【宿題帳(自習用)】「阿頼耶識(あらやしき)」をやり直してみる
[テキスト]
「十牛図入門 「新しい自分」への道」横山紘一(著)(幻冬舎新書)
[補足テキスト]
「NHK宗教の時間 唯識 (上)心の深層をさぐる」多川俊映(著)
「NHK宗教の時間 唯識 (下)心の深層をさぐる」多川俊映(著)
[参考図書]
「唯識の思想」(講談社学術文庫)横山紘一(著)
「俳句で学ぶ唯識 超入門 わが心の構造」多川俊映(著)
[参考記事]
[ 内容 ]
室町時代に中国から伝わり、日本人が夢中になった不思議な十枚の絵がある。
逃げた牛を牧人が探し求め、飼い馴らし、やがて共に姿を消す―という過程を描いた絵は十牛図と呼ばれ、禅の入門図として知られる。
ここでは、「牛」は「真の自己」を表す。
すなわち十牛図とは、迷える自己が、自分の存在価値や、人生の意味を見出す道程を描いたものなのだ。
禅を学ぶ人だけでなく、生きることに苦しむすべての現代人を救う、人生の教科書。
[ 目次 ]
序章 いま、なぜ、「十牛図」が必要か。「十牛図」が現代に問いかけてくるもの
第1章 牛を尋ね探す(尋牛)
第2章 牛の足跡を見つける(見跡)
第3章 牛を見つける(見牛)
第4章 牛を捕まえる(得牛)
第5章 牛を飼い馴らす(牧牛)
第6章 牛に乗って家に帰る(騎牛帰家)
第7章 ひとり牧人はまどろむ(忘牛存人)
第8章 真っ白な空(人牛倶忘)
第9章 本源に還る(返本還源)
第10章 町の中に生きる(入廛垂手)
[ 問題提起 ]
著者は仏教学者で、唯識思想を専門に研究されている方です。
本書のテーマは、タイトルの通り、十牛図についての入門的な解説になっています。
十牛図とは、仏教の禅において悟りに至る道程を、牛についての10枚の画で段階的に表現した図集です。
本書にも大きく載っていますが、どんなものかすぐにご覧になりたい方は、「十牛図」で検索するとよいと思います。
十牛図についての本は、以前からありますが、今回、新書として出版されたのは、十牛図が、自分探しをテーマとしているという面もあるからでしょう。
社会に余裕が出てくると、自分探しが流行りますが、日本は、世界標準で見ると、豊かな状態が続いているため、慢性的に、自分探しが流行っていると言えます。
著者によると、人生の三大目的は、以下の通りです。
・自己究明
・生死解決
・他者救済
「生死解決」というところは、仏教的な感じがします。
自分も、ある時期、
「何のために生きているのか」
ということを、常に考えて、本を読みましたが、参考になったのは、ナチス・ドイツの強制収容所を経験され、卑劣な環境の中で生き延びた精神科医の故ヴィクトール・フランクルの言葉を拝借すると、
「それでも人生にイエスと言う」ヴィクトール・E・フランクル(著)山田邦男/松田美佳(訳)
「そもそも、我々が人生の意味を問うべきではありません。
我々は人生に、問われている立場であり、我々が自分の人生の責任を引き受けることにのみ、その問いかけに答えることができるのです。」
すなわち、自分が人生に意味や目的を問いかけることで答えを導くのは傲慢でしかなく、日々、直面する人生からの問いかけに対して、
「自分の認識を深めること」
「認識を深めることによって人の役に立つこと」
等の様に、応えて行くことによってのみ、意味や目的を見いだせると学びました。
あくまでこれは、一つの考え・アイデアに過ぎないかもしれません。
[ 結論 ]
十牛図に戻ると、本書には、牛は「真の自分」、牧人は、
「真の自分を追い求める自分」
とありますが、自分の解釈では、牧人が「真の自分」、牛は、「煩悩」ではないかと思います。
本書の特徴としては、唯識思想で、十牛図を読んでいることです。
唯識思想とは、
「唯だ識のみが存在する」
という唯心論的な仏教思想ですが、ヨーガの実践も重視しているところに、特徴があります。
無意識の構造などについても論じられており、フロイトが無意識を「発見」するはるか以前に、仏教では無意識について、より深いレベルで論じられていたということでも、よく引き合いに出されます。
十図のうち、牛が出てくるのは、6枚目までです。
自分の解釈だと、牛は、煩悩の象徴ですが、煩悩と向き合うためには、社会で生活をするのが、一番よいのではないかと思います。
自分探しといっても、ずっと禅の瞑想をしているわけではなく、十牛図からも、半分以上が、社会との接触によってなされます。
十図のうち、瞑想と関係するのは、7・8・9図の3枚です。
10図は、悟った後に、再び社会に戻ることを示しています。
十牛図は、禅の図ですが、瞑想を重視する禅においても、悟りの段階のほとんどは、社会と関係しています。
悟りたいのであれば、何でもよいですが、社会的な活動を続けながら、自分と向き合うのがよいと思います。
ポイントは、自分と向き合うことで、それがないと眠っているのと同じ状態です。
もちろん、眠っている時期があってもよいとは思いますが。
以上の解釈については、自分の主観がかなり入っています。
[ コメント ]
十牛図のよい点は、図から、その人なりのさまざまな解釈ができるところです。
本書にも著者の解釈が書かれており、専門的で参考になります。