【「嗜む」のすすめ】エディトリアリティに焦がれ本を嗜む
私達が密かに大切にしているものたち。
確かにあるのに。
指差すことができない。
それらは、目に見えるものばかりではなくて。
それらを、ひとつずつ読み解き。
それらを、丁寧に表わしていく。
そうして出来た言葉の集積を嗜む。
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■テキスト
「[増補版]知の編集工学」(朝日文庫)松岡正剛(著)
本書刊行時の時代背景と執筆時の思い、そして、今回、増補した制作経緯を明かし、あらためて「知の編集工学」で問おうとしたメッセージを、以下の5つの視点で解説しています。
1.「世界」と「自己」をつなげる
2.さまざまな編集技法を駆使する
3.編集的世界観をもちつづける
4.世の中の価値観を相対的に編み直す
5.物語編集力を活用する
これらの視点の大元には、「生命に学ぶ」「歴史を展く」「文化と遊ぶ」という基本姿勢があることも、AI時代の今こそ見直すべきかもしれません。
■エディトリアリティ
言葉がぶら下げているイメージは、不思議と世界的に共通しているようです。
そのため、時代性(世の動き)を、言葉で言い表すことができます。
例えば、日本の明治時代を「大」、大正時代から昭和の戦前までを「新」、戦後を「高」という言葉で代表することがあります。
「大日本」、「新秩序」、「高度成長」という類の編集ですね。
当たっているようでもあるし、無数の反論が出るかもしれませんが、それとなく時代性を、上手く表現しているようでもあります。
つまり、編集的価値があると言うことです。
こういった感覚を、
「エディトリアリティ」
があると言うそうです。
厳密な定義ではなく、
「それとなく」
「さもありなん」
「もっともらしさ」
という妙な現実感を、
「編集的現実感」
と言うのだそうです。
「エディトリアリティ」は、そもそも厳密性は持ち合わせていないのですが、特徴を3つ挙げてみると、以下の通りです。
①「エディトリアリティ」は、「見当」とか「適当」という編集的価値が生きている。
これは主語的、対象的でもないという特徴を言う。
俺・お前という主語的世界ではなく、無責任な噂の世界であるので、メディア的であって、粉飾という編集が、勝手気ままにつけることが出来て、馬鹿受けして広まるからだ。
デマも、この類である。
週刊誌の世界も、これに入る。
主体と客体をはっきりわけて考えるということは、近代思想からの事である。
オブジェクトという意味は、デカルトまでは、
「観念の中に投影された表象」
というぐらいの意味で、カントになってから、
「物自体」
が自分の意識の外に想定した。
②「エディトリアリティ」は、すこぶる述語的で、かつ述語的につながってゆくのである。
編集工学では、
「述語的であること」
を重視する。
それは、編集工学が分類的編集性より、形容詞的編集性を重視するからだ。
フレーゲという論理学者は、
「述語は関数と同じ働きをする」
といい、西田幾多郎は、
「意識の範疇は述語性にある」
といっている。
述語に、
「関係の論理」
を育む機能がある。
③「エディトリアリティ」は、メタゲーム的である。
メタとは、暗示のことで、言葉の前の意識構造である。
言葉は、自分で自分を触媒し、言葉の連鎖という自己言及的なループが存在するようである。
「情報の自己組織化から自己編集化」の言い換えといってもよい。
それにしても、「主体」とは、つまらないものである。
喧嘩しかしない。
つながろうとしないのである。
「エディトリアリティ」で、編集工学が、主体的でないことを、明確にしたかったのであろう。
■10夜100冊目
2024年4月18日から、適宜、1夜10冊の本を選別して、その本達に肖り、倣うことで、知文(考えや事柄を他に知らせるための書面)を実践するための参考図書として、紹介させて頂きますね(^^)
みなさんにとっても、それぞれが恋い焦がれ、貪り、血肉とした夜があると思います。
どんな夜を持ち込んで、その中から、どんな夜を選んだのか。
そして、私達は、何に、肖り、倣おうととしているのか。
その様な稽古の稽古たる所以となり得る本に出会うことは、とても面白い夜を体験させてくれると、そう考えています。
さてと、今日は、どれを読もうかなんて。
武道や茶道の稽古のように装いを整えて。
振る舞いを変え。
居ずまいから見直して。
好きなことに没入する「読書の稽古」。
稽古の字義は、古に稽えること。
古典に還れという意味ではなくて、「古」そのものに学び、そのプロセスを習熟することを指す。
西平直著「世阿弥の稽古哲学」
自分と向き合う時間に浸る「ヒタ活」(^^)
さて、今宵のお稽古で、嗜む本のお品書きは・・・
【「嗜む」のすすめ】エディトリアリティに焦がれ本を嗜む
「中川肇句集」中川肇(著)
「中川肇一行詩集」中川肇(著)
「金と芸術 なぜアーティストは貧乏なのか」ハンス アビング(著)山本和弘(訳)
「アートの価値 マネー、パワー、ビューティー」マイケル・フィンドレー(著)バンタ千枝/長瀬まみ(訳)
「語るためのグリム童話集 全7巻」小澤むかしばなし研究所(著)小澤俊夫(監訳)オットー ウベローデ(イラスト)
「ふたり★おなじ星のうえで」谷川俊太郎(著)
「世界遺産巡礼の道をゆく カミーノ・デ・サンティアゴ」南川三治郎(著)村上朝子(訳)
「ぺ」(講談社文庫)谷川俊太郎(著)
「色について語ってはいけない」原研哉(構成)藤井保(写真)原田宗典(文)
「桃次郎」阪田寛夫(著)
■(参考記事)松岡正剛の千夜千冊
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