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【「嗜む」のすすめ】ウェルビーイングに焦がれ本を嗜む

私達が密かに大切にしているものたち。

確かにあるのに。

指差すことができない。

それらは、目に見えるものばかりではなくて。

それらを、ひとつずつ読み解き。

それらを、丁寧に表わしていく。

そうして出来た言葉の集積を嗜む。




■テキスト

「[増補版]知の編集工学」(朝日文庫)松岡正剛(著)

本書刊行時の時代背景と執筆時の思い、そして、今回、増補した制作経緯を明かし、あらためて「知の編集工学」で問おうとしたメッセージを、以下の5つの視点で解説しています。

1.「世界」と「自己」をつなげる

2.さまざまな編集技法を駆使する

3.編集的世界観をもちつづける

4.世の中の価値観を相対的に編み直す

5.物語編集力を活用する

これらの視点の大元には、「生命に学ぶ」「歴史を展く」「文化と遊ぶ」という基本姿勢があることも、AI時代の今こそ見直すべきかもしれません。

■デジタル化社会と編集技術(その3)

歴史の中で経済文化を考えてみると、それには、典型的なモデルがあります。

西欧社会の「コーヒーハウス」と日本の「茶の湯」の場って、ありますよね。

この2つは、飛びっきりの経済文化のモデルであり、また、比類ない編集空間でもありました。

コーヒーハウスは、17世紀末ロンドンで、大量に発生しました。

市民革命の後であり、産業革命の前夜でもありましたね。

ブルジョアジーの出現と、近代産業の勃興期であったといえば、その社会背景が、理解できると思います。

濃いコーヒーの香と、タバコの煙が立ち込める空間。

そこで、何が生まれたのか。

①まずコーヒーハウスは「ジャーナリズム」を創始した。

新聞を読み、情報誌がおかれ、ヨーロッパ最初の活字編集メディアが生まれ、ジャーナリズムの誕生となった。

②コーヒーハウスは、「株式会社」を発展させ、保険システムを生んだ。

好奇な目で、世界の経済情勢を見つめ。

儲け話に投資をしてゆく。

イギリスの重商主義は、七つの海に艦隊を派遣し、それがもたらす情報に商売のネタが渦巻き、利に敏い人々の投資と、リスクの商売が生まれた。

③コーヒーハウスは、「政党」をつくった。

議会主義政治の背景を作った。

党派ごとにコーヒーハウスを選び、そこで、政策論議に、花を咲かせた。

パリでも同じ状況であった。

④コーヒーハウスは、「広告」をつくった。

夥しい量のチラシが、ハウスに、ばら撒かれていた。

⑤コーヒーハウスは、「悪党」の巣であった。

良いたくらみは、「株式会社」をつくったが、悪いたくらみは、犯罪者をつくったり、秘密結社をつくった。

日本の中世から戦国時代に始まった「茶の湯」というサロンは、堺の鉄砲商人と大名が結びついて、独特の価値観を共有し、多くの職人が作る工芸品を洗練し、庭、茶室の建築文化にも発展していきました。

サロンに集まる人の会話は、直接的ではないにしろ、政治の機密や戦争の準備という経済行為につながっていましたね。

茶の場は、諜報組織の会合でもありました。

千利休が、秀吉に切腹を命じられた説のひとつが、利休が秀吉の内々のことを任されるほど大きな存在になっていまい。

すると、三成らが、

「秀長が亡くなったことで、公のことも利休の手に委ねられるようになるのではないか?」

という懸念を抱き、排除を急いだと。

そこには、経済と文化を結ぶび、この二つを織り成すインターフェイスは、

「好み」(美意識)

なのでしょうね。

このサロンという経済文化のプロトタイプは、18世紀には、「百科全書」と「マスメディア」の出現に繋がっていきました。

さらに、19世紀には、「万国博覧会」と「百貨店」という形に至ります。

現代日本には、この経済文化プロトタイプが、欠如している様に感じます。

人が心身ともに良好に過ごし、健やかで幸せな状態にあることを指す「ウェルビーイング」。

そもそもWell-being(ウェルビーイング)とはなんでしょうか?

変化する社会環境でその認知と重要性は高まり、種々の空間(共創・編集)をつくるということ。

それは、そこで過ごす人たちの物語がはじまるということ。

その物語の中で、心理的に良好な状態になるためには、

①やってみよう因子(自己実現と成長)

②ありがとう因子(つながりと感謝)

③なんとかなる因子(前向きと楽観)

④ありのままに因子(独立と自分らしさ)

の幸せの4因子がポイントになると言われています。

■6夜60冊目

2024年4月18日から、適宜、1夜10冊の本を選別して、その本達に肖り、倣うことで、知文(考えや事柄を他に知らせるための書面)を実践するための参考図書として、紹介させて頂きますね(^^)

みなさんにとっても、それぞれが恋い焦がれ、貪り、血肉とした夜があると思います。

どんな夜を持ち込んで、その中から、どんな夜を選んだのか。

そして、私達は、何に、肖り、倣おうととしているのか。

その様な稽古の稽古たる所以となり得る本に出会うことは、とても面白い夜を体験させてくれると、そう考えています。

さてと、今日は、どれを読もうかなんて。

武道や茶道の稽古のように装いを整えて。

振る舞いを変え。

居ずまいから見直して。

好きなことに没入する「読書の稽古」。

稽古の字義は、古に稽えること。

古典に還れという意味ではなくて、「古」そのものに学び、そのプロセスを習熟することを指す。

西平直著「世阿弥の稽古哲学」

自分と向き合う時間に浸る「ヒタ活」(^^)

さて、今宵のお稽古で、嗜む本のお品書きは・・・

【「嗜む」のすすめ】ウェルビーイングに焦がれ本を嗜む

「里山のおくりもの ― 日本の原風景」今森光彦(著)

「奇縁まんだら」瀬戸内寂聴(著)横尾忠則(イラスト)

「湖のメルヘン」辻信太郎(著)

「表紙 omote-gami」吉増剛造(著)

「ととととだんごむし」みなみ じゅんこ(著)

「goma Katsuhiro Ichikawa Photographs」

「深泥丘奇談」(角川文庫)綾辻行人(著)

「深泥丘奇談・続」(角川文庫)綾辻行人(著)

「深泥丘奇談・続々」(角川文庫)綾辻行人(著)

「PEACE LAND m.hasui Panoramic photographs2002-2007」

「風のリーラ」堤江実(著)出射茂(イラスト)

■(参考記事)松岡正剛の千夜千冊

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