第3章 缶切りpart② 『缶の開け口は意外に鋭い』
「3歩進んで2歩下がる」
経営カウンセラーを
生業としている私には
商売とは日々その積み重ねで
成り立っている
経営管理とは
人・もの・金の管理
ものと金は案外
どうとでもなるものである
が、人はそうは行かない
人の数ほど意思があり
意思ある限り思い通りに
なるわけがない
事業規模、従業員数に反比例し
組織の風通しは悪くなり
ストラテジーの浸透は滞る
経営に限らす
スポーツであろうが
アートであろうが
同様の事象は起きる
個人も組織も
成長しては倦怠期を迎え
黎明期を超えては衰退期へ
世代交代しながら
数字の呪縛に取り憑かれ
組織は営利の旗本に
缶切りのような成長を繰り返す
しかし
「人は繰り返す安定を求めるが
機械的な繰り返しほど
難しいことはない」ことだ
2016年
私は岩手県を担当していた
釜石に小売で脱サラした
42歳のオーナーさんのコンサルを
請け負うこととなった
名前はSさん(42歳)
奥様と長男長女の4人家族
東日本大震災では
青年団として
行政が動けない支援物資を
取り上げて、配り歩いた
仁義と行動力、そして冷静な判断力に
飛び抜けた実力者だった
彼のお店は開店と同時に
釜石市に留まらず
北は宮古市、南は大船渡から
客が押し寄せた
開店セールは大成功
オーナーも私も立場関係なく
使える人では全て動員し
38時間寝ずに働き
接客にマネジメントに奔走した
持ち前の顔の広さ
被災復興で得た地域の信頼
準備8割実行2割で迎えた
セールは大評判となり
3日で5,000千円を売り上げる
その後も1年間
日販1,000千円超
超絶利益を生み出す経営が続いた
缶切りは勢いよく
小売という缶を開け進み
切り口は不揃い
急ぐあまり切り損じもあり
強引で不安定な作業は
開け口を乱雑な凶器に変えていた
あれほど人間性豊なオーナーAS氏も
数字が変わると瞬く間に
人格、性格が豹変
私だけでなく、家族との
信頼も崩壊した
2018年
復興から5年、開店から2年の
月日が立ち、釜石市内にも
多くの競合店が立つようになると
瞬く間に客離れがおき、
衰退期と呼ぶには突然すぎた
日販はピーク時の半分
それでも利益前年比80%を
維持できたのは
Sオーナーの手腕に他ならない
その最中であった・・・。
次回
缶切り③『人の血は、赤信号の色』