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【GW期間中の自由研究(その10)】ヒトはなぜ夢を見るのか(その5)

酒井貴弘さん撮影

[テキスト]
「ヒトはなぜ、夢を見るのか」(文春新書)北浜邦夫(著)

[参考図書]
「ヒトはなぜ夢を見るのか 脳の不思議がわかる本」千葉康則(著)

「人はなぜ夢を見るのか―夢科学四千年の問いと答え」(DOJIN選書)渡辺恒夫(著)

「夢の正体 夜の旅を科学する」アリス ロブ(著)川添節子(訳)

「眠っているとき、脳では凄いことが起きている 眠りと夢と記憶の秘密」ペネロペ・ルイス(著)西田美緒子(訳)

「夢を見るとき脳は――睡眠と夢の謎に迫る科学」アントニオ・ザドラ/ロバート・スティックゴールド(著)藤井留美(訳)

ここで、睡眠と夢のサイエンスに関するキーワードについて、まとめておく。

1.レム睡眠とノンレム睡眠:

レム睡眠は急速眼球運動(REM)を、ともなう眠り。

身体は、ぐったりしているのに、脳は、覚醒状態に、近い状態になっているので、夢を見ていることが多い。

ノンレム睡眠は、レム睡眠ではない、いわゆる、安らかな眠りのこと。

ヒトでは、浅いまどろみの状態から、ぐっすり熟睡している状態まで、脳波をもとに、4段階に分けられる。

健康な成人では、これら、2種類の眠りが、約90分の単位をつくり、周期的に繰り返しながら、一夜の睡眠を構成している。

2.睡眠物質:

睡眠を修飾する作用をもつ体内物質の総称。

脳組織や体液から睡眠物質を直接抽出しようとする研究が、スイス、アメリカ、日本で、1960~70年代に行われ、それぞれ、デルタ睡眠誘発ペプチド、ムラミルペプチド、ウリジン+酸化型グルタチオンが同定された。

その後、サイトカイン、プロスタグランジン、ペプチドホルモンなど、多数の既知化合物が睡眠物質として提案され、各々の生合成の部位や、神経機構への修飾様式、分子レベルでの作用機構などが、多角的に探求されている。

3.夢と思考:

夢は、

「睡眠時に現れ、視覚性や聴覚性、運動感覚性などの明瞭な心像をもち、個々の心像は構成の複雑性と連続性を保ちながら相互に統一され、それ自体で1つ以上のドラマが形成されているもの」

と定義される。

思考は、

「感覚心像を欠くか、あっても内容に脈絡がなく、心像の体験が覚醒時の自我と同一延長線上にある場合」

を指す。

レム睡眠の夢は、生々しく奇怪な「夢らしい夢」が多いが、ノンレム睡眠の夢は、断片的で「思考的な夢」が多く、心像をともなわない「思考」が、大半を占めている。

4.夢見と情報処理:

ウィンソンは、脳内に取り込まれた情報のうち、重要なものが、レム睡眠中再生され、記憶として固定されるプロセスが夢となるとした。

一方、クリックらは、これとは逆に、不必要な情報を消去するプロセスが夢となるとした。

これに対し、ホブソンらは、夢は、覚えるためでも忘れるためでもなく、脳幹から発生する信号を受けて、大脳皮質が活性化され、夢が合成されるとした。

この合成仮説に対し、大熊は、眼球運動が引き金となって視覚映像が出現し、次々に連想がおこって、夢のストーリーが展開するという、連想仮説を提案している。

5.体内時計(Biological Clock):

行動、睡眠、自律神経機能、内分泌機能など、さまざまな生体機能は、約1日を周期として変動する現象がみられ、これは、概日リズム(サーカディアンリズム)と呼ばれている。

この概日リズムを刻む時計機構は、体内時計あるいは、生物時計と呼ばれ、哺乳類で、視床下部の視交叉上核に存在する。

この部位は、概日リズムの発振機能を担うとともに、網膜から光信号を受け、発振するリズムを、明暗周期に同調させる機能をもっている。

ヒトの体内時計の周期は、約25時間であることが知られている。

6.概日リズム睡眠障害(Circadian Rhythm Sleep Disorders):

生体リズムが外界の変化に適切に同調できない場合に、睡眠障害・日中の過度の眠気・易疲労感などが出現する。

概日リズム睡眠障害は、生体リズムの同調の不良による睡眠の障害を示す一群である。

これには、夜勤や時差地域への急速な移動など体内時計に、逆らった行動様式による外因性の症候群(時差症候群、交代勤務睡眠障害)と、個体の生体時計自身の機能不全により、睡眠と覚醒スケジュールが、社会的の望ましい時間帯から慢性的にずれてしまう症候群(睡眠相後退症候群、非24時間睡眠・覚醒症候群、不規則睡眠・覚醒パターン)がある。

7.眠気尺度(Sleepiness Scale):

夜間の不眠や睡眠不足、交代勤務などの影響が昼間に眠気としてみられる。

このような眠気を評価する方法として、主観的にはスタンフォード眠気尺度(非常に眠い:7点から、はっきり目覚めている:1点までの点数)や、VAS(Visual Analogue Scale:10cmの水平線上に眠気の強さを印す)が代表的である。

客観的には、MSLT(Multiple Sleep Latency Test:多回睡眠潜時検査)があり、脳波検査法を用いて、入眠に要するまでの時間(入眠潜時)を測定し、これが短いほど、眠気の強さが強いと判定する。

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