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それぞれの必要な時間

世界的な大富豪たちに「何が一番欲しいですか?」とある日本人作家がアンケート調査したところ、口を揃えて「時間」と答えられたそうです。

また、ドイツの児童文学作家であるミヒャエル・エンデの小説「モモ」の中にも、こんな一節があります。

「人間は自分の時間をどうするかは、自分自身できめなくてはならない。」

「人間には時間をかんじとるためにココロというものがある。そして、もしそのココロが時間をかんじとらないようなときには、その時間はないもおなじだ」

同小説内には、時間貯蓄銀行からやってきた「灰色の男たち」が、日々時間を節約して銀行に貯蓄し、将来預けた時間を増やして戻せば、たくさんのコトができ、たくさんのモノも手に入り、成功を手にできると言って、人間を次々と変えていってしまいます。

時間をふんだんに持っている浮浪児の「モモ」以外の人間は皆、成功を夢見て時間を節約し、余暇の時間さえも少しの無駄をせず、行動をつめこみ、怒りっぽい、落ち着きのない人に変わってしまう様子が描かれているのですが、私たちは、五感による認識と同じ様に、ココロで時間を感じている様です。

それが感じられなくなったら、魂を売ってしまった抜け殻のような人体でしかなくて、時間泥棒に変わってしまっているということなんでしょう、ね。

さらにエンデは,このようにさえ述べていました。

「時間とはすなわち命なのです。そして命とは人間のココロの中にあるものなのです。人間が時間を節約すればするほど、命はやせほそって、なくなってしまうのです。」

時間は命であり、人間のココロの中にあるからこそ、それを節約するにつれ、命もすり減らされてしまうのだと理解していて、エンデは子どもたちに、前述の忠告(「人間は自分の時間をどうするかは、自分自身できめなくてはならない。」)したのでしょう、ね。

子育てにおいて、言葉がけが大事なことは今も昔も変わりませんが、エンデのメッセージは、「本当に自分のやりたいことは何だろう?」「自分らしさとは何だろう」と悩んだ時、見つかるまで時間をかけて自分に問いかけるということが重要なんだという事を、子ども自身が考えをめぐらす余地を残す(自己肯定感を高める)言葉がけの様に想えます。

社会に出ると、嫌でも他者と時間を共有しなくてはならないですし、時間に追われることは避けられなくなってきます。

そんな中で、自分らしく歩いている人とは、自分の考えで過ごす「必要な時間」=「自分時間」と他者が基準になる「社会時間」とを上手にバランスをとっている人ではないかと思います。

但し、全てが自分の思い通りにはならないけど、自分が決めなくては後悔することになりますよね。

自分が納得できて、自分が充実できると思える時間の使い方をするようにココロがけてみる。

自分が納得できる時間の使い方であれば、内容はそう問題ではありません。

最近、自分が無理しているなあと思うことはどんなことですか?

無理して焦って、失敗したり、落ち込んだり、疲れたり、悪循環を繰り返していないでしょうか。

どんと構えて落ち着いて取り組むには、気負わずにマイペースで続ける、という姿勢が必要ですね。

このあたりはどんな人も頭では理解しているはずなのにココロのどこか、感情のどこかがその頭の理解についていけず、もがいたりして、残念です。

どうしたら気負わずにマイペースでいられるのでしょう。

物事には、自分に必要なだけの時間がかかるようにできています。

前述の小説「モモ」の一節と同様に、これをココロで理解することが大事。

必要なだけの時間とはどういうことかというとちょっとした哲学論だけれど、物事はちゃんとなるようにできている、というような感じ。

大切なのは、時間軸の着眼点であり、過去ではなく未来を基準にして、現在行うべき行動を選択しているかどうかです。

例えば、ドイツの思想家であるハイデッガーは、時間を哲学する彼が遺した「未来が過去を決定し、現在を生成する。」という言葉は、まさにそのことを言い表しています。

過去が現在を決めるのではなく、未来というものを置くことによって過去が意味づけされ、現在が決まるということを言っています。

つまり、過去とは、変えることのできない出来事ではなく、その人の記憶の中にある、起こった出来事に対する現在の解釈に過ぎないということです。

歌人である与謝野晶子も「創造は過去と現在とを材料としながら、新しい未来を発明する能力です。」と言っており、全く新しいことでなくても、少しの変化や視点を変えていくだけでも大きな価値の違いを生み出せたりします。

したがって、全く同じ出来事でも、現在や未来から見た評価によって、過去はいくらでも書き換えることが可能になるし、過去、現在、未来についてどう意識しているかを考えてみることで、過去の苦しかったことや悔しかったことも、現在や未来が変わると、納得出来たり、感謝できたり、笑い話になることがありませんか?

これは、まさに未来が過去を変えたということであり、常に成長していくために何を意識(例えば、過去から何を学び、いま何に集中して、未来にどんな希望を持っているか?)していけばいいのかを考えて、そのイメージを頭に描き続けながら行動していければ、何かを掴む気付きが得られるだと考えています。

しかし、大抵の人間の時間観または時間軸は、過去の積み重ねが未来をつくると認識しているため、現在や未来のことを考える時に、過去の記憶を基準にしてしまいがちですから、それでいくと判断基準がズレてしまい、今やるべき事柄がブレてしまうため、徐々に向かうべき方向と違う方向へと向かってしまいます。

ですから、活き活きした方たちに共通する考え方としては、現在の認識によっていくらでも解釈が変わる過去を基準にして、現在の状況を分析したり、未来を予想することはしておらず、ワクワクする夢をもって、未来から現在を見つめる事で、自分が思い描いた未来につながる情報を現状の世界の中から見出しているのではないかと思われます。

要は、目的を定めてからの逆算とも考えられ、この着眼点が、成功する要諦の一つだと私は思います。

アウグスティヌス に倣えば、時間=過去(記憶)+未来(予測)となり、現在は、無時間性と考えることができたりします。

ですから、何事も未来から現在を見つめることが大切であり、そして、もし、不遇な過去があれば、それは目指すべき未来へ向かうための不可欠な糧だったと書き換えてみてください。

そのためにも、夢を語ることが必要であり、ひとりが夢を語りだせば、またそれぞれの夢を重ね合わせれば、そのチームや組織は、もっと強くなると、そう思います。

そこで、例えば、同じことを学んだり、気づいたりするのに人それぞれのタイミングや時間ってありますよね。

誰かはあることにずいぶん早くから気づくけれど他の誰かは、もう少し時間がかかったりする。

そのことです。

能力というより、タイミングというか。

だから、何かを成し遂げるのにも、そのためにかかる時間が人によって違うのです。

かかる時間が違うのは、私たちの能力うんぬんと考えてしまうと、自分がイヤになってしまうけれどこうして、これが私に必要な時間だったんだと考えれば、納得がいきます。

そういえば、ゴルフの宮里藍がアメリカツアー初優勝までに4年という道のりを「これが私に必要な時間だった」と言ったコメントがありました。

本当にそう!

時間をかけて、その過程で学びながら取得したものは、そう簡単には崩れないから、すぐに結果が出なくても、時間をかけて取り組んでみないと、ね。

効率からだけでは得ることのできない、時間の価値を創り出さないと・・・・・・

そう、誰かと比べて早いとか遅いとか、そういうのではないのです。

気負わずにマイペースを崩さず努力を続けるにはここを理解するのが鍵となってきます。

だって、誰かと比べて私はダメだなんて思ったりしていたら、気持ちも集中できないし、何より精神的にとてもつらい状況に自分を追い込んでしまうことになります。

後から考えると、回り道が結局功を奏したことも回り道したからこそ出会えた人、気づいたこと、学んだこともたくさんあったはず。

また、つらい思いをしたり、悔しい思いをしたからこそ強くなれたり、優しくなれたり、忍耐力を養えたり、ということもありますよね。

すべては、私たちに必要なものとして用意されていた、と考えてみましょう。

これは別にどんなことも運命だから私には変えられない、と無力感にひたるものではなくてすべては私たちの実になるために存在している、という見方です。

そうして考えれば、今あるもの、周りにいる人、幸運もアンラッキーもすべて肯定して見られます。

すべてひっくるめてその上で努力していく姿勢が持てるなら、いつとはわからなくても、いずれ努力が実を結ぶ日がやってきます。

劇作家であるベネットも「朝、目覚める。すると不思議なことに、あなたの財布にまっさらな二十四時間がぎっしりと詰まっている。そして、それは全てあなたのものだ。」と言っていたし、何となく考えているだけでは、あっという間に時間は過ぎていくから、一日一日の時間を、限られた貴重なものだと意識して、使い方を考えて、毎日の少しの時間でも、それが積み重なれば、膨大な違いになってきます。

いつとはわからない日のため、となると根気もいりますが、何よりも結局は自分のため、ということは周りにいる大切な人たちのためにもなると思ってもうちょっとだけ、と毎日やっていれば、ずっと続きます。

あなた自身も、これまでを振り返ってみればすべてが意味のあることだったと実感できるはず。

無理せず気負わず、マイペースを続けるためにもぜひ、自分に必要な時間があるのだと思って物事を見るようにしてみてください。

ずっと楽になれますよ。

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