【本棚のある生活+α】2024年9月に読んで面白かった本
昨年(2023年度)から、思い付きで始めた月イチペースで、面白かった本と見応えがあった映画を、ご紹介してきました。
さて、
「昔は良かった」
なんて言わない、言わせないと思っていたけど・・・
ちょっと、この絵巻物、ご覧になって頂けると、みんな、とてもいい表情してるんんだよねぇ(^^)
これは、200年ほど前の江戸時代、日本橋通りの町人文化を描いた「煕代勝覧(きだいしょうらん)」
という絵巻物です。
日本橋を渡る大勢の武士や町人たち。
魚河岸に魚を運ぶ舟。
日本橋川で遊ぶこどもの姿。
今も存在する店の暖簾や看板も見えます。
そこには、活き活きとした人々の暮らしがありました。
「『熈代勝覧』の日本橋」(アートセレクション)小澤弘/小林忠(著)
この様な日本の今を、
■残しながら
■蘇らせながら
色彩の窓や文字の海に、知らなかった
「わたし」
を見つけて、言葉が自分を創っていく、ということで、2024年9月に読めた本の中から、特に面白かった本(1冊)のご紹介です。
【特に面白かった本】
「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」シド・フィールド(著)安藤紘平/加藤正人(訳)
脚本を学んでいる人であれば、作者の名前を、耳にすることも、あるのではないでしょうか?
シド・フィールドさんは、1970年代から、
「ゴッドファーザー」
「アメリカン・グラフィティ」
「アリスの恋」
等に関わり、国際的評価を受けている脚本家です。
脚本家として活躍する一方で、ハリウッド式の脚本メソッド
■「三幕構成」理論
を、体系化したことでも知られていて、そのエッセンスが本書に記されているから、脚本を学ぶ上で必見の教本だそうです。
一読してみて、確かに、本書に掲載の脚本術を知っているか知っていないかで、脚本のクオリティや書き方が、かなり変わってくると言えると思われます。
よりよい脚本を書きたいと思っている人は、とても参考になる書籍だと感じました。
以下に、本書で解説されているシド・フィールドさんの脚本術の必見ポイントについて紹介しておきますね(^^)/
本書で解説されている点は、次のような点です。
主題(テーマ)を作る
登場人物を「創造」する
登場人物を「構築」する
ストーリーの作り方
シーンの作り方
シークエンス(目的を持ったシーンのかたまり)を考える
「何について、誰についての脚本か」
を明確にすることからスタートし、そこから実際の映像脚本を編み上げるまでのプロセスを、実際の名作映画の事例を参考にしながら学ぶことができます。
基本的に、脚本で描かれるストーリーでは、オープニングのA地点からエンディングのZ地点まで、主人公が目標を持って突き進みます。
その過程は、
第一幕:ストーリーの発端。状況設定が描かれる。
第二幕:ストーリーの中盤。主人公の目的に対してさまざまな障害が起こり、主人公の葛藤が描かれる。
第三幕:ストーリーの結末。主人公が目的を達成するための解決シーンが描かれる。
の三幕の展開で描かれます。
また、第一幕から第二幕、また第二幕から第三幕にそれぞれ進展する際に、
「プロットポイント」
といわれる転換シーンが必ずあるとされています。
プロットポイントⅠは、ストーリーが本題に入る転換点です。
第一幕から第二幕へ転ずるきっかけとなる出来事が描かれます。
プロットポイントⅡは、ストーリーが解決に向かう転換点です。
第二幕から第三幕へ転ずるきっかけとなる出来事が描かれます。
例えば
「テルマ&ルイーズ」
という作品での解説では、次のように第一幕、第二幕、第三幕、プロットポイントが紹介されています。
「テルマ&ルイーズ」(1991年、アメリカ映画)
<あらすじ>
平凡な主婦テルマが、友人のウェイトレス、ルイーズと共にドライブに出かける。
途中のドライブインで、テルマが見知らぬ男たちにレイプされそうになり、ルイーズは男たちを射殺してしまう。
二人はそのまま車でメキシコへと逃亡することになり、盗みの被害に合ったり強盗をしたりしながら逃げ続ける。
しかしとうとう警察に追いつかれ、2人は乗っていた車のスピードをあげ、崖から飛び出す。
車は宙を舞い、テルマとルイーズは自由を手に入れた。
<第一幕>
平凡な主婦のテルマは少し不器用な性格で、横柄で身勝手な夫に虐げられている。
ウエイトレスのルイーズは、テキパキとした性格だがミュージシャンである恋人のジミーが近頃ルイーズに見向きもしないことにイラ立ちを覚えている。
二人はそんな日常から解き放たれて、週末旅行に行くことにする。
>>>プロットポイントⅠ
旅行に出た途端に、テルマがバーで知り合った男に絡まれレイプされそうになり、ルイーズが男を射殺してしまう。
<第二幕>
殺人事件を起こしてしまったテルマとルイーズは逃げることにする。法から逃れるようにメキシコへ。
>>>プロットポイントⅡ
ユタのモニュメントバレーを通りかかり、広大な自然の中で、テルマはルイーズに「ありがとう」と告げる。
もうやり直しができないことを静かに覚悟する2人。
<第三幕>
警察車両がテルマとルイーズを追いつめる。二人は車ごと崖に向かって飛び込む。
以上が三幕構成の簡単な概要です。
シナリオコンクールに出す作品で多くの人が侵しがちな下記のような失敗も、本書の脚本術を押さえておくことで避けられるから注意してみて下さい。
<シナリオコンクールで指摘されがちな失敗点>
・ストーリーが単調である
・ドラマがない
・人間が描かれていない
・主人公の登場が遅い
・何を伝えたいのかわからない
・登場人物が多すぎる 等
これらの失敗は、本書の脚本術で、登場人物と事件のあり方、登場人物とストーリーのあり方、三幕構成とシーンの作り方を学ぶことで、避けやすくなります。
【二言三言】
面白そうなイベントを発見!
日本で、一番面白いフェア企画を競い合う
「Book Fair Championship(BFC)」
が、書店や出版社の有志14人で構成する実行委員会で実施されるそうです。
本屋の魅力のひとつに
「ブックフェア」
があります。
もう、本を売るだけじゃ書店は、回らない状態で、命綱の
「書店イベント」
で、書店員や出版社が、何かを伝えたいと、独自の切り口で、店の一等地の平台等で展開しているのですが、かなり大変な作業であることを、この記事でしりました(^^;
そこには本屋さんの工夫があり、ついつい、本を手にしたくなるものです(^^)
では、そんなブックフェアには、どんなものが有ったのか、下記記事を参照してみて下さい。
ここで、私はBFCへの参加資格が無いけど、身勝手にも、お一人様企画、
「もしもこんなブックフェアがあったら」
を開催してみました(^^)/
<架空のブックフェア名>
■Fika(フィーカ)書店さんのブックフェア名:
☆ゆるく楽しく美しくなっていく文庫フェア
☆「プレゼントなんかいいの」と言われた時には絵本をフェア
■いきぬき書店さんのブックフェア名:
☆その感情に反射して目の前が色づく季節本フェア
☆好きに生きるってベリーハードじゃんか泣き本フェア
■ひといき書店さんのブックフェア名:
☆未完成のまま今日をゆくのフェア
☆思い出の中で永遠に纏いたい言葉があるのフェア
■いきつぎ書店さんのブックフェア名:
☆生まれ変わるなら生きているうちにだぜ体験本フェア
☆あれれ?!今日まで、どうやって、息吸ってたんだっけ!?教えて本フェア
■ひとやすみ書店さんのブックフェア名:
☆その強さも弱さもわたしの遺産だ!省みて文庫フェア
☆少年半分少女半分大人も半分本フェア
■しょうけい書店さんのブックフェア名:
☆速さ✖時間じゃ出せない人と人との距離の求め方文庫フェア
☆悩むべき悩みだけ悩んできませんか?フェア
■たんま書店さんのブックフェア名:
☆言葉に頼りすぎると退屈な人間になっていく。脱ぐのは紡いだ言葉なのよフェア
☆人生は転がらないと次にいけない仕組み本フェア
<参考記事>
<参考記事>
【補足情報】
紀伊國屋じんぶんとは、紀伊國屋書店が主催する人文書の賞で、読者と出版社、紀伊國屋書店社員が協力して優れた人文書を選出するものです。
紀伊國屋じんぶん大賞では、一般読者からアンケートを募集し、その結果と出版社や紀伊國屋書店社員の推薦を基に、前年12月から翌年11月に刊行された人文書の中からベスト30を選出しています。
人文書とは、哲学・思想、心理、宗教、歴史、社会、教育学、批評・評論などのジャンルに属する書籍を指します。
「じんぶんや」は自分好みなので参考にさせて頂いていて、
「世に溢れかえる書物の山から厳選した本を、お客様にお薦めできるようなコーナーを作ろう」
と考えて立ち上げたそうで、人文科学およびその周辺の主題をふらふらと巡ってみると、
人文科学って、日々の生活から縁遠いことではなくて、生きていくのに案外役に立ったりするのだと気づかせてくれますよ(^^)
ちょっと、偶には、こんな本でも、手に取ってみたりしませんか?
【リストアップした書籍】
「形・モデル・構造 現代科学にひそむ美意識と直観」ジュディス ヴェクスラー(編),竹沢攻一(監訳)木原英逸(訳)
「紙一重」壺井栄(著)
「諜報国家ロシア ソ連KGBからプーチンのFSB体制まで」(中公新書)保坂三四郎(著)
「人を動かすナラティブ なぜ、あの「語り」に惑わされるのか」大治朋子(著)
「肉を脱ぐ」李琴峰(著)
「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」シド・フィールド(著)安藤紘平/加藤正人(訳)
「ジレンマの社会学」三隅一人/高野和良(編)
「禅と福音 仏教とキリスト教の対話」南直哉/来住英俊(著)
「「感情」から書く脚本術 心を奪って釘づけにする物語の書き方」カール・イグレシアス(著)島内哲朗(訳)
「レベレーション(啓示)(1)」(モーニングKC)山岸凉子(著)
「Science Fictions あなたが知らない科学の真実」スチュアート・リッチー(著)矢羽野薫(訳)
「洞窟壁画考」五十嵐ジャンヌ(著)
「BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか」ベント・フリウビヤ/ダン・ガードナー(著)櫻井祐子(訳)
「自己組織化と進化の論理 宇宙を貫く複雑系の法則」(ちくま学芸文庫)スチュアート カウフマン(著)米沢富美子(訳)
「アナロジア AIの次に来るもの」ジョージ・ダイソン(著)服部桂(監修)橋本大也(訳)
「脳科学でわかった! 80歳からでも若返る すごい脳活おりがみ」伊達博充(著)西剛志(監修)
「スプライトシュピーゲル I Butterfly&Dragonfly&Honeybee 全4巻」(富士見ファンタジア文庫)冲方丁(著)はいむら きよたか(イラスト)
「箱庭図書館」(集英社文庫)乙一(著)
「伝奇集」(岩波文庫)J.L. ボルヘス(著)鼓直(訳)
「ふしぎなキリスト教」(講談社現代新書)橋爪大三郎/大澤真幸(著)
「『ふしぎなキリスト教』と対話する」来住英俊(著)
「センスの哲学」千葉雅也(著)
「データ視覚化の人類史 グラフの発明から時間と空間の可視化まで」マイケル・フレンドリー/ハワード・ウェイナー(著)飯嶋貴子(訳)
「時間のヒダ、空間のシワ…[時間地図]の試み 杉浦康平のダイアグラム・コレクション」杉浦康平(著)
「RITUAL(リチュアル)」ディミトリス・クシガラタス(著)田中恵理香(訳)
「流れ――自然が創り出す美しいパターン2」(ハヤカワ文庫 NF)フィリップ・ボール(著)塩原通緒(訳)
「数量化革命」アルフレッド・W・クロスビー(著)小沢千重子(訳)
「世界を一枚の紙の上に 歴史を変えたダイアグラムと主題地図の誕生」大田暁雄(著)
「男はなぜ孤独死するのか」トーマス・ジョイナー(著)宮家あゆみ(訳)
「移民の経済学 雇用、経済成長から治安まで、日本は変わるか」(中公新書)友原章典(著)
「姫君を喰う話―宇能鴻一郎傑作短編集―」(新潮文庫)宇能鴻一郎(著)
「生命の跳躍――進化の10大発明」ニック・レーン(著)斉藤隆央(訳)
「「若作りうつ」社会」(講談社現代新書)熊代亨(著)
「枝分かれ――自然が創り出す美しいパターン3」(ハヤカワ文庫 NF)フィリップ・ボール(著)桃井緑美子(訳)
「かたち――自然が創り出す美しいパターン1」(ハヤカワ文庫 NF)フィリップ・ボール(著)林大(訳)
「形・生命・創造 科学と宗教を超える体験の宇宙」ランスロット・L. ホワイト(著)木村雄吉(訳)
「Altered Soil 土の記憶」勝井三雄(著)
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