問いの中でも優先度をある程度明確にしておくことで、のちのちどこに重心を置いて本を読めば良いかという点がはっきりするので、速読などがしやすくなる。
3. 仮説の言語化
問いを言語化したら、重要だと思う問いに関して、自分がその時点でおもいつく仮の答え(仮説)を考えておくと、さらに読書の効率は良くなる。
自分の立てた仮説の検証をするために情報を取捨選択すれば良いので、ある意味速読が非常にしやすくなる。
ただし、ここまでやると、読書する前の準備が長すぎて、そもそも本を読むことが億劫になりそうなので、あまり実践的ではない気がするので、本当に深く知りたいことや重要なテーマに絞って、使い分けるのが現実的かと。
② 選書:何を読むべきか、読まざるべきか?
1. 読むべき本をリサーチする
読書の方向性が定まったら、関連する本を調べるフェーズに入る。大きくは、(a) ネットで広く調べる (b) 人に聞く (c) 本屋に足を運ぶ という3つの方法が考えられる。
今時だと、(a)でざっと調べて面白そうな本を何冊かピックアップして、Amazonでポチる、というのが一番手っ取り早い気がするし、自身もそのパターンが多い。
一方で、より読書の効率を上げるという意味だと、(b) (c)のステップも意識的に活用するのが良いのだろうと思う。(と言いつつ、なかなか実践できていない)
特に門外漢の分野では、その分野に詳しい人におすすめの本を聞いてみる、というのが一番確実ではあるし、実際に本屋に行って、対象分野の本を一通り手に取ってみるというのも、時間が許すなら有益だと思う。
2. 読まない本を見極める
ここで重要なのは、読まない本を決めるということ。まず、外形的な要件でスクリーニングすることが効率的。具体的には、(a) 古典 (b) 翻訳書 (c) その分野において信頼出来る著者の本 を優先的に読み、逆にそれ以外の本は安易に手を出さない、ということが重要となる。
(a) 古典 は時間的なスクリーニングを通過した本、 (b) 翻訳書 は他の地域・国におけるスクリーニングを通過した本、と言い換えることもできる。
(c) その分野において信頼出来る著者の本 は、著者の経歴・評価という間接情報に基づいてスクリーニングすることも、不要な本を読むことを避けるという観点で有益である。
もう一点あえて付記すると、外形的要件でのスクリーニング、は特定の分野における選書に限らず、より広範な読書の戦略全般においても、適用可能な考え方であるともいえる。
"一般読者はこうした本なら読むけれども、偉大な人物自身が描いた著作は読まない。新刊書、刷り上がったばかりの本ばかり読もうとする。それは「類は友を呼ぶ」と諺にもあるように、偉大なる人物の思想より、今日の浅薄な脳みその人間がつくりだす底の浅い退屈なおしゃべりのほうが、読者と似た者同士で居心地がよいからだ。"
次いで、主観的な要件でのスクリーニングともいう方法だが、”超速読”という手法が面白いと思ったので紹介する。
この”超速読”は佐藤優氏の『読書の技法』で紹介されている手法だが、ある本を読むにあたり、どの程度深く読み込むかを識別するために、全体を5分程度で試しする方法である。
まず序文の最初1ページと目次を読んだうえで、それ以外はひたすらページをめくりながらページ全体を目で追い(文字を読まない)、結論部の一番最後のページを読む、というのを5分で行うという方法。この際気になった点は鉛筆でしるしをつけておくか、付箋を貼っておく。
この方法は、読むべき本の仕分け作業が短時間でできると同時に、熟読する際に本全体の中であたりがつけられるという利点がある。
特に前者の本の仕分けについて、自分自身の背景知識に基づく読みやすさや好みも考慮したうえで本の仕分けが出来るので、5分で全体を読むのは練習が必要だが、非常に合理的な方法だと思った。
ちなみに、佐藤優氏は超速読も含めて月平均300冊、多い時で500冊以上目を通し、4-5冊を熟読している、とのこと。
③ 読書法:どのように読むべきか?
1. 読書前の準備
くどいので改めて書くまでもないのかもしれないが、読書の目的・論点・仮説を、読書前に改めて振り返って脳に刻む。
特に、「読書を通じて、どのような問いに対して、情報が欲しいのか」という点は、付箋か何かに張り出して、読書中に目につくところに貼っておいても良いかもしれない。
これは、受動的にただ文字の流れを目で追いながら本を読むのと、自身の解消したい疑問を念頭に関連する個所を拾いあげるつもりで本を読む、というスタンスの違いで、読書の効率が段違いに変わってくるためである。
いわゆる仮説思考的なスタンスで読書をする重要性は、いかにもコンサルという感じだが、大石哲之氏の『コンサルタントの読書術』などでも触れられている。
2. 読書中の読み方
実際に本を読み始めてからの方法論として、(a) 問いを意識して読む (b) 速読を活用する (c) なるべく一度に 同じ本・関連書を読む (d) 同じ本を3回読む の4点について書いていきたい。
(a) 問いを意識して読む は、前述の通りなので繰り返さないが、一点追記するとすると、読書の過程で新たな問いが発生する、もしくは問い自体が精緻化される、ということがあることは留意すべきだろう。
読書の過程で、読書前と前提とする知識量が変化するので、当然問いも仮説も変化するので、その点も意識して、どこかのタイミングで新たに生じた問いをメモするなり、関連する個所に付箋を貼っておくなども役に立つ。
(b) 速読を活用する だが、これも前述の佐藤優氏の方法論で、一冊30分ほどで重要な個所の情報をすくいあげるような意識で読書をする。
ここで重要となるのは、「時間は有限であり希少材である」という大原則を念頭に、本の内容を100%理解しようとする完璧主義を排し、とりあえず30分で本の中の主要な主張を理解することと、重要な記載がある個所に当てをつけるようなイメージ。
私自身も時間の無い時は似たような速読をしていたが、速読の効率に直接影響してくるのが、その分野における前提知識と、① 読書の目的・戦略がどれだけ具体的になっているか、という点ではないかと、経験則から思う。
(c) なるべく一度に 同じ本・関連書を読む は言われてみれば当たり前だが、これが意外と重要で、人間の記憶力に限界があるので、特定の分野の本を読んだ後に、他の分野の本を読んだりすると、最初の本の内容はほとんど覚えていない。
理想形として、読書で得た知識を血肉にするためには、一冊のほんの内容の理解も重要だが、可能であれば同分野の複数の本の内容を横比較しながら、自分の頭であれこれ考えるプロセスが肝要となるからである。
(d) 同じ本を3回読む は、特に山口周氏の『外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術』において、特に教養書(広く、浅く読む本)において、本の内容忘れることを前提に、読書で得た知識をストックしておく仕組みとして紹介されている。
具体的に、私が実践しているのが「3回読み」です。
1回目:線を引く
2回目:5つ選ぶ
3回目:転記する
1回目は、とにかく気になったところ「すべて」に線を引きながら読んでいきます。2回目は、大量にあるアンダーラインの箇所から、さらに気になったところを、「5〜9つ」と決めて選び、付箋をはります。このとき、仕事への示唆、気づいたことがあれば、自分の本に直接書き込んでおきます。そして3回目は、フセンをはった箇所と仕事への示唆・気づいたことを、「エバーノート」に書き写します。
山口周氏の本では、教養書を対象に「情報のイケス」を作り知的生産のストックを構築する手法として紹介されているが、ビジネス書に関しても、読書ノートの書き方を工夫することで、非常に汎用性の高い方法であると考えられる。
④ 思索・行動:本を読んで、どうすべきか?
個人的には、すべての読書が毎回アクションまで考えてやらねばならないと思うと重苦しいのであまり好きではないが、自分の目標やらがあって、読書を成果につなげたいときは、どのように自身の行動の変化につなげるかは、意識せざるを得ないとも思う。
1. 思索する
まず、本の内容について、自分なりに考えてみる、というのが第一歩だろう。これだけだとバカみたいなので、少し具体化してみる。
大きく(a) 書いてみる (b) 話してみる の2点があげられる。
(a) 書いてみる に関しては、一番手軽な方法は読書メモを作成することだろう。大事なのは、ただ頭の中で本の内容を思い出して考えた気になっていると、大体それは「思考」ではなく、回想の類になりがちなので、紙でも電子でも良いので、とりあえず書く。
もう少し自分以外の人間に対して発信したい場合は、仲間内で自分の考えをシェアしてみたり、こんな感じでNoteに投稿するなり、自分の好きな媒体を見つけて投稿してみるのが良いだろう。
(b) 話してみる について、本で得た知識やそれを基に考えた内容について、家族や友人に話してみる、というのも良い方法だと思う。話す過程で思考が整理されるし、話す相手によっては新しい視点や議論がテンポよく深まることもあり、面白いかと思う。
可能であれば、その分野の詳しい人に話を聞く場を設けて、その事前インプットとして、本を読んで、自分の理解を説明し、どのような疑問点に対して意見を聞きたいか、アウトプットしてみるのが特に有益だと思う。
いずれにせよ、思索するという点で重要なのは、自分に合った手法を選択する点だと思う。私は典型的な内向型なので、人に対して自分の考えを話すというのが、若干疲れるので、自分のペースで思考を整理しながら発信できる、「書く」というスタイルが性分に合っている。
一方で、話しながら思考を整理するタイプの人も多いと思うので、そのような人は、なるべく自身の関心のある分野について雑談や議論が出来る場に足を運んだりするなどが考えられるだろう。
2. 行動する
これは本の種類にもよるが、読んだ本から何かしら自分なりに取り入れるべき行動を書き出してみる、というのもありだと思う。私自身は読書メモを作成する際に、アクションという項目を設けて、何かしら書くようにしている。実際に実行しているかは、ものによってかなり差が大きいが。。
特にノウハウ本などの類は、実践しないと意味がない類のものが多いので、取り入れる行動を考えることに加えて、より大きな視点で行動目標・行動計画を作成し、週次でも月次でも、モニタリングの機会を設定することが、理想的だと思う。
健康法に関する本で合ったり、仕事上のTips系(Excelのショートカット等)の本が良い例で、知識が増えたところで、使わないとほぼ意味がない。
つまるところ、多少知識が増えようが、考え方が変わろうが、行動レベルで変化が起きないと、実質的には人生において何の便益をもたらさない、というのが、残酷ながら多くの場合において真であろう。
自己啓発セミナーに何度通っても、ほとんどの人が意味のある変化がないのと同じように、読書も何かしら行動の変化に変えないと、真の意味で人生の糧にはなり難いように思う。
4. まとめ
長々と書いてしまったが、「本を読む」という行為そのものは、それ自体有意義な場合が多い。
一方で、意識的に本を読まないと、他人の思考をなぞるだけの思考停止状態を生み出し、その状態に慣れてしまうと、読書という善きことをしている気分になるだけで、実は本質的な思考力の低下すら招きかねない。
一冊の読書も、人生の貴重な時間をそれなりに使うことを踏まえると、読書を意識的に活用できているかを自問し、読書法を見直してみることは、多くの人にとって価値のあることだと思う。
そのような課題意識から、自分の思考の整理のために一度記事としてまとめてもいたけれど、何か少しでも誰かの気づきにつながれば幸いでございます。