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【3分読書メモ】<面白さ>の研究 世界観エンタメはなぜブームを生むのか(都留泰作)を読んで

世界観エンタメ

■基本情報

書名:<面白さ>の研究 世界観エンタメはなぜブームを生むのか
著者:都留泰作
出版元:KADOKAWA
出版日:2015年8月
ジャンル:経済/サブカルチャー
読書メーター:https://bookmeter.com/books/9897232

書籍内容(BOOKデータベースより)

現実と異なる「世界」を「人間」より優先して描く世界観エンタメはなぜ成立し、メガヒットとなるのか?なぜ“面白さ”は受け手に伝わるのかを、文化人類学者にして漫画家の奇才が徹底解析する。

■気になったポイント(引用文+コメント)

古典的バーチャルエンタメがフォーカスしたのは人間、すなわち「キャラクター」である(中略)作り手の労力は「キャラクター」から「世界」の拡大へ向かう。

<メモ>古来よりエンタメ作品の本質は「人間が織りなすドラマ」である。そしてマルチバース的な展開を鑑みた上で、作品世界の拡大に尽力しているクリエイターも多いと思う。

ポストモダンな価値観が主流になると、個々人の内面や、その間の「深い」関係性を問題とする近代的なドラマツルギーはウソ臭くなってくる。

<メモ>ポストモダンにおいては大きな物語ではなく、小さな物語(作品世界)がたくさん作られ、それを大衆が消費する風潮になりつつある(東浩紀氏が提唱する”動物の時代”)

「人間的現実」をリアリティをもって描き出すということが、送り手と受け手の間に現実感の共有を可能にする。それが結局は「世界観が面白い」という事態なのであり、ひいては、それこそが「世界観エンタメ」の成功をもたらすのだという(中略)この「環境」(世界)を構成する要素として、「空間」、「時間」、「社会集団」が重要だと僕は考えている。

<メモ>作品内に環境を作り出すには、「時間」「空間」、そして社会集団(コミュニティ)の存在が欠かせないし、作品の創造者はこれらをしっかりと構築しなければならない

この意味で、スピルバーグが、SFをエンタメとして成功させる戦略として「日常」を出発点とするのは、大変有効な選択だと思う。例えば『ジュラシック・パーク』においては、観客は、テーマパークという慣れ親しんだ舞台設定から、無理なく、恐竜の支配する白亜紀という非日常の世界へと導かれるのである。スピルバーグは、既存の「人間的現実」の中に、オカルトやSFを侵入させることで、作品世界の体感性を強固に確保する名手なのだ。

<メモ>確かに『ジュラシックパーク』は現実味がある。現実と地続きの場所から、だんだんと非日常の感覚へ誘われる。

しかし、あまり注目はされないが、世界観エンタメに「血肉」すなわち「不可量部分」を盛り込んでいく上で、視覚デザイナー的な「空間感覚」と同じくらい、いや、あまり重要視されないがゆえに、より重要ともいえる感覚がある。それは「時間感覚」である(中略)「時間感覚」のしっかりした作品は、映画であれアニメであれ、マンガ・小説、何でもよいが、出来事が充実して連続した感じを醸し出し、飽きさせない。

<メモ>面白い作品の根底には、必ず連綿とした時間感覚が込められている…らしい。

最後の「グルメ描写」だけでは、この「濃厚な旨味」が十分に伝わらないことは明らかだろう。「旨い!」という体験に至るまでの「味の設計図」が具体的に、人間の日常動作の流れの中に重ね合わせて表現されているからこそ、この表現は成功しているのだ。

<メモ>ジブリ映画における食事シーンの巧みさを説いた一文。「美味そう!」と思わせるためには、言葉で美味しいと語るのだけでなく(それも必要だが)、調理から口に運ぶまでの描写で語ったほうが良い。

世界観エンタメ。それは、疑似的に「住める世界」「住みたい世界」を与えることにより、繰り返しの消費に耐えることができる。非常に耐久性の高いエンタメを現代社会に提供するものなのだ。

<メモ>ユーザーがあたかも「作品内の世界に住んでいる」と錯覚できるような密度の濃い作品世界の提供。それが世界観エンタメ。もっと端的に表すなら、"人間味"が感じられると共に、人々が集う社会組織を丹念に描くこと。

もちろんフィクションならではの誇張はあるだろうが、そのようなウソに現実的なディテールをまぶして描き出したからこそ、共感に値するキャラクターたちを創造することができたのだ。

<メモ>エンタメ作品はある種の誇張、多かれ少なかれデフォルメ化がなされている方が個人的には面白い。誇張した表現の中に真実が含まれているからこそ、視聴者は共感してくれる。

パンデミックゾンビもので強調される「ウイルス」の要素はあくまできっかけにすぎない。ほかに思いつかないからウイルスのせいだとされているだけで、その治療法などがストーリーの本筋に関わることはほとんどない。ウイルスでも環境破壊でも宇宙から降り注ぐ謎の電磁波でも何でもいいが、要するに何らかの「強力な浸透力を持つ要因」により、人間の理性的魂が活動を抑えられ、身体を無目的に動かす「第二の魂」が発動した姿。それがゾンビなのである。

<メモ>人間の理性を失わせるパニックものとして”ゾンビ”はこの上なく最適。人間のゾンビ化とは、人間の社会的機能の喪失である。

【こんな人におすすめ】

・映画、漫画、アニメなどのエンタメ作品の本質を学びたい人
・文化人類学者の着眼点からエンタメ作品の面白さを学びたい人
・エンタメ作品を構築する世界観について興味がある人

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