どうしてペリーが日本を開国する前に徳川家がアメリカへ渡らなかったのか
結論としては私の人生で最も衝撃を受けた本を紹介したい。
なぜこんなタイトルにしたかと言えば、その本の中で「なぜスペイン人征服者ピサロがインカ帝国を征服するのではなく、インカ皇帝アタルワパがスペインを制服しなかったのか」という、個人的にはなぜそんな疑問を持てるのかと思うが、一文があり、それももじった訳である。
これらを言い換えれば、「どうしてアジア・アフリカ系が世界の支配せず、白人が世界の支配することになったのか」となる。
これに対しての考察を壮大な一冊にまとめた本を紹介したい。
その本は「銃・病原菌・鉄」
私はこの本を読むまで、歴史=事実の羅列(いわゆる学校の教科書)、という認識だった。しかしこの本では、歴史とは農作物のような物質的要因、大陸・海の地理的要因と、人が作り出した文化的要因の影響を受けてきた人類の記録である、ということが論理的に述べてある。こんな壮大な話なのだから、人が創作したどんなストーリーよりも面白いに決まってる!
ということでおすすめします。
以下は、超簡単な概要。
著者: ジャレド・ダイヤモンドは進化生物学者という歴史とは無縁の分野の博士。パプアニューギニアで現地人:ヤリから「白人がニューギニアに持ち込んだ物は多数あるが、ニューギニア人の物と言えるものはほとんど無い、これはなぜですか?」という疑問を投げかけられ、そのアンサーとなるのが本書である。
この「ヤリの疑問」は現代社会の核心を突いている。
なぜならば、この質問は前述の通り、「なぜ白人社会が先進的な文明となり、世界の覇権を握り、多数の地域を被支配国としたのか」という質問と同義だからだ。
それに対して、ひと昔ならば―いや現代ですら一部では―、多くの白人はこう答えただろう「白人は黄色人種・黒人に比べて知能が優秀だからだ。」
つまり、この問題はアメリカの黒人差別問題の背後にある白人至上主義を呼び起こすセンシティブなものである。
結論から述べると、白人社会が先進的な文明となった理由は知能が優秀でも、遺伝子的に優性でもないと、ダイヤモンドは述べている。単に居住環境の差によりヨーロッパが文明的に先行し、単にそこに住んでいたいのが偶々白人だった、という訳である。
居住環境の差というのは、肥沃な三日月地帯に農業において最適な農作物が原生していたことや、家畜化しやすい動物が住んでいたこと。また、それらがユーラシア大陸の東西に延びている形状の特性によりヨーロッパまで伝播しやすかったからである。
なぜ農業や家畜の差が文明の不均衡に繋がったかは、本書を読んで理解していただきたい。
前述の通り著者は理系博士のため、文章はロジカルで歴史学に限らず様々な文献を駆使しヤリの質問への回答へつなげている。そのため非常にボリュームがあるが、これは1章1章が論文のようなものであり結論を導くために論理展開しているためである。これにより若干冗長に感じられるかもしれないが、それだけ精緻に考察されたと理解していただきたい。