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【3分読書メモ】欲望する「ことば」(嶋 浩一郎・松井剛)を読んで
■基本情報
書名:欲望する「ことば」 「社会記号」とマーケティング
著者:嶋 浩一郎・松井剛
出版元:集英社
出版日:2017年12月
ジャンル:マーケティング/社会学
読書メーター:https://bookmeter.com/books/12500842
■書籍内容(BOOKデータベースより)
加齢臭、女子力、おひとりさま…。著者が「社会記号」と呼ぶこれらのことばは、我々の思考や生活、また市場を変える力があるという。人々の潜在的欲望を映す「社会記号」のダイナミクスを解き明かす。
■気になったポイント(引用文+コメント)
生まれたときには辞書に載っていないのに、社会的に広く知られるようになり、テレビや雑誌でも普通に使われ、見聞きするようになることばのこと。「流行語」の一種と考えてもよいでしょう。
<メモ>いわゆる「社会記号」のこと。
ある現象を言語化することで、周りがその存在を許容する状況が生まれるのです。(具体例:できちゃった婚など)
<メモ>逆に名称や呼び名が与えられていないと、奇妙さやある種の不気味さを呈する。
人間は欲望を言語化できないのにもかかわらず、それに応えてくれるものを目の前に出されると、「そうそう、これが欲しかったんだ!」と都合よく手を伸ばすのです。
<メモ>言語化できない欲望とは、「まだ顕在化していない未来の課題」ではないだろうか。そうした課題や欲望に気づいて企画に落とし込めば、大きな反響に繋がりそうだ。
重要なことは、読者が「なんでこの雑誌、自分の思っていることが書いてあるのだろう」と都合よく思うと同時に「この雑誌は自分のための雑誌だ」とファンになってくれることなのです。
<メモ>人間は都合の良い生き物なので、何でも自分に当てはめて「自分の為にあるんだ!」と解釈しがち。この習性を利用するためにも、コンテンツプロバイダーはしっかりとユーザー層を捉えるべきである。
(書店で大量の本に囲まれる光景を指して)そういう”情報のシャワー”を浴びることで、自分自身が自覚していなかった欲望が、ふわっと言語化されるわけです。
<メモ>これは本当にそう思う。自分では踏み込まない領域へ意識が向くからこそ、書店では「この本も欲しい、あの本も欲しい」潜在欲求が顕在化しがち。
ここで重要なのは、人はすでに言語化した欲望に応えてくれるプレイヤーには、あまり感謝しないということです。
<メモ>「気が利く」の根底に通じる重要な示唆。満足とは期待を越えた先に生まれるものだが、まさしく”言語化した欲望”の概念が当てはまる。
① 自己認識(コギャルでよかった)②同化(コギャルになりたい)③寛容(コギャルだからしょうがない)④報道(コギャルの生態を知りたい)⑤市場(コギャル向けの商品をつくろう)
<メモ>社会記号(具体例:コギャル)の4大機能。
それを見たことがない人でも、「コギャル」や「女子」と聞けば、具体的なイメージが湧き、何らかの感情を抱いてしまう。
<メモ>社会記号の代表的な効果。
われわれは、生まれつき身につけた言語の規定する線にそって自然を分割する(ベンジャミン・リー・ウォーフ『言語・思考・現実』より)
<メモ>人間は自らの語彙力(言語)によって世界を理解し、世界に生きている言語を知れば文化を知ることができ、まだみぬ世界の理解にも繋がる。
既存の研究によれば、恐怖アピールがもっとも効果を上げるのは、驚異を強く煽るときではありません。驚異はあくまでも穏やかに伝える。それと同時に、問題への解決策も提示する。それがもっとも効果的なのです。
<メモ>問題+解決策のセットでのみ、”脅威マーケティング”は効果を発揮する。恐怖だけでは人心を掴むことはできない。なぜなら恐怖のみ論じても、回避する手段を知らなければ恐怖(をもたらす存在)そのものを否定(逃避)するのが人間だからだ。
ことばには個別具体的なことを抽象化して普遍的なものに変えてしまう力があります。
<メモ>思いを言葉にした時点で、脳内に浮かんだ純粋な思いは消失している。なぜなら人間は他者へ意見を伝える際、言葉(の意味)に従って思いを整える(取捨選択)からだ。
『下流社会』のように、すでにあることば(上流、中流)に乗っかったタイトルは、新しい造語であっても広まりやすいとおっしゃっていた。前例がないことばは広まりづらく、概念を上書きするようなことばは広まりやすい。
<メモ>「お金2.0」とか「なぜ○○なのか?」など、ヒットした書名をアップデートするタイトルは流行しやすい。
【こんな人にオススメ】
・マーケティングに興味がある人
・「ことば」の力に興味がある人
・ある言語が社会記号へ変容する過程を詳しく知りたい人