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【読書感想文】ドイツ三〇〇諸侯

こんにちは。
30年戦争を題材にした歴史漫画「イサック」の影響でドイツ諸侯の勉強中です。その中で読んだ本が面白かったので、まだ完読してないのですが先に感想を書いてみます。


本書の面白いところは有力ドイツ諸侯を「家」ごとに紹介しているところです。個人に焦点を当てた伝記が一般的ですが、家の繁栄を目指したヨーロッパを理解するならば「家」ごとにストーリーにしてしまうのも面白いですね。
巻末には本編で出る家ごとの家系図の付録付き。これが理解するのに便利だし家系図見てるだけで面白いので、その辺も嬉しいです。

紹介されているのは、ルクセンブルグ家、ヴィッテルバッハ家、ツェーリング家、ヴェルフェン家、ヴェルテンベルグ家、ホーエンツォレルン家、ヘッセン家とザクセン=コーブルグ家。素人の僕は知らない名前ばかりですが、読み込むと主要国の王朝に繋がってたりするところに繋がる家系もあり、興味深かったです。

ちなみにハプスブルク家は載ってません。著者の別作品「戦うハプスブルク家」を読むべし。僕も改めて読んできます。

ありきたりな感想ですが、歴史は繋がっているのだなあと感じます。本書は「家」をキーとして登場人物一人ひとりの判断や行動が連綿と続いて歴史が紡ぎ出されていくというのが改めて理解できました。その判断や行動が予想できなかったり偶然や重なってドラマが作られるのがやっぱり面白いですね。

具体的な中身の紹介はボリュームがあり、時間軸が11世紀~17世紀と幅広いため、一人だけ登場人物を紹介します。

モーリッツ

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この本の表紙の人物です。教科書には載らない知名度ですが、読むとこんなすげぇヤツがいたとは...となります。
あだ名は「マルセイのユダ」。戦国武将で言えば明智光秀か、ある意味それ以上かもしれません。

 自分の実力を世に知らしめたい欲望に飢えた若者、モーリッツ。父の意見を無視して勝手に結婚し、当主の座を父から奪った覇気烈々の若者です。プロテスタントでしたが、信心深いタイプではなく国大きくすることに関心がある人物でした。
 モーリッツは20歳で結婚し、恩のある舅のヘッセン伯フィリップが作ったプロテスタント大同盟のシュマルカルデン同盟に参画します。ヘッセン伯フィリップは着々と同盟軍と皇帝を討つ算段を整えていきます。1546年、それに対して皇帝は国外追放を出したことで宣戦布告となりました。

当然モーリッツはプロテスタント側として参戦しましたが、ここで皇帝が計略を図ります。モーリッツにザクセン選帝侯位を餌にしてプロテスタント側を裏切ることをそそのかします。これに同意したモーリッツはザクセン選帝侯領を裏切り急襲。プロテスタント側は皇帝との戦争どころではなくなり敗北となりました。

その後モーリッツは選帝侯位はもらえ、皇帝の臣下として仕えていました。一方で皇帝はアウグスブルグに帝国諸侯を集めプロテスタントを異端とする暫定規定の受諾を強要した。そして同意しない都市に対してモーリッツ率いる軍隊を差し向けます。
もともとプロテスタントであったモーリッツ。そして、選帝侯位はもらえたが待遇に不満もありました。そこでモーリッツは都市攻めは放棄し、皇帝からもらった軍で皇帝を攻めるという暴挙にでます。しかも軍の維持費はフランス王アンリ二世を騙して味方につけて確保するという大胆ぶりです。

最終的に皇帝は隠居し、ハプスブルク家はスペイン・ハプスブルクとオーストリアハプスブルク家に分裂することに。
自身の宗教は問わず2度の裏切りを行ったモーリッツはまさに「マルセイのユダ」ですね。


こんな一人で帝国を翻弄したような人物が探せば出てくるのだからヨーロッパ史はたまらない。

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