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【「嗜む」のすすめ】脳という編集装置に焦がれ本を嗜む

Harumiさん撮影

私達が密かに大切にしているものたち。

確かにあるのに。

指差すことができない。

それらは、目に見えるものばかりではなくて。

それらを、ひとつずつ読み解き。

それらを、丁寧に表わしていく。

そうして出来た言葉の集積を嗜む。




■テキスト

「[増補版]知の編集工学」(朝日文庫)松岡正剛(著)

本書刊行時の時代背景と執筆時の思い、そして、今回、増補した制作経緯を明かし、あらためて「知の編集工学」で問おうとしたメッセージを、以下の5つの視点で解説しています。

1.「世界」と「自己」をつなげる

2.さまざまな編集技法を駆使する

3.編集的世界観をもちつづける

4.世の中の価値観を相対的に編み直す

5.物語編集力を活用する

これらの視点の大元には、「生命に学ぶ」「歴史を展く」「文化と遊ぶ」という基本姿勢があることも、AI時代の今こそ見直すべきかもしれません。

■脳という編集装置

私達の脳は、経験したことを、直列に思い出すわけではないそうです。

頭の中で、情報圧縮をすることが出来るとのことです。

情報には、背景(地)と形(図)という構造があり、ポイントとなる形だけを抽出して、頭に入れる能力があります。

慣れない不得意な分野・対象については、地と形の関係が、曖昧でポイントを、拾えません。

注目する対象は、知識ラベルといって、意味単位のネットワークで、つながっています。

そのつながりは、多層的で、いわば、ハイパーリンク状態です。

頭の中で考えるということは、この意味単位のネットワークを、ジグザグに、進むことです。

その進み方は、でたらめではなく、一定のプログラムがないと、脈絡を辿れないし、意味ある行動をすることも出来ません。

その行動や思考を辿ろうとする時(思い出す)、私達は、情報圧縮をしています。

そこに、編集の仕組みが、関ってきます。

情報の海から意味ある事を抽出する時、私達は、情報圧縮をしながら、情報に、句読点を打って、情報のオーダー(順番、秩序付け)を決めています。

情報科学では、情報は、

「発散するエントロピーの逆数」

と規定しています。

秩序を見出すことで、混沌たる情報に、意味を与えているわけですね。

情報の意味とは、差異です。

情報を意味あるコードに分節することが、編集の第1歩であるそうです。

ノドの文節から音声が生まれ、言語の文節から文法が生まれ、社会の文節から階層が生まれ、握る手の文節から数が生まれた。

生命は、情報そのものです。

生命が、遺伝子情報を持つのではなく、遺伝子情報が、生命を持ったのであろうと、推定できます。

進化とは、情報の編集史のことだと、言えるかもしれません。

そのなかで、仮の情報自己の設定、すなわち、やわらかい自己組織化が、行われてきたのでしょう。

編集の歴史は、生命発生のドラマの中にあり、編集は、文化技術、社会技術など、多方面の顔を持つため、なかなか実態を見せなかっただけなのでしょうね。

人間の諸活動は、全て、編集だったのだという見解は、頷けます。

また、生物の情報編集の仕組みには、以下の通り、3つの起源が有ります。

①遺伝情報(進化の源泉)

②免疫情報(免疫的自己)

③中枢神経と脳のシナップス結合

進化を生んだのは、膨大な遺伝情報(遺伝子コードの長さ)のプ-ルのせいであり、免疫も、膨大な遺伝子組み換えの可能性から出来たのであり、脳は、超膨大なシナップス結合の数から生まれました。

脳は、一言で言えば、中枢編集装置というものだと考えられます。

脳の働きのなかで、編集技術にとって注目すべきは、記憶と再生のメカニズムです。

短期記憶は、リハーサル回路で意味を持つ記憶(ストーリーと感情を加えて)に変えて、長期記憶に蓄えられます。

これは、もう忘れません。

記憶には、注意の喚起が、重大な契機となります。

ノイズの中から注意する対象のシグナルを拾うようなものです。

そして、記憶の再生には、カテゴリー・プロトタイプ(類型、典型、原型)の役割が大きいそうです。

そもそも、記憶の再生とは、外からやってきた情報が、自分に似たカテゴリーを探すことではないかと考えられます。

記憶と再生の脳構造には、枠組み「フレーム」(スキーマ)が、用意されているようです。

デフォルト値を空欄にした構造を、脳の中に、つくっているらしいです。

これを「見本」、「レパートリー」というそうです。

編集の構造といっても、いいかもしれませんね。

個別体験のデフォルトを、そこに記憶してゆく。

このレパートリーの組み合わせが、ようするに、編集の構造であると言えます。

脳は、電気回路や化学物質だけでは説明できない、記憶の増幅には、報酬回路や大脳周辺部の感情も動員しているようです。

脳は、やはり精神(心)の座を管理するセンターであると考えられます。

自分の脳を研究する人は哲学者で、心は、脳にあるのだと考えられています。

精神の外化と、その編集可能性という認識は、精神の自由な形態-構造を、様々な場所に作り出すことが出来ます。

これを、外に漏れた脳という観念論(社会や技術)は、まさに脳の構造そのものであると言えます。

従って、編集可能性に満ちている点を、思う存分、嗜みたいものです。

■3夜30冊目

2024年4月18日から、適宜、1夜10冊の本を選別して、その本達に肖り、倣うことで、知文(考えや事柄を他に知らせるための書面)を実践するための参考図書として、紹介させて頂きますね(^^)

みなさんにとっても、それぞれが恋い焦がれ、貪り、血肉とした夜があると思います。

どんな夜を持ち込んで、その中から、どんな夜を選んだのか。

そして、私達は、何に、肖り、倣おうととしているのか。

その様な稽古の稽古たる所以となり得る本に出会うことは、とても面白い夜を体験させてくれると、そう考えています。

さてと、今日は、どれを読もうかなんて。

武道や茶道の稽古のように装いを整えて。

振る舞いを変え。

居ずまいから見直して。

好きなことに没入する「読書の稽古」。

稽古の字義は、古に稽えること。

古典に還れという意味ではなくて、「古」そのものに学び、そのプロセスを習熟することを指す。

西平直著「世阿弥の稽古哲学」

自分と向き合う時間に浸る「ヒタ活」(^^)

さて、今宵のお稽古で、嗜む本のお品書きは・・・

【「嗜む」のすすめ】脳という編集装置に焦がれ本を嗜む

「海路―染色圖案」神坂雪佳(著)

「なみ」(講談社の翻訳絵本)スージー・リー(著)

「おばけやしきにおひっこし」カズノ コハラ(著)石津ちひろ(訳)

「現な像」杉本博司(著)

「苔のむすまで」杉本博司(著)

「アートの起源」杉本博司(著)

「TORSO」金子親一(著)

「BIOSOPHIA of BIRDS(鳥のビオソフィア)」上田義彦(著)西野嘉章/秋篠宮文仁(編)

「ルウとリンデン 旅とおるすばん」(講談社の創作絵本)小手鞠るい(著)北見葉胡(イラスト)

「母系―河野裕子歌集」(塔21世紀叢書)河野裕子(著)

■(参考記事)松岡正剛の千夜千冊

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