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【ことばになりたい】人生を3つの単語で表すとしたら?


別所隆弘さん撮影

[テキスト]
「人生を3つの単語で表すとしたら」 一倉宏(著)

どんな単語で、それを表すのだろう。

チャップリンなら、

「希望」

「勇気」

「サムマネー」

だった。

ブッタだと、単語ではないけど、

「どれだけ愛したか」

「どれだけ優しく生きたか」

そして、

「どれだけ潔く自分に合わないものを手放したか」

と語っておられた。

そして、一倉宏さんは、ユナイテッドアローズグリーンレーベルリラクシング札幌店のオープンを告知する新聞折込み広告(2003年)のコピーで、こんな風に語っていました。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 

ぼくが高校生だったころ

きみに電話をかけるとしたら

児童公園の 電話ボックスからだった

ガラスの扉に寄りかかって

開いたままにして 疲れたらしゃがんで

何時間でも

「人生を3つの単語で表すとしたら」

これ 期末の英語ででた問題

タカハシ先生って ヘンなの

ヘンだけど いい先生

ユウジだったら 何を書く?

ぼくは なんて書いたかを 憶えていないよ

きみが なんて書いたかも もう忘れた

バイクと音楽とファッションにしか

興味がなかった あのころ

たしか なんでも○をくれたの あの問題は

つづりさえ間違ってなければ

答案を返しながら タカハシ先生は言った

人生の答は1つじゃない

しかし つづりには正解がある

love health

愛と 健康と

3つめを何にしようかって悩んだ

friends? family? or money?

お気に入りのパンプスについたキズのように

忘れない 考えあぐねた 3つめの答

水族館でキスをした

地味な淡水魚のコーナーは 閉館30分前には

おばあちゃんちの裏山の小川のように

誰もいなくなった

きみの好きだった あの 目のくりくりした

ちいさなさかな なんていったっけ

むかしの日本なら どこにでもいたという

絶滅の危機 の文字と ぼくたちのキス

それから 2年後の ぼくたちの危機

あのまま

ぼくたちは別れたままだとしたら

人生を3つの単語で表すとしたら

こどもの 笑い声や 寝息のすきまで

おふろのお湯に顔をふせて 記憶へ潜る

いまの わたしなら なんてかく?

いまの ユウジなら なんてかく?

わたし タカハシ・ティーチャーのこと

好きだったんだよ ほんとはね

だから きいたの

せんせい

せんせいなら なんてかきますか

おしえてください

せんせいは ちょっとつまって

それから なぜだか かおをあかくして

こくばんに かいたんだ

boy meets girl

じんせいを いちばんシンプルにいえば

おとこのこと おんなのこが

であうものがたり じゃないかな

思い出したら 涙がでたのは

ティーチャーのせいじゃないよ ユウジ

人生を3つの単語で表すとしたら

人生をいちばんシンプルに表すとしたら

◆ ◆

私たちのお店のなまえは green label relaxing

あなたの人生に ちょっとすてきなもの

あなたの人生の たいせつなひとと いらしてください

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 

そう言えば、

「第12回 坊ちゃん文学賞」

に、

「テーマは、あなたの中に。」

とあって、例えば、こんな感じで、人生を3行で表してみると、

その毎日、
思えば平凡。
書けば文学。

その不満、
言えば愚痴。
書けば文学。

その人生、
語れば説教。
書けば文学。

その青春、
喋れば生意気。
書けば文学。

シンプルは、嘘がつけない。

ただ、シンプルは、人間の創造力を奪う。

だけど、人は、

・書くこと

・消すこと

で、書いている。

だからこそ、シンプルだけど、凝ってみれば・・・

その文章は、

■シンプルにして奥深く

「親指の爪ほどもなき消ゴムに推敲の一首またも消したり」
(伊勢方信『ピアフは歌ふ』より)

■穏やかにして激しく

「書きかけの作文消している顔をクシャと原稿用紙に撮られる」
(中森さおり「髪を切る」『ねむらない樹 vol.6』より)

変化して行き、消して書くという行為には、人の、ひたむきな想いがこもっている気がしてなりません。

正に、その行為(文学など)は、人の人生さえ左右する”ブレンド”に、成り得るのでしょう、ね。

そう、普通を突き詰めると・・・

「書く」

「消す」

を繰り返しながら、やがて、個性になるのかなって、そんな風に感じます(^^)

「空白の原稿用紙ひとマスは注射のあとにはりつけたまま」
(やすたけまり『ミドリツキノワ』より)

【参考図書】
「ことばになりたい」一倉宏(著)

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