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ばさつ
2024年2月14日 22:18
僕は仏教徒だ。正直なところ自分のことを仏教徒だと意識する瞬間なんてないが、あえて言おう。僕は仏教徒だ。お盆には家族でお墓をピカピカにするし、大晦日の紅白歌合戦は欠かしたことはない。僕は仏教徒なのだ。2月半ばになると毎年周囲が騒がしくなる。分かるよ。まだ節分の余韻が残ってるんだよね。でもここは学校だから、浮つく気持ちをグッと抑えて勉学に励もうね。皆の雰囲気に飲まれま
2024年1月20日 23:15
ある放課後、僕と会長は目安箱に寄せられた生徒の投書に目を通していた。毎回大したものはない。流し読みしながら、僕達はいつもたわいもない話をする。「会長、”スパ王”さん、今月は”食堂のメニューにボンゴレビアンコを出して下さい”ですって。」「いいね、美味しそう。採用!!」「でもこの人、先月はジェノベーゼ、2ヶ月前はアーリオ・オーリオ・・・。」「アーリオ・オーリオ出なかったよね、採用
2023年11月3日 00:34
爺様・婆様には勿論感謝しているが、桃から生まれただけで「桃太郎」と名付けられたのは頂けない。しかも、鬼退治に行くのに吉備団子だけとは。道中の物乞い達もワンワンキーキーケンケンと煩いこと。1つあげたら味を占めてついてくる。そんな時間があるなら自己投資に充てたらどうか。その点私は鬼退治後は起業することに決めている。絶対に一山当てるのだ!目標がある人間は強い。鬼ヶ島に着くやいなや、
2023年10月10日 19:24
「お電話有難うございます」『すみません、共益費の支払いなんですが・・・』相手に聞こえないようため息をつく。不動産会社のコールセンターは朝から電話が鳴りっぱなしだが、激務かといえばそうでもない。家賃や固定費の相談ばかりで、マニュアル通り対応すれば解決してしまうのだ。正直、この仕事には飽き飽きしていた。しかし転職する勇気もなく、何か事件でも起きないかなぁ・・・と、妄想するだけの毎日
2023年7月2日 07:04
暑さと共に不快指数を爆上げしていた蝉達の大半が土に還った頃、私は焦っていた。どこに行ったんだ、超売り手市場。何社目の不採用か分からなくなった頃、一度何がダメか聞いてみた。担当者は「普通すぎて決め手がない」と教えてくれた。自覚はあった。勉強も運動もファッションも、いくら努力しても人並みから出ることはなかった。キラキラしたものが、私にはない。そうか、「普通」じゃダメなんだ
2022年8月13日 01:44
『ドゥードゥン…ドゥードゥン…』生徒会室の奥で、会長が変な呪文を唱えている。「・・・今度はなんですか?」『ジョーズって映画あるじゃない?スピルなんとかバーグの。』「世界の巨匠をびっくりドンキーみたいに言わないで下さい」『サメが近づいてきて、だんだん曲も早くなってドゥデドゥデドゥデ・・・って』「はい」『あれって、ドゥデドゥデの後どういう曲になるか知ってる?』あれ?言わ
2022年6月14日 13:11
10月。暫く続いた熱さも終わり、その反動か急激に冷え込む様になってきた。まもなく、私の店は終わる。祖父の代には熱心な収集家もいたけれど、3年前に父が継いだのを境に来なくなった。父は廃業を進めていたけれど、この店を無くすなんて私には考えられなかった。溝は埋まらないまま両親は去り、私が店を継いだ。祖父は必死に扇風機専門店を護ってきた。かの35次産業革命ではコンピュータウィルスを
2022年6月10日 08:05
放課後、生徒会室に入ると珍しく会長の姿がない。代わりに一枚の書き置きが。『家出します』・・・そういうのは家でやってくれ。とはいえ心配だ。でもまあ会長のことだから大丈夫だとは思うけど、もしものことがあったら・・・警察?とりあえず先生に?うーん。ドアが開いた。『おはよー』会長、普通に来た。「いやいや、おはよーじゃないですよ」『・・・こんにちは?』「いや、そう
2022年6月3日 13:28
ばさつです。このnoteでは「どんなお題でも語る」をモットーに、皆様から貰ったお題について小噺にして語っていきます。 #5 「女人禁制のパンケーキ専門店」誰だって、話題のものは飛びつきたくなる。それが入手困難であれば尚更だ。「とある店のパンケーキをスタッフの目を盗んでタッパーに詰めて持ち帰ること」妻と娘から私にミッションが与えられた。食べたければ2人で行けばいいじゃないかと思うかもし
2022年5月28日 00:24
ばさつです。このnoteでは「どんなお題でも語る」をモットーに、皆様から貰ったお題について小噺にして語っていきます。 #4 「円周率の最後の数字」「円周率ほど皮肉なものはないよ。君もそう思わない?」また会長が書類に目を通しながら話し始めた。「どういうことですか?」興味はないけど聞かざるを得ない。いま生徒会室には僕と会長しかいない。聞こえていないふりをしたこともあるが、そのときは書
2022年5月21日 01:39
ばさつです。このnoteでは「どんなお題でも語る」をモットーに、皆様から貰ったお題について小噺にして語っていきます。 #3 「だっぺルゲンガー」ドッペルゲンガー。世界のどこかに自分と同じ顔がいて、出会うと死んでしまうという都市伝説だ。・・・と、私も出会うまでそう思っていた。結論を言えば、ドッペルゲンガーは実在するし、出会っても死なない。あと、茨城弁を話す。____________
2022年5月14日 02:40
このnoteでは「どんなお題でも語る」をモットーに、皆様から貰ったお題について小噺にして語っていきます。 #2 「エビバデ道祖神」やあ、僕は北の道祖神!町の道端でみんなの健康を守ってるんだ。おや、今日は珍しいお客さんが来たよ?「私は東の道祖神だ。力を貸してくれないか?」北「何か困ったことでもあったの?」東「実は、町の皆が好き勝手に願いを込めて我々を乱立し続けた結果、祈る道祖神の管轄
2022年5月12日 02:39
こんにちは、ばさつと申します。このnoteでは「どんなお題でも語る」をモットーに、皆様から貰ったお題について専門外だろうがなんだろうが小噺にして語っていきます。 #1 「中間業」ナカマに初めて会ったのは、長野で一人暮らしをしていた大学2年の秋だった。当時の私はサークルもバイトもせず、ただ時間を持て余していた。授業が終わると自転車で下宿先までの道にかかる橋の途中まで行き、やたらグニャグニャな
2022年5月9日 00:09
こんにちは、ばさつと申します。このnoteでは「どんなお題でも語る」をモットーに、皆様から貰ったお題について専門外だろうがなんだろうが小噺にして語っていきます。 #0 「母とリポビタン」中学生の頃の話。部活を終え帰宅すると、1階のリビングから母と知らない子供の声がする。私はすぐ2階に上がりテレビをつける。母は自宅を使ってピアノの先生をしていた。午前中に大体の家事をこなし、午後はピア