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「ベイトマンニュース」過去にしがみつかず、今を生きる。

私は総合病院の放射線科で働いているんですが、先日CTスキャンで働いていた時のことです。70代の女性患者さんがやって来ました。
いつものように放射線技師が応対していて、「このロッカーを使ってね。」とか「この部屋に入って座って下さいね。」と彼女に説明していたんです。
CTスキャンのテーブルに横になった途端、突然彼女は女性の放射線技師に強い口調で言い始めました。
「あなたの口の聞き方は失礼だと思うわ。患者にはもっと丁寧に話すべきよ。私はね、抗議しているわけではないの。ただあなたのためを思って、直接私の意見を言いたかったの。」と。
私は第三者としてそこにいたんですが、放射線技師は(早口やったけど)失礼な対応は全くしておらず、私も彼女も突然文句を言い始めた患者さんにびっくり。はい?何を言ってるの?と呆然としました。

もう1人別の患者さんもやはり女性でした。60代後半です。彼女は文句すら言わなかったものの、最初から最後まで放射線技師が言うことと反対の行動をとるんです。例えば「横になってください」と言われれば、「いや、私は座ってるわ。横になるのが苦手なの。」と言ったり、「ネックレスを取ってください」と言われれば、「取らないで口にくわえているわ。」と言ったり。とにかく言われた通りにしない。
ついにはスキャン後に隣の部屋で点滴の針を抜くのを待ってもらっていたんだけど、私が部屋に行くと彼女はすでに針を固定していたテープを自分で全部はがし、ガーゼを折りたたんで針の上に置き、私がただ針を抜くだけの状態にして待っていました。え?何やってるの?自分で針を抜いていなかっただけマシやけど、万が一急に点滴が必要な状況になった時に針が固定されていなかったら困るでしょう?

実はこの患者さんたち、2人とも元看護師なんですよ。それも看護師長まで上り詰めた「キャリア」の人。この人たちがとった行動は、(放射線技師ではなく)自分が今日のこの場を仕切る、コントロールする、というもの。きっと彼女たちは病院で働いていた時、こんな風に場を仕切っていたんでしょう。その時のクセが引退した現在もこんな形で出てきてしまう。
昔偉いさんやった人であるほど、引退した後でも自分はまだ偉いと思い込み、場をコントロールするような振る舞いをしがちです。
まぁ自分が偉い立場やからといって横柄な振る舞いをすること自体がおかしなことなんやけど、その立場を退いた後でも同じような振る舞いをしてしまうのは、やはり力を持っていた過去にしがみついていて、今を生きていない。というか、今の自分を認めていない、っちゅうことになるのかなぁ、と思います。

理想としては、どんな立場にあったとしても、やはり自分がどのような人でありたいか、を考えて、常にそういう「自分」であること。
人としてどう生きるかが一番大事で、肩書はいわば全然重要じゃない。昔のプライドは、時にほんまに現在必死に働いている人の迷惑になるなぁ、と思った出来事です。

実は私自身も元看護師です。そしてどこかで元看護師であることに誇りを持っている。誇りを持つのはいいけれど、やはりそこが一番大事になったらあかんと肝に銘じているつもりです。だって今は看護師ではないんやから。
過去に頑張ってすごい仕事をした人は、「私、ほんまによう頑張ったよな。」と過去の自分を褒めてあげたらいいんです。そしてその過去があるから今の自分があるのだ、とやはり今の自分を認めてあげるべき。
肩書きのない今の自分だって、きっとめっちゃいい奴やん。笑。

好きな言葉があります。これは映画「カンフーパンダ」にも出てきた言葉です。最後に皆さんにもおすそ分け。
    Yesterday is History.
    Tomorrow is a Mystery.
    Today is a Gift.
    That’s why we call it “ The Present”.
    昨日は歴史。
    明日はミステリー。
    今日は贈り物。
    だから今日のことを英語でプレゼントって言うんだよ。

     

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