★【守備】守備位置(ポジショニング)
「守備範囲の広さ」において足の速さは重要ですが、「ポジショニング」も非常に重要な要素です。
足が遅い選手でも、打球が来る近くにポジショニングし捕球できる可能性が高めることができます。ポジショニングは”準備”なので、守備の技術に関係なく意識があれば誰でもできることになり、チームとして徹底しておきたい事項になります。
ポジショニングを個人任せにならないよう、基本の守備位置に関しては定期的にシートノック前に確認するようにします。
(通常時は?後ろに行くときは?前に行くときは?右・左に寄るときは?)
また、試合では打者・状況により予測しポジショニングを取ることが多くなるので、
● 予測し準備すべきことを、定期的にミーティングの中で学習
● チームとして行なうポジショニングの情報伝達の方法を決めておく
ことで、誰がどの守備位置に入っても ”全員が理解し、ポジショニングをとれる状態” にすることを準備します。
ポジショニングの決定基準
基本の守備位置を把握しておく
ポジショニングを考える前提として、基本ポジションはどこになるか?をチーム全体として把握しておく必要があります。
◉ 通常時のポジション → 内野手の場合守備範囲を広げるためにはできるだけ後ろにポジショニングしたほうが良いが、あまり後ろだとゴロをアウトにできないので、ボテボテのゴロが来てもアウトにできるくらい(打ち取った打球は必ずアウトに)の深さを探り、そこを”通常時のポジション”とすると良い。
◉ 通常時より後ろに下がったポジショニング
◉ 通常時より前に出たポジショニング
◉ 通常時より左に寄ったポジショニング
◉ 通常時より右に寄ったポジショニング
※ 普段練習している自校のグラウンドでは通常ポジションは把握していても、試合で使用する球場は通常ポジションを正確に把握することがなかなか難しく、例えば外野手の場合何となくポジションにつくと「芝生が剥げているところ」になりがちです。
どんな球場でも正確なポジショニングが出来るよう、歩測基準(例 センターなら2塁ベースから●歩が定位置 等)を持っていると良いです。
高校野球はポジショニングの事前情報が少ない
例えばNPB・MLBの場合はこの場合一年に何回も同じ相手と対戦するため、対戦投手のタイプ・カウント別・球種別の打球傾向等膨大なデータを駆使して決めることができます。
ただし高校野球の場合トーナメント制で一発勝負がほとんどのためそこまで対戦相手のデータを事前に集まることはできず、試合を進める中でポジショニングを決めていく必要があります。
ポジショニング精度を上げる
高校野球でポジショニングの精度を上げる方法は「試合前準備・プレー前準備」で行なうものと「試合の中で決定・修正」していくもの とがあります。
≪試合前準備・プレー前準備≫
● 相手打者の基本情報を収集し、打球傾向を予測
●「投手」と「打者」の力関係から打球傾向を予測
● 相手打者の狙いを予測
● 似たような打者との経験から予測(事前情報がない場合)
≪試合の中で≫
● その日の投手の状態を把握し、打球傾向を予測
● バッテリーの球種・コースを守備陣全員で情報共有
● 試合の中で情報をアップデートする
となります。
プロ野球・MLBほど膨大なデータが集まらなくても、集めることができたデータで相手選手のおおまかな特徴を試合前に頭に入れ、試合で選手自身が感じたリアルタイムな情報によりデータを修正しながらポジショニングを調整し対応することが必要になります。
ただし、予測によるポジショニングは100%ではないため外れることも多くあります。ここを十分に理解し、根拠を持った上では失敗を恐れず挑戦することが重要になります。
≪試合前準備・プレー前準備≫相手打者の基本情報を収集し、打球傾向を予測
基本情報となる ”右打ちか?左打ちか?” ”背が大きいか?小さいか?” ”パワーがありそうか?なさそうか?” ”打順はどこが多いか?” というところをおさえた上で、
バッターボックス内でどのようなスタンスで立つか?
構え方に特徴があるか?
スイングは遅いか?速いか?
どのようなスイング軌道か?
投球を見るタイプか?積極的に打ちに行くタイプか?
というような項目を(できれば)事前に情報収集し、想定される打球を予測しておきます。
打者には必ず「得意な球種・コース」と「苦手な球種・コース」があり、それは打撃フォームやスイングの”クセ”が大きく作用します。
打者のタイプを分類分けする定義を作っておくと、
(打者の分類定義 例)
● アッパースイングの打者は、高めの変化球や遅い直球が得意
● ダウンスイングの打者は、高めの直球やインコースが得意
収集した情報から打者を分類し「この打者はこの方向に打球が飛びそうだ…」ということを想定できポジショニングに生かせるようになります。
チームとして打者の傾向(クセ)を的確に見抜く訓練として、ミーティング等で「打者の傾向をチームメンバー全体に説明(プレゼン)する」という方法でアウトプットし、さらにメンバーで意見交換する取り組みを行ないます。
(プレゼン 例)
● 右打者でスイングが速く、引っ張ったファールが多め
⇒ 外野のシフトを全体的にレフト寄りにし、
ライトは詰まった打球が内野との間に落ちないようにケア。
● 右打者でスイングが遅く、タイミングが合わないことが多め
⇒ 全体的にライト寄りのシフトにする。
打者の傾向とポジショニングの仮説を立ててチームメンバーにプレゼンします。
自分の言葉で説明するためには理解できるような「論理の整理」が必要になるため、これを繰り返す(調査を論理化する)ことで予測の根拠・精度がだんだんと上がってきます。
予測が当たった場合「投手がデータ分析通りに投げられたからなのか?」検証することは重要ですが、その際状況・カウント等の要素も踏まえ検証すると、より以降予測精度が上がります。
≪試合前準備・プレー前準備≫「投手」と「打者」の力関係から打球傾向を予測
相手打者の情報収集がある程度できれば投手と打者の力関係が予測できるので、打球の傾向もある程度予測することができます。
● 打者が投手の球を長打できる力関係(打者が勝っている)
⇒ 外野の守備位置を下げる。
● 打者が投手の球を長打できない力関係(投手が勝っている)
⇒ 外野の守備位置をやや前にし、詰まった打球に備える。
というような考え方で、カウント・(予測される)球種を加味してポジショニングを変化させます。
≪試合前準備・プレー前準備≫相手打者の狙いを予測
相手打者の事前情報(打球方向の傾向…)を踏まえた上で「今日の試合では、相手打者は何を狙ってくるか?(球種・コース…)」を推測し、それを踏まえてポジショニングをします。
≪打者の構え・スイング≫
1打席目の相手打者の構え・スイングで、打者の狙いとおおよそどの方向に打球が飛びそうか?を予測します。
また空振りの仕方・ファールの打ち方・方向から、投球に差し込まれているか?泳いでいるのか?(タイミングが合っているか?合っていないか?) がわかるので、その後の投手の球種・コースに合わせ予測を立てることができます。
≪ケーススタディ 二塁手の場合≫
無死2塁で相手打者が左打者、狙って引っ張って打ってくることがある程度予測できる状況。
この場合右寄りにポジショニングするのが基本になりますが、打者が”引っ張りたい…”と思っていても
● 引っ張る技術がない
● タイミングが合わせられない
等で、そもそもポジショニングを変える必要がないケースも考えられます。通常ポジションなら普通のセカンドゴロの打球が右寄りにポジショニングしたためにヒットになってしまうと、通常のヒット以上に自チームに与えるダメージが大きいです。
相手の情報が少ない高校野球の場合は”いきなりポジショニング”でなく、”初球の打者のタイミングを見て”打者の狙い(打ちたい高さ・打ちたいコース・打ちたい方向など)・実現可能性を判断することが重要になります。その上でのポジショニングをとればより精度を上げることができます。
≪事前準備・プレー前≫似たような打者との経験から予測(事前情報がない場合)
高校野球では思うように情報が入らないケースも多いので、その場合は相手打者の試合前準備(サークル内での素振り 等)・第1打席の様子を見て「過去に似たような打者との対戦でこんな結果だった…」という経験から予測しポジショニングをします。
1打席目での対戦結果から予測通りで良かったか?を検証し、2打席目・3打席目…と以降の試合の中でポジショニングの修正に生かしていきます。
試合が進むにつれデータは増えていくので(データはスコアラーに集約しチームで共有)、ポジショニングの精度は上がっていきます。
≪試合の中で≫その日の投手の状態を把握し、打球傾向を予測
投手の状態(調子)は日によって違い良いか?悪いか?は試合が始まってみないとわからないので、後ろで守っている野手がの投手の状態を察知しポジショニングに反映させる必要があります。
”相手選手を見抜くだけでなく、自チームの選手も見抜く” ためには、日ごろの練習・練習試合からチームメイト(投手も野手も)の状態(調子が良いとき・悪いとき)も把握しておく必要があります。そのためには普段からいろいろなところに目を配る能力が必要で、常日頃チーム全体で目を配る意識づけをするように声掛けしていきます。
≪試合の中で≫バッテリーの球種・コースを守備陣全員で情報共有
バッテリーはバッテリー目線で打者の苦手なコースや球種を推測し配球、野手は野手目線で推測しポジショニングをします。
打ちづらそうなコースにボールを配球し、打球が飛んできそうなところにポジショニングをすればアウトを取ることはより簡単になります。これをバッテリーのコミュニケーションだけではなく全野手がコミュニケーションをとり呼吸を合わせとよりアウトを捕る確率が高くなります。
その精度をさらに上げるためチーム全体でできる方法として、バッテリーの配球情報(球種・コース等、バッテリーのサインを把握・野手間で情報伝達)を事前把握・共有することで、より一層高い打球予測ができます。
この情報共有は、特に内野だけでなく外野に対しても必ず行ないます。外野手にとって、この情報はより早く一歩目を出せる大きなメリット
となります。(外野手は内野手に比べ、守備範囲が広いため。ボール到達までの時間は内野手に比べれば多くあるが、打球に追いつけなかったときのリスクが大きい)
≪球種・コースのサイン伝達方法≫
球種・コースのサインは味方(捕手)から出されるため、その情報を内野→外野という形で伝達します。その伝達方法はチームの決めごととしてあらかじめ決めておきます。
① 捕手から投手が投げる 球種・コースがのサインが出る。二塁手・遊撃手は、そのサインを見て把握。
② 二塁手・遊撃手は、手を背中側に回し外野手に向けて球種・コースのサインを 送る。外野手は、そのサインを見て把握。
③ 内野手・外野手とも必要に応じ守備位置を微調整。
サインは「球種・コース」でなく「けん制」「ピックオフプレー」の場合もあるので、このときも(送球ミス等の)カバーのため各野手の準備が必要になり、情報伝達はより重要になります。
例えば、外野手は”けん制が来る”とわかっていればけん制モーションに入った瞬間にカバーに向かうことができます。
≪試合の中で≫試合の中で情報をアップデートする
上記のようにさまざまな情報・仮説を基にポジショニングを行ないますが、(データがない時やデータから大きな特徴が見えなかった場合、試合開始時は基本的には定位置で守り相手打者の情報を取る)試合が進むにつれ野手はいろいろな情報を得ることができます。
得られる情報が増えてきたら「情報のアップデート」を行ない、ポジショニングの修正を行なっていきます。
(アップデート例)
1打席目 → 「明らかに詰まっている」「泳いだ打ち方になっている」
⇒ まだ情報が少ないため、ポジショニングは取りにくい。
2・3打席目 → 打席での傾向が変わらない様子
⇒ 最初からポジショニングを取って対応する
(詰まっているのなら)外野手は深く守らない
(泳いだ打ち方なら)三塁手・遊撃手は三遊間を詰め
前方をケアする
”試合前の事前情報”より”試合で得た情報”のほうがはるかに新鮮で有用な情報です。ゲームの中で最新情報をアップデートし対応することで結果は大きく変わります。
ポジショニングの注意点
● すべての投球に対して、一球一球ポジショニングを変える必要はありません。基本は打者ごとに、データが少ない場合はチーム全体の傾向(例 右打ちが多い)から試合中ずっと同じようなポジショニングでもOKです。
● サイン伝達によりあまりにポジショニングを早く頻繁に変えると、逆に守備の動きから相手に配球(球種・コース)を読み取られるケースも出てくるので、動き出しのタイミングは注意が必要です。
● ポジショニングが決まったら次に重要になるのは「1・2歩」です。事前の予測により投手の投球に合わせ”体重移動”か”1・2歩”動いてスタートを切る準備をします。この準備が出来ていないと打球に対するスタートで遅れせっかくのポジショニングが意味なくなってしまいます。
プロ野球で野手の一歩目のタイミングをチェックすると非常に参考になります。
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