
子宝や子孫繁栄を願って数の子を食べて子ができなくても文句はないのに、なぜF1種を食べると不妊になるを信じてしまうのか
不妊に悩む人や妊活を始める人を苦しめる○○を食べると〇〇になる民間信仰。
農家として看過できないマーケティング問題。
お節料理に登場する数の子は子宝や子孫繫栄を願った縁起物。別に食べたから子供ができるわけでもなく、食べたのに子供ができなかったと訴訟を起こす人はいない。
しかし、なぜか野菜のF1種や種なしフルーツを食べると不妊になるという話を本気かマーケティングか、ネタか、とにかく信じて発信してしまう人がいる謎に迫りたい。
野菜のF1に関しては野口種苗の野口さんが各地で講演されています。
雄性不稔の植物からは種が採れないということは、もう種は買うしかないのです。雄性というのは男性、不稔は不妊。おしべのない植物だから、それは母親にしかなれない。それを母親にして種を採ると、その子どもはどれも皆雄性不稔になる。だから今売られている野菜は、皆雄性不稔になっていく。子孫を作れない野菜だけが売られて、それを皆が食べているのです。これが非常に危険ではないかと思うのです
【2014/9/5.実施・野口 勲へのインタビューによる秀明インターナショナル/構成】
植物の話の中で雄雌ではなく、男性女性、子どもという単語を使われているので直接的にF1を食べると人間が不妊になるとは発言していなくても、文章の読後に「人間が不妊になる」という誤解生みやすい伝え方をされています。
またそのすぐ後の文章でも植物と人間を結び付けて書かれています。
植物の場合は雌雄同体なので、男性機能である花粉がなくなっても、めしべがちゃんとしていれば他の花粉をもらって子孫を作っていけるのです。でもその子孫はすべて無精子症=雄性不稔=になってしまいます。そのような植物ばかり食べると、動物はどうなってしまうのでしょうか。もともと精巣や卵巣という生殖細胞は、進化の過程で腸が変化してできたものであり、だから食べたものが生殖細胞に結びついているのです。生命の基本が傷ついたもの、ミトコンドリア遺伝子が傷ついたものばかりを食べていて、その母親から生まれた子どもは子どもを作れる遺伝子なのでしょうか。精子は元気なのでしょうか。今、日本で子どもが産めない人が多くなってきているのも、そのことが非常に関係していると思っています。
【2014/9/5.実施・野口 勲へのインタビューによる秀明インターナショナル/構成】
Base Side Farmでもキャッチフレーズにしている
YOU ARE WHAT YOU EAT
あなたは食べたものでできている
確かにその考えで行けば、種無しを食べると不妊なると安易に行きついてしまいます。
それなら数の子を食べれば子だくさんになるし、黄化葉巻病になったトマトを食べたら人は萎れてしまうのだろうか。んなわけない。
もしも本当にF1種が人間や動物の不妊に繋がるのであれば講演でしゃべっている場合ではなく、早急にF1種の販売停止措置を取るべく訴訟なり、研究機関に取り合うのが先ではないだろうか?
生殖学会にかけ合うのが先ではないだろうか?
そうした行動を起こさないのはなぜか。
予防線のように野口氏の文章には「そのことが非常に関係していると思っています。」と感想にとどめられています。
まさにひろゆきさんの言葉を借りれば
それってあなたの感想ですよね
感想、お気持ちの発表では品種改良を進める大きな種苗会社は相手にはしません。
話を鵜呑みにしてくれる消費者や農業者に向けて発信しているのがポイントです。
そして野口氏の講演を鵜呑みにした人がまたどこかで講演やSNSで発信してしまう。もちろん発信者は問い合わせがあれば、「野口さんがそう言っていた。詳しくは野口さんに聞けばいい」と発信内容の責任を彼に求めるでしょう。
昨今、企業のSNS対策の一つに事実無根のデマに対する法的措置が顕著になっていると感じます。
F1種という特定の企業の製品ではないにしても多くの種苗会社が関わる技術開発に対し、危険である印象を与える発信をすることがどのような事になるのか。
今一度考えて欲しいと切に願う、今日この頃。
このnoteは農業モヤモヤマガジンの記事です。
他にも農業の現場でモヤモヤしたことをまとめてあるのでぜひ読んでみてください。