水野信元はなぜ白湯を捨てたのか。吉良義昭の軽薄さ、さらには於大の方の覚悟の象徴にも。第3回「三河平定戦」深掘り【どうする家康】
NHK大河ドラマ『どうする家康』第3回の深掘り感想です。
前回の感想はこちら↓
特別ゲストは「白湯」。水野信元との対面シーンでも重要ポジションに
1日経っても衝撃が忘れられない第3回「三河平定戦」ですが……さて、どこを深掘りしようか、どのキャラに焦点を当てて記事をつくろうかと思って2周目を楽しんでたらですね……「ほほぅ」と、ピンときたところがあります。何かって?
今回の特別ゲストと言いますか、最重要キャラがいたんですよ!於大の方(松嶋菜々子)?いえいえ。水野信元(寺島進)??ノンノン。吉良義昭(矢島健一)???いや、それよりもっと重要キャラがいたでしょう。
「白湯」ですよ。
(……あ、「こいつ何言ってんだ?」って顔しましたね。「もはや人間ですらないじゃないか」と。そりゃそうなんですけど)
まぁ、人間以外も入れていいなら、他にも首桶先輩とか『鎌倉殿の13人』でも準レギュラーとか言われてた大スターがいらっしゃいますけど(大真面目に言ってる)、『どうする家康』第3回「三河平定戦」では、それよりも「白湯」さんこそ最重要キャラだと感じましたね。
と言うのも、水野信元が元康(家康)のところへやって来た時にも白湯が出てきたんですが、「賽の目は運次第、みんなそう思っておる。だが俺は違う。俺はわかるんだ」そう言って白湯を飲もうとした直後、ふと何か思い立ってか、「フン」と言って縁側へ向かって白湯を捨てたのでした。
何でかわかります?もう先に答えを言っちゃうんですけど……あれは白湯に毒が仕込まれていたことを察したのですね。
そして直後に元康が白湯を飲むシーンが出てきましたが、そこでも水野、「震えてるじゃねぇか。その白湯を飲むのが斬り込んでくる合図か?」と。そこでは明らかに、部屋の外で刀を構える元康の家臣たちの姿も映像に映されていました。つまり、「白湯」というキャラを最重要ポジションに据え、2段構えで水野を殺害しようと試みていたのですが、水野にはどちらも完全にバレてしまっていたということになります。
元康勢、とことんだまし討ちに不慣れと言いますか……ここはむしろ、水野信元のカンの鋭さを象徴するシーンでしょう。恐るべし、水野信元……!
吉良義昭登場でも「白湯をもらおう」。営業マンとして考えたらありえない?w
順番が逆転しますが、今川の忠臣として吉良義昭が松平軍の元にやってきたときも、「白湯をもらおう」なんてセリフを大声で叫んでいました。ほんの数分の登場シーンでしたけど……あれがどことなく軽薄な様を表すのに凄く効果的でしたね。
いるんだな……別に悪人とまでは言えないんですけど、こっちの話をちゃんと聞いてくれないと言うか。あまり親身になってくれない。ヤリ手の営業マンとかああいうのが多い感じするんですけれどね。
にしても、「白湯をもらおう」は厚かましすぎますよ。いる?営業先で「お茶出してください」「コーヒーください」「菓子とか無いんですか?」とかせびる営業マンwwいくらお得意様でも「あー、今後は取引辞めようかな」とか思っちゃいますよね……。
その結果、最後は元康の方が吉良を裏切り、館に火を放つんですけど。「今川を裏切る」という辛い選択を迫られた中、襲う対象があの軽薄な吉良だったというところで、視聴者に元康へのヘイトが集まりにくくなるような工夫がなされていたように思います。「火をつけられて当然」とまではいかないけど、「やっぱりそうなっちゃうかぁ」みたいなね……。
ちなみに余談ながら、吉良義昭さん、あの『忠臣蔵』で有名な吉良上野介(きらこうずけのすけ)のご先祖様⁉と話題になっていましたが、なんやかんやあって(※リンク先。史実ネタバレ注意)最終的に吉良家の家督を継いだのはその兄である吉良義安ということであり、吉良上野介(吉良義央)とは直系ではないそうな。
これも1つ、知っておくと面白いネタではありますね。
於大の方との対面シーンでもやはり白湯。母の決意を示すためのポジションか
そしてドラマ終盤、於大の方が義元に「今川と手をお切りなされ。今川はもうお終いです」と冷たい言葉を言い放った後にもまた、白湯が登場しました。
「母上!私の妻は、今川御一門衆であり、駿府には今も、私の妻と子供がおります」と反発する元康でしたが、於大の方は白湯を注いだあとで、「それが?それが何だと言うのです」と言った後で、一口飲んでいました。
やがて、元康の父の話や、例の名ゼリフ「家臣と国のためならば己の妻や子ごとき平気でうち捨てなされ」へとつながっていくのですが……ここは視聴者に対しても「なんと冷たい女性」というイメージを持たせるのではなく、「三河の主君となるべき息子に対する、母の決死の覚悟を見せたシーン」だと思うんですよね。
確かに当時の女性は、現代の一般的な母親とは価値観が違うところもあるとは思うんですけど。やっぱり自分の子供に対して「妻や子供を殺せ」なんて、とてもじゃないですけど平気では言えないと思うんですよ。けれど、状況は刻一刻を争う。このまま情けをかけていたら、息子自身の命も危うい。
そして、こんな説得をしてしまえば、せっかく再会できた息子に嫌われてしまうかもしれないという危惧だってあったはず。そんな様々な感情を押し流すように飲んだ一杯の白湯だったと思うのです。
結果、やはり元康からは嫌われ、「出ていかれよ!」なんて冷たく言い返されてしまったんですけど。それも於大の方には覚悟の上だったのでしょう。しばらく息子をにらみ返していましたが、やがてすっと立ち上がります。
そして外を向くと、捨て台詞として吉良の所領を奪うよう伝え、以降はこちらを振り返ることも、何も言い返すこともなく、そそくさと立ち去っていくのでした。
きっと振り返りでもすれば、於大の方は泣き崩れてしまっていたかもしれません。本当はあなたにこんなことを言いたくないんだ、ただ生きて欲しいだけなんだと。ただそんなことをすれば、この我儘な息子は、わしだって主君になりたくてなったわけじゃない、そもそも産んでくれなんて頼んでいないなんて、もっとも口にしてはならぬことを言い出すかもしれない。息子を主君としてしっかり立たせるためには、母も鬼になるしかないと、そう覚悟を決めたのだと思うのですよ。
「嫌な母親だ」と言うなかれ。見る人によっては、信長も水野も於大の方も、悪魔のように見えたことでしょう。そして結果、彼らに従った元康は、悪魔に魂を売ったダークヒーローに見えたでしょうか。確かにあえて、そういう風に見えるような演出はされていると思います。けれど、これこそが大河ドラマというものですよね。
誰が正義で、誰が悪かなんてわからない。そんな勧善懲悪なわかりやすい世界は描いていない。強いて言うなら、生き残ることができればそれが正解と言えるかもしれない。少なくとも少年漫画のような王道ストーリーではない。ただ、これこそが「乱世」を描いた物語であり、大河ドラマというものが人の心を打つドラマとして長年愛されてきた所以だと思うのです。
(余談)松潤は「白湯」ガチ勢!今後も活躍の場はあるのか?
いかがでしたでしょうか……なんだか、めちゃめちゃ「白湯」について考察する回になってしまいましたね。改めて見返すと、目の付け所が地味すぎるわな……。
ちなみにSNSでは、「白湯」について、元康のナカノヒトである松本潤さん本人も「ガチ勢」だと話題になってましたw
それも狙ってかどうかわかりませんけど……とにかく今回は「白湯」がフィーチャーされまくってた回だなと感じましたね。今後も出てくるんでしょうか?「白湯」先輩の今後の活躍に期待ですね!(大真面目)
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