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【私の無形コレクション】お気に入りの場所(空間)

岡田裕介さん撮影

みなさんにも、お気に入りの場所って、有ったりしませんか?

それは、具体的な場所だったりするかもしれないし、「この雰囲気が好き」って感じる空間だったりするかもしれません。

そんな居心地の良い場所や空間を、自分の意匠としてコレクションしておくと、気分転換になったりします。

例えば、

■お気に入りの椅子に座ると、ここが、自分の居場所と感じて、ほっとする。

■お部屋の一角に、お気に入りの「マイスペース」を創る。(例えば床に「ラグマット」を敷いて“ゾーニング”してみる)

■おうちでも職場でもない、自分らしさを取り戻せる場所をサードプレイスと言いますが、お気に入りのカフェ等ではなくて、「街」をサードプレイスにしてみる。

<事例短歌紹介>

「今よりは姫路に行けばなにもかもうまくいくはずパンも旨くて」町田康

「くるぶし」町田康(著)

「同じ場所にとどまりたければ走ること(ただし黒鍵は踏まないように)」
(同人誌『町』(2011)より)

等々、その主眼は、あくまで、その場全体の五感で感じとった空気感であり、そんな平日&週末リフレッシュ用無形空間コレクションが有ると面白いよね(^^♪

また、普段、遠景で見る風景と、近景で見る実寸に近い風景が、風景式庭園(桂離宮)、水墨画や能にも共通して見られるのですが、共存していることに、あまり違和感を抱かない。

それは、同じアングルの中に、いくつかのスケールを並列させるという手法であり、要な要素のみを取り出して他を捨て、取り出したもののみを拡大し、強調して見せる表現は、日本的なものであると、清水泰博氏が本書の中で述べていましたね。

「京都の空間意匠~12のキーワードで体感する~」(光文社新書)清水泰博(著)

山々に囲まれた狭い風土で育まれた文化は、分けて繋ぐ/見立てる/巡る/くずす、ずらす/組む/透ける/生けどる、など、動きのなか(動詞)に美や安らぎを感じるものらしいです。

著者は、言います。

「変わっていくものの中に美を見い出し、今度はそれを途中で留めようとする。

またその場の環境が変わればまたそれに合わせて空間を変化させ、その場に相応しいものにしようとする――日本ではどうもそのようなことがずっと行われてきたように思われる」(※印参照)

季節はもちろん、その風景を見る時の天気や時間帯によって変化する空間の一瞬一瞬を味わう。

動きの中に現れる安らぎの相を、自身の伸びやかな五感を用いて感じられる空間のコレクションが多様であればある程、色んな感覚が身体に流れ込む。

有形のコレクションの数より、無数の無形のコレクションの感触、鮮やかさや柔らかさ、そして、遠い先に見える重量感が、私を陰ながら支えてくれているのかと、そう感じます。

それだけでも、日々を、ゆったり散策している気分にさせてくれるから、人生って不思議ですね(^^♪



※印:

「Less is More」とは、「少ない方が豊かである」という意味です。

20世紀のモダニズム建築を代表するドイツ出身の建築家のミース・ファン・デル・ローエが残した言葉として知られています。

シンプルなデザインを追求することで、美しく豊かな空間が生まれるという、建築家としての信念を表した言葉です。

また、同氏は、

「God is in the details.(神は細部に宿る)」

というモットーを掲げたことでも知られていますね。

ここから派生して、現代では、建築の分野に限らず、プロダクトデザインやWebデザインなどの分野における引き算の美学や、

少ないもので豊かに暮らすミニマルライフのポリシーを代弁する言葉として使われています。

また、近年では、環境保全の観点からも、物質的な豊かさを追求するのではなく、大切なものだけを選び取る「Less is More」の意識が欠かせないと言われていますね。

そして、ビジネスの世界においても、現状に変化をもたらしたり、改善を進めようとしたりする時、今やっていることに何かを追加する足し算の発想になりがちです。

しかし、冗長な文章から単語を間引いたり、旅行のスケジュールに余裕を持たせたりするように、組織や事業にとって不要なものを取り除くこと、すなわち、引き算の発想に立つことのほうが、価値創造に直結する可能性が高まります。

そう言えば、この「Less is More」と同じような意味合いを持つ表現として、海外のデザイン業界では、以下のフレーズがよく使われているそうです。

■「Everything you need, nothing you don’t」(必要なものだけ)

■「Perfection is achieved when there is nothing to take away」(完璧とはこれ以上削れない状態の事である)

因みに、「星の王子さま」の作者であるサン=テグジュペリは、

「星の王子さま」(新潮文庫)サン テグジュペリ(著)河野万里子(訳)

「Perfection is achieved, not when there is nothing more to add, but when there is nothing left to take away(完璧とはこれ以上加えられない状態の事ではなく、これ以上削れない状態の事である)」

という言葉を残しており、上記のフレーズは、ここから来ていると思われます。

また、平素なものを良しとする「Less is Mor」の価値観は、古来から、日本に根付く「禅」や「侘び寂び」の精神と共通する部分があります。

ローエ氏は、日本庭園を見て、

「Less is More」という言葉を思いついたとも言われており、日本人の美的感覚とは、相性が良さそうですね。

これまで、モノへの執着を捨てることをコンセプトとする片付け術である断捨離や、必要最小限の持ち物で暮らすミニマリストが、ブームを巻き起こしたこともあり、

「ぼくたちに、もうモノは必要ない。 増補版」(ちくま文庫)佐々木典士(著)

生活のあらゆる面で、

「減らすことがいいことだ」

と考える人が、増えているようです。

「Less is More」は、減らすことを目的とした思想というよりも、どちらかと言えば、

「少ないもので最大の効果を得るために、あえて最小限の要素に絞り込む」

という美意識を表した言葉だといえるかもしれませんね(^^)

少ないからこそ、ひとつひとつの要素をおろそかにできない。

このこだわりこそが完璧を生むことにつながり、まさに、

「神は細部に宿る」

のでしょう。

さてと。

そんな無形コレクション(お気に入りの場所(空間))も、コツコツと増やして行きますか(^^♪

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