療養所(サナトリウム)にまつわるエトセトラ
明治時代から昭和20年代まで、結核(肺病)は「国民病」と言われたほど広まっていました。
昭和30年代後半(1960年代前半)でも、年間の発病者は30万人を越えていたほどです。
それまでは結核の有効な治療法はなく「不治の病」として恐れられました。
多くの有名人が結核で命を落としていますが、文学者だけをとってみても、
正岡子規:1867-1902(34歳)
国木田独歩:1871-1908(36歳)
樋口一葉:1872-1896(24歳)
石川啄木:1886-1912(26歳)
梶井基次郎:1901-1932(31歳)
堀辰雄:1904-1953(48歳)
などがすぐに思いつきます。
特に、堀辰雄は「結核で療養中の女性」と「私」が主人公の自伝的小説「風立ちぬ」を書きました。
「風立ちぬ・美しい村 (改版)」(新潮文庫)堀辰雄(著)
JR中央線の富士見駅(長野県諏訪町。小淵沢と茅野の間)の近くに富士見高原病院がありますが、ここはかつて富士見高原療養所というサナトリウム(結核療養施設)で、『風立ちぬ』のモデルとなったところです。
特効薬が身近になかった時期の対処法(結核の菌は紫外線に弱く太陽の光によって殺菌されるという治療法)は、空気のいい場所での療養であり、そのための施設がサナトリウムとして全国につくられていました。
新型コロナでは、サナトリウムではなく、主にホテルが宿泊療養施設として使われていましたが、あまり空気の綺麗な場所ではないのかなって気がします。
そう言えば、ずいぶん昔の映画『いつでも夢を』にも療養所が登場します。
この映画の中では、結核の特効薬が開発され、結核で亡くなる人は少なくなっていた半面、結核患者を受け入れる病床(映画では「病棟」となっています)の整備が問題となっていたり、社会復帰支援が課題になっていた点を示唆していました。
実際、この映画で描かれている内容は、結核を克服した後も、社会復帰という課題に直面していた事実や、結核に苦しめられてきた歴史的な経緯が分かり参考になります。
つまり、戦後に医療制度を整備したり、公衆衛生を改善したりしたことで、結核を中心に感染症の封じ込めに成功したと言えますが、さだまさしの魅力が結実したかのような煌きを放つ代表傑作と言ってもいい、1979年発売のソロ4枚目のアルバム『夢供養』には、サナトリウムを別の視点から描いた「療養所(サナトリウム)」という楽曲があります。
『夢供養』さだまさし
確か、中学生の頃、さだまさしファンの友達からの勧めで買ってみた、彼のの第二期黄金期を代表する、まさに名盤でしたね(^^)/
艶めいた声で切々と歌い上げる「風の篝火」や、 軽快に恋物語を歌う「パンプキン・パイとシナモン・ティー」など、さだまさしの“静”と“動”の二面が見事に表現された究極の一枚です。
【収録曲】
♪ 1. 唐八景ー序
https://www.youtube.com/watch?v=VY6zIsTGfYY
♪ 2. 風の篝火
https://www.youtube.com/watch?v=i1tECxZ8AQs
♪ 3. 歳時記
https://www.youtube.com/watch?v=zKetiyitMQk
♪ 4. パンプキン・パイとシナモン・ティー
https://www.youtube.com/watch?v=qQasnxqgKp4
♪ 5. まほろば
https://www.youtube.com/watch?v=XFELPoEccUs
♪ 6. 療養所
https://www.youtube.com/watch?v=a99TSrLIfMc
♪ 7. 春告鳥
https://www.youtube.com/watch?v=wH-DrpNFY0k
♪ 8. 立ち止まった素描画
https://www.youtube.com/watch?v=9YDUq60c9IY
♪ 9. 空蝉
https://www.youtube.com/watch?v=ZuN_U1Ldqtg
♪ 10. 木根川橋
https://www.youtube.com/watch?v=arbnktHVd5U
♪ 11. ひき潮
https://www.youtube.com/watch?v=KgtKBIg08t8
アルバム『夢供養』収録曲である「療養所」は、ずいぶん昔に聴いた曲なんだけど、なぜか久しぶりに聴くと、昔とは違う曲が妙に心に響くときってありませんか?
結核療養所の孤独な老婆との交流を描く形式を借りて、人生の冷酷さとそれ故優しくなれる人の不思議さを歌った楽曲なんですが、認知症らしきおばあさんと、その人を見つめる、さだまさしの優しい視線が、すごく伝わってきます。
死を、前より身近に感じる年齢に近づいたからでしょうか?
多分、人生の折り返し地点は過ぎている年齢だと思うしなあ(^^)
自分の死を想い、大切な人の死を想うと、いつか、必ず訪れる、大切な人の死。
そして、いつか、必ず訪れる、自分の死。
死を感じる時、それは、人生は無限じゃないという、当たり前過ぎる事実を、しっかりと肌で感じられたとき。
今、やるべきことが見えてくるんでしょうね。
もしかしたら、人間の行動力って、死を想うことから生まれてくるのかも。
こんな言葉を想い出しました(^^)
ネイティブ・アメリカン(北米インディアン)である、タオス・プエブロの古老の言葉です。
「今日は死ぬのにもってこいの日」ウッド,ナンシー(著)ハウエル,フランク(画)金関寿夫(訳)
「今日は死ぬのにもってこいの日だ。
生きているものすべてが、私と呼吸を合わせている。
すべての声が、わたしの中で合唱している。
すべての美が、わたしの目の中で休もうとしてやって来た。
あらゆる悪い考えは、わたしから立ち去っていった。
今日は死ぬのにもってこいの日だ。
わたしの土地は、わたしを静かに取り巻いている。
わたしの畑は、もう耕されることはない。
わたしの家は、笑い声に満ちている。
子どもたちは、うちに帰ってきた。
そう、今日は死ぬのにもってこいの日だ。」
こんな安らぎと生命観が得られるならば、穏やかに生きも死にもできようって想いませんか?
そうであれば、生きるだけで、いいのかも(^^)
こんな本があります。
「生きてるだけで、いいんじゃない―いのち・こども・あい・たび」中島デコ(文)ブラウン,エバレット(写真)
生きていれば良い事も、悪い事もいろいろあるけど、みんな含めて、楽しくやろうよ!
そんな元気を与えてくれる素敵な一冊です。
生きてるだけでまるもう~け~♪
どんなに今が辛くたって、どんなに今が痛くたって、生きてさえいれば、物語は続いていくから!
まあ、もう、遅いってことないと想うし、何度でもゼロからやり直せばいいじゃんねぇ~(^^)
動きようもないなら、焦らないで、ただ、時間が経つのを待って、じっとしててもいいって想うんだけど、ね。
そうそう、生きながら生まれ変わることも有りですな。
生きてさえいれば、いつか、必ず、今の痛みを笑える日が来るから、心配しないでよ、みんな(^^)
最後に、「大人のための幸せレッスン―自分を幸せにする31の方法」に載っていた、質問を皆さんに贈りたいと思います。
「大人のための幸せレッスン―自分を幸せにする31の方法」(集英社新書)志村季世恵(著)
皆さんも自分が死ぬときのことを、ちょっとイメージしてみてください。
ひとり静かに安らかなときを迎え、不安や苦しみももう消えていて。
いろいろあったけれどいい人生をすごせたなって感じている。
そのとき、ひとりの子どもがあなたのそばに来て、「これからを生きる私たちとって、生きていくうえで一番大切なことは何ですか?」と尋ねたら・・・・・・
さてあなたはどんな<ラストメッセージ>をプレゼントするのでしょうか?
人の気持ちは、一番大事なことが満たされなければ、幸福感は得られないから、表面的で一時的な満足ではなく、本心から満足できることが何かを考えてみる。
また、人それぞれ大事なものは違ってくるし、正解になるようなものもないのだから、他人や一般論がどうかではなく、自分の場合はどうなのかを考えみる。
その結果として、自分にとって、何が一番大切で幸せなことなのか?を考えて、それを大事にしていければ良いですよね(^^)/
その答えが<ラストメッセージ>であり、それが、あなたにとっての人生の<本当の目標>なんだそうです(^^)
「借金があっても母が好きな人のほうが、母が嫌いな金持ちより幸せです。」加藤諦三(社会学者)
「自分にとって、ほんとうに大事なことってなんだろう。自分にとって、ほんとうに大切な人って誰だろう。このふたつを、本気で思っているだけで、いい人生が送れるような気がする。」糸井重里(コピーライター)