絵画の中の楽器(「ヴァージナル」編)
フェルメールは、手紙を読む・書く姿を描いた作品が多いですが、演奏する姿の作品も多く描いています。
寡作な彼が残した、演奏する姿を描いた絵画に、鍵盤楽器の一種「ヴァージナル」を描いた作品があります。
ヴァージナルとは、15世紀から18世紀のヨーロッパで愛好されたチェンバロの一種です。
長方形の胴体に、鍵盤と平行に弦が張られた楽器です。
当時のイングランドでは、チェンバロ族の楽器一般をヴァージナルと呼んでいたそうです。
現在、一般的に、ヴァージナルと呼ばれる、主に長方形の楽器だけが用いられていたわけではなかったそうです。
ヴァージナルの音を出す機構は、チェンバロと同様に、弦を弾く仕組みのため、強弱がつけにくく、音も極めて繊細です。
ちなみに、ハンマーで弦を叩いて音を出す「ピアノ」の正式名称は「ピアノフォルテ」。
小さな音から大きな音までを自在に出せることを意味した「ピアノフォルテ」が短縮されて「ピアノ」と呼ばれるようになりました。
さて、女王エリザベス1世の君臨した16世紀後半から17世紀初頭にかけて、イギリス音楽は黄金期を迎えます。
とりわけ、ヴァージナル音楽では、女王自身が、この楽器を愛好したこともあって、数多くの傑作が生まれました。
素朴ながらも、心に染み入るような抒情的で美しいメロディ。
描写的で、ときにコミカルでありながら、ウィットとユーモアを湛えた愛すべき佳品の数々。
フェルメールが聴いていたヴァージナルの響きやいかに。
こんな曲あたりは、いかがでしょうか。
W.バード「パヴァーヌとガガイヤルド」
O.ギボンズ「プレリュード」