★【投手】有効な変化球を身につけ、球種を増やす
変化球は直球と違い、打者の近くで曲がったり落ちたりする球のことを言います。
曲げたり落としたりするボールを投げる方法は握り方を変えたり投げ方を工夫することで直球とは異なる回転を生み出す方法で、NPB・MLBでは多種多様な変化球が投げられています。
投げられる変化球の種類が多ければ多いほど、打者に的を絞らせず打ちにくくする投球ができ優位になります。
各投手は入学段階で直球+αの変化球を持っているケースが多いですが、その持ち球は人それぞれです。
ただし、チームとして球種を個人任せにせずチームとして必要な球種を計画的に増やすようにしていきます。
変化球の種類と良い変化球とはどういうものか?理論を理解し、その上で3年夏までにどのように球種を増やして行くか?の計画を組んでいきます。
主な変化球の種類
◉ ストレート系の球種
≪ストレート≫
ほぼすべての投手が投げる基本の球種と言えます。変化球という括りには入りません。
≪ツーシーム≫
ストレートに近い軌道から、打者の手元で少しだけ動く球種です。バットの芯を外して、ゴロを打たせることが主な目的となる球種です。
≪ワンシーム≫
ツーシームよりも少し変化の軌道が大きい球種です。ストレート並みの球威で、ツーシームよりも大きな変化をします。
◉ 縦変化の球種
≪フォーク≫
ボールを人差し指と中指で挟んで握り方と投げ、打者の手元でストンと下に落ちるような軌道になります。投げるのに握力を必要とします。
≪スプリット≫
フォークと同じような球筋で、フォークよりもスピードが出て落ちます。場合により、シンカーのように利き腕方向にズレながら落ちることもあります。
≪チェンジアップ≫
ボールにかかる空気抵抗を大きくするような握り方と回転で投げ、打者の近くでブレーキがかかり沈む軌道になります。落ちるというより直球との緩急で打ち取ります。
◉ 斜め変化の球種
≪カーブ≫
投手からリリースされたボールが一度浮き上がってから利き腕とは逆方向にスライドしながら沈む軌道になります。
通常のカーブより球速を落として変化量を大きくした「スローカーブ」という球種もあります。
≪シンカー≫
利き腕の方向にスライドしながら沈んでいく球種になります。握り方・リリース・コントロールが難しい球種です。
◉ 横変化の球種
≪スライダー≫
利き腕とは逆方向に急激に曲がるボールになります。カーブと曲がる方向は同様ですが、カーブより速度があり曲がり幅は小さめになります。
スライダーの握りから縦方向の変化を大きくする「縦スライダー」という球種もあります。
≪シュート≫
利き腕の方向に横スライドしていく変化球になります。
ストレートを投げようとしてもシュート回転してしまう投手もいます(ナチュラルシュート)。
≪カットボール≫
スライダーに似た軌道でよりストレートに近い球速・軌道になります。打者のミートポイント近くで急激に変化するので、芯を外して凡打を狙います。
◉ 特殊な変化の球種
≪ナックル≫
ボールを無回転で押し出すように投げ、空気抵抗を受けたボールはどこに変化するかわからない球種です。
ナックルをマスターしている投手はストレートを投げずにナックルだけで勝負することも多いです(ナックルボーラー)。
≪ナックルカーブ≫
ナックルのように指を立てて握り、カーブよりも球速が速く変化量も大きな球種です。
※ 同じ変化球でも投手によって球種が違う
変化球は、スライダーとカーブ 等変化の方向・握り方が近い球種が多く、投手の認識で持ち球種の認識は変わってきます(他人からはスライダーに見えても、本人はカーブのつもりで投げている)。変化量・回転数 等で厳密に定義されているわけではありません。
また、投手によってはオリジナルの変化球を編み出している場合もあり、それは投手の武器として生かしていきます。
良い変化球・有効な変化球
一般的に”良い変化球”とは
● 球速・直球との球速差がある
● コントロールが良い
● 曲がり始めが遅い・曲がり幅(落差)が大きい
等になりますが、すべての変化球に共通してできる技術としては「直球と変化球の区別がつかないフォーム・軌道で投げる」ことになります。
◉ 変化球は打者目線で考える
打者は投手が投げる球種を事前に知ることができないため(予測は行なうう)、投手のリリースの瞬間からボールを見て球種・コースを判断しスイングするかどうか?を決定します。
この時、球種が判断できないとボールの軌道を予測しにくいため打つことが難しくなってきます。逆に、球種がすぐにわかればボールの軌道を予測でき打ちやすくなります。
(例 スライダー)
打者が「ストレートだ!」と思ってスイングしたとき手元で横に曲がれば、芯を外す・空振りを奪うことができる。
(例 チェンジアップ)
ストレートと同じ腕の振りで投げれば、打者はスピードが落ちたボールにタイミングが崩される。
このことから、特に変化球を投げる場合はギリギリまで打者が球種を区別できないようにする ことが打たれないために重要なポイントになります。
"球種の区別をつけにくくする”方法
◉ 投球時の”フォームのクセ”をなくす
投手のクセは、外から見る打者にとってわかりやすくても投手自身はわかっていない… ということが多いので、
● (いつも投球をみている)捕手にクセを確認してもらう。
● 動画を撮影し、自分のフォームのクセを確認する。
等でチェックし、できればクセが出ないような修正を練習の中でしておきます。
◉ ボールが通る軌道を(途中まで)どの球種も一緒にする
投手からリリースされ捕手に向かっていくボールは、球種によって軌道が変わることが多いです。例えば直球ならリリースから低めに、カーブ等遅い変化球ならリリースから高めに という感じです。
球種によりリリース段階から明らかに軌道が違う場合、打者は早い段階で球種(直球か?変化球か?)を見極めることができます。
”直球”と”カーブ”のようにスピードが全然違う球種であれば軌道が変わらざるを得ないためある程度仕方ないですが、”スライダー”・”カットボール”等速い変化球であれば直球とリリースの軌道を近づけることが可能なので、打者が球種の見極めをするのを遅らせることができることもできます。
≪ピッチトンネル≫
MLB・NPBでは、”ピッチトンネル” という理論の話で出てくることがよくあります。
このピッチトンネルの輪の中を複数の球種が通せるようになると打者は球種の判断が困難になり打ちにくくなるため、この軌道で直球・速い変化球を投げることができるよう(輪を通ってから変化するようになればベスト)練習することが重要になります。
また、ピッチトンネルの円の大きさは小さくできればできるほど打者は打ちにくくなります(軌道がより一緒になるため)。
※ 投手は変化球の練習時に「変化量」を求めてしまう傾向がありますが、
(特に投手から見て「変化している」のがわかるようにしたい)
これはピッチトンネルから外れ、打者には見極めやすい球になります。
※ 遅い変化球(スローカーブ等、変化量の大きい球種)の場合は、
ピッチトンネルの円を通すことは非常に難しいため、
軌道でなくスピード差・変化量を有効に使うことを意識します。
◉ 変化のし始め(曲がり始め)を遅くする
変化球はその変化のし始めが遅ければ遅いほど、打者は球種の見極めが難しくなり打つのが難しくなります。
ただし、投手が曲がり始めを遅くするように投げる…ということはなかなか難しいことです。
≪曲がり始めを遅くするポイントは「曲げようとしない」こと≫
投手の意識として変化球はどうしても「曲げたい・変化させたい」という気持ちが出るため、直球に比べ腕の振りが遅くなりリリースが早くなる傾向があります。
これだと変化量は大きくなるかもしれませんが、
● 投球フォームが変わり、打者が投げる前に見極めできる
● 変化のし始めは早くなり、打者が軌道を見極めやすくなる
ので、曲がり始めを遅くするには「曲げようとしない」意識で投球することがポイントになります。(大きく曲がる=良い変化球 の考えは持たない)
特に早い変化球の時は直球と同じように腕を振って投げるイメージで投球することがポイントです(直球との違いはボールの握りくらい…のイメージ)。変化量が減ったとしても”曲がり始め”が遅く打者の手元で曲がるような変化球になり、かつリリースが遅くなることでボールに伝える指の力(回転力)をより強くすることもできます。
当然ボールの軌道はピッチトンネルの考え方で考えます。うまくいけば”空振り”でなく”凡打”を増やすことができるので、”一球で仕留める”投球ができるようになり球数を減らすことができます。
≪曲げようとしない=捻り過ぎない・握り過ぎない≫
変化球を大きく曲げたい意識が強いとリリースの瞬間手首をひねり過ぎる・ボールを強く握り過ぎる 傾向になります。
ひねり過ぎたり強く握り過ぎると、手首や腕に力が入り柔らかく腕を振ることが出来ず腕の振りが悪くなるため、かえって曲がらない(回転だけかかって殆ど変化しない)ボールになります。
ちょうど良い力の入れ具合は、プルペンでまず軽く投げて変化させてみて、そこから少しずつ力を入れて曲げ方を覚えていくと良いです。感覚的に良い力具合をつかんだら、今度はひねり過ぎ・強く握り過ぎくらいで投げて見て思うように変化しない感覚をつかんでいきます。
球種の増やし方
球種は以下の順番で増やして行きます。基本は3年時に最低3球種投げられるように1年に1球種ずつ増やしていきます。
優先順位① ストライクが取れるストレートの習得(1年時)
ほぼすべての投手が入学時から投げていますが、ストライクゾーンに投げたい…という時に確実に投げることができることを投手の基本として習得します。
ストライクを確実に取れるようになったら、その中でもコース・高低を狙って投げられるようにします。
優先順位② ストレートと同じ腕の振りで投げられる球種の習得(2・3年時)
ボールの握り方を変えるだけで変化球になる(フォーム・腕の振りは同じ)球種を習得します。難しい技術を必要としない方法で投げることができる球種を選びます。
≪チェンジアップ≫
(握り方は好みで良いので)ストレートと同じように腕を振って投げればストレートより遅いためになり、打者のタイミングがずれるように。
≪スライダー≫
(曲げる方向に捻らなくて良いので)直球よりも中指に力を入れて投げることでわずかにスライダー変化をさせ、打者の芯を外すことができるように。
≪ツーシーム≫
ストレートよりわずかに変化をさせ、打者の芯を外すことができるように。
優先順位③ すでに投げられる変化球の精度向上(2・3年時)
入学時からすでになげることができる変化球は、その変化球の変化量・コントロールを上げることに注力します。注力ポイントは球種により変わってきます。
≪注力ポイント 例≫
カーブ ⇒ 変化量を増やす・変化のし始めを遅くする
フォーク・スプリット ⇒ 変化のし始めを遅くする
カットボール ⇒ 左打者のひざ元に投げるコントロール
シュート ⇒ 右打者の胸元・ひざ元に投げるコントロール
自分に合った変化球を見つけ方
◉ 変化球には合う・合わないがある
変化球の習得は、個人ごとに”合う・合わない””すぐ投げられる投手・なかなか投げられない”部分が必ずあります。
覚えたい変化球を固めるよりも、色々な変化球を試し”投げやすい””自分にあう”球種を見つけていった方がより早くマスターできます。
◉ 自分のクセ球・体の傾向を知る
≪腕を捻る方向≫
人には必ず捻りやすい腕の方向があり、投手であれば捻りやすい方向にナチュラルに変化する傾向がありこれをクセ球と言います。このクセ球を理解した上で同じ方向に捻る変化球を練習すると早くマスターできます。
例えば、直球がナチュラルでシュートする場合は変化球としてシュートをマスターすることは比較的容易にできます。同様にナチュラルにスライダーする場合はスライダーがマスターしやすいです。
≪手の大きさ・指の長さ≫
手が小さい・指が短い場合でも、手の大きさ・指の長さがあまり必要ない変化球をマスターすれば変化球は投げられます。
(例)
● 深くボールを挟むフォークボールは指が長くないと難しい
→ 浅く挟むスプリットフィンガードファーストボールは可能
● スライダーは打者の手元でわずかに変化させれば十分なので可能
”使える球種”の判断基準
「9回裏2死満塁カウント3ボール2ストライクで投球できるボール」が、自分が使える球種 という考え方を基本にします。
コントロール出来ない変化球・打ちやすい変化球を何種類も投げられることよりも、コントロール出来る変化球・打ちにくい変化球を1種類でも持っている方が試合では活躍できる確率が上がります。
※ ただし、そこまではいかないがストライクを取るくらいなら…という球種がある場合は見せ球で使うイメージでサインを準備しておきます。
◉ 打者・捕手に感想を聞く
変化球は打者が打ちにくくなるために投げるものなので、ブルペン・フリーバッティング・シートバッティングで投げ打者の反応を見ることが重要です。
また、打者だけでなく変化をより近くで見て受ける捕手に感想を聞くのも有効です。客観的にその変化球が使える球種か?意見をもらうことができます。
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