『選択しないという選択』
読むように指定された本シリーズ第2弾です。ピクセル状に並んだチェックボックスが「選択」という漢字が対になっていておしゃれな表紙だなぁという印象でした。
【概要】
本書は「選択する」という行為が及ぼす利益と不利益について行動経済学の視点から実例や実験内容を交えて書かれた本です。現在、ビッグデータが活用されるようになり企業や政府はデフォルト・ルール(初期設定)を用意してくれるようになりました。そのことによって私たちは一々選択をしなくてもデフォルト・ルールに従ったサービスをすぐに受けることができます。
しかし、そのことによって私たちの「選択する」自由は失われてしまうのか、自分で選択する思考をやめてしまうのかということについて言及しています。
【書評】
企業側が提供しているデフォルト・ルールは大抵の場合は多くの人が選ぶであろう選択肢を提示し、企業側の利益になるように設定されています。そこから、オプト・アウト(デフォルト・ルールを選択しない)ができますよという程で選択肢を自由に選べるように見せています。
しかし、企業側の利益にであっても選択者側にとっては損をしているデフォルト・ルールもたくさんあります。入社したら必ず入らなければいけない健康保険や、毎日残しているのに購入させられている学校給食の牛乳もその例に当たると考えました。
本書ではデフォルト・ルールに従うことも時には必要であるが基本的に能動的選択の方が優れていると書かれています。能動的選択というのは数ある選択肢の中から自分で考えて選ぶことです。能動的選択の方がデフォルト・ルールより優れている点としては、選択者が持っている自由を行使し、学ぶことで能力を高めることができるという点が挙げられています。また、不当なリスクを抑え、選択することをサボる自分自身の惰性への道徳的嫌悪も避けることができます。実際、言われた通りに選んだ選択肢より、自分で選んだ選択肢の方が後悔しないという研究結果があります。
デフォルト・ルールというのは、選択者側の惰性を利用した企業側の利益の押し付けに他ならないのではないかと考えました。
もちろん、いいサービスでなければ多くの人に選択されないし、集めたデータの中から多くの人が選択すると思われるルールを提示しているのは事実です。
しかし、自分で選択するということを普段からしている人でなければ、自分がどういう選択をすることが最善なのか、このデフォルトルールに従ってもいいのかという疑問も、そのための学習意欲も湧かないのではと考えました。
ありとあらゆるところにデフォルト・ルールが溢れている現在、知らないうちに搾取され、選択できるということすらわからないまま生きていることに気づくためにも本書を読む価値はあると思います。
著/キャス サンスティーン