育休中の夜中に思うこと
育休の夜を過ごしていると、この子にとって8時間寝ることは当たり前ではなく、今まさに成長の過程であるということを実感します。
と同時に、子供を通して私自身も成長の過程にいることを実感するような気分で夜中の3時を迎え、文章をふと書きたくなりスマホを手にしました。
(少々長くなりますが、お付き合いください。)
寝ている子がお腹が空いて3時間毎に起きるのも、私の心の余裕がなければ、
『さっきも飲んだのに、またミルク欲しがって、大変』
と捉えてしまうことも日々あります。
ただ、3時間おきのミルクや、夜中にオムツから漏れたウンチを冷たい水で洗っている時も、自分の心に余裕があれば、
『今しかない、かけがえのない瞬間を過ごしているんだ。』
と、そう遠くない将来には味わえない大切な経験と捉え直せることもあります。
妻と『また、うんちにやられちゃったよ。笑』とうんちを悪者にして、笑いながら一緒に子育てをしている。
そんな瞬間もありました。
そういった育児中心の日々を過ごす中で、ふと今までとは異なる感覚で思い返した言葉がありました。
Pain is inevitable. Suffering is optional.
痛みは避けがたいが、苦しみはこちら次第。
村上春樹の著書『走ることについて語るときに僕の語ること』で紹介されている言葉で、これは彼女がマラソン中に繰り返して唱えているマントラだそうです。
私がこの言葉に出会ったのは中学生の頃で、当時の担任であり、サッカー部の顧問であり、僕が数学を好きになるきっかけをくれた恩師が、先ほどの名著を教えてくれて出会いました。
その後、僕自身も大学の部活や研修医の頃にも何度もこの言葉をマントラのように唱えてきました。
最近だとフルマラソンを走る決意をしてからも、村上さんの本を読み返して、ランナーとしての村上さんの言葉を味わい、レース当日も唱えていました。
僕の人生を何度も支えてくれた言葉のひとつです。
振り返ると、今までこの言葉を思い返すのは、『このつらい現状を、少しでもマシに捉えよう』とした時ばかりでした。
この文章を書くに至ったつい先ほどの場面を振り返ると、
“夜中の3時に起きて泣く子の元へ行き、抱いて妻の元へ連れて行き、授乳が終わったらベビーベッドに運んでオムツを替えて、背中に漏れていたので服を取り替え、その間にまた子がウンチをして、オムツをまた取り替え、今度は少し足りないと泣く子にミルクを作って飲ませて、寝かしつけをして..."
と夜中1時間の間に色々と振り回されていました。
想定外で意図せず舞い降りる、瞬間的なストレスに弱い私は、これまでだと『大変だ...』と感じていたと思います。
ただ今日は、突然のイベントに反射的にストレスを感じる前に、目の前の出来事を味わい直す余裕がありました。
『今は夫婦で育休を取って、余裕がある状態で育児に向かえるが、仕事復帰すると余裕を持てない日もあるだろう』
さらに、よくよく考えたら、あと数ヶ月もしたらどんどん成長して、こんなに無防備な可愛さに出会える機会も減ってくるだろうと、辛い気持ちではなく、むしろ愛おしさを噛み締める瞬間がありました。
今までと対比してみると、これまではネガティブな感情をできるだけフラットに近づけるためのマントラでした。辛い時、苦しい時に何度も胸の中で唱えてきました。
ただ、先ほどは『今日は最近抱えていたモヤモヤが晴れて、心にも余裕があったからか、ネガティブな感情をポジティブに捉え直せたな』と思っていた時に、ふと、この言葉が胸に浮かんできました。
言葉→認知ではなく認知→言葉の順で、しかもその後の出来事の感じ方も180度変わるような気づきを得たタイミングでした。
と普段の自分だったら、文字にしていませんでしたが、夜中に『やっぱり自分はこの言葉が好きだ』と思い、気分が昂まったので、この文章を書くに至りました。
今日は実は育休中に予定していた1ヶ月ぶりの外来で、久しぶりに病院で日中勤務し、子育てと離れてすごしていました。
朝子供と目覚め、午前にToDoをこなし、昼に出勤して指導医にメンタリングで最近抱えていたモヤモヤを共有させてもらい、外来を終えてパパ育休明けの同僚と育児の話をして、院内のLGBTQフレンドリーな病院作りの活動のミーティングに参加して、多様性についての山口周さんと及川美紀さんの対談を聴きながら運転して帰宅しました。
ワンオペだった妻が子をお風呂に入れてくれていたので、食事を妻と一緒に作り、久々にゆっくり風呂に入りました。
今日1日の何がどう効果的だったというものではないと思っています。
ここ最近の頭を巡っていたモヤモヤ含め、自分の中で蓄積した物がスパークした事で、リディア・シモン選手のマントラが、勝手に私の中で意味を厚くして実感を生んでいるのだなと感じています。
と、30分ほど文章を書きながら頭の整理が進みました。これ以上書くと目が醒めて興奮してしまいそうなので、ぐっすり眠れそうなうちに寝ようと思います。
今日もお付き合い頂きありがとうございました。