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第七回こむら川小説大賞ピックアップ17選感想覚書

 オンライン上の小説イベント、『第七回こむら川小説大賞』に参加させていただきました。
 一時創作書下ろし作品が沢山投稿されまして、「みんなで小説を書こう!感想を言い合おう!」という趣旨のお祭りとのことで、Twitterで流れてきて、楽しそうだなーと思って参加させていただいた次第であります。
 詳細はこちら。

 ピックアップも推奨とのことでしたので、せっかくなので私が読んだ中で「むっ!これは!」と来たものについて、感想をちょっと書いて行こうかなと思います。

 いかんせんイベントの規模が大きく、238作品も投稿作品があります。まだ私が読了したのは100作ちょっとで、半分も読めていないのですが、あくまで現時点でのおすすめとして、厳選して17作ほどチョイスさせていただきました。

 厳選って言葉の意味、知ってるかな?(面白い作品がいっぱいあってぇ……全然選べなくてぇ……)(むしろこれでも絞りに絞ったんですよ!)


【ネタバレ注意!】
 感想を書いていく関係上、どうしても物語の核心部分に触れる記述があります。「まだ読んでないよ」って人がいたら、感想部分に目を通す前に即座にリンクをクリックorタップして、ネタバレされる前に作品を読むことを強くお勧めします。どれもマジで面白いので。絶対に損はしませんから。



以下敬称略

ワンダフル・デイ / 野村絽麻子

 披露宴会場を舞台としたお仕事もの。主人公の依田くんは「レストラン・ヤドリギ」でウェディングの照明担当として働いてるのだが、ある日、浮気して分かれた元カノがやって来て……というお話。
 とにかく読んでいて依田くんの善性が刺さる刺さる。元カノに対して復讐の機会を与えられつつも、「新郎新婦には笑顔が似合う」という信念で跳ね除け、祝福の言葉を贈る依田くん。それだけではなく、トラブルの種を撒いた張本人に対しても、非難することなく「あなたがいなければきっと元カノに祝福の言葉を贈ることなんてなかった」と礼を言う始末。ま、眩しい……あまりにも……。
 今回こむら川小説大賞のテーマが「光」ということで、大きく「物理的な光」と「概念的な光」の2パターンの光が取り扱われるな、という印象だったのですが、この作品は「披露宴の照明」や「木漏れ日のエピソード」で物理的な光を書いたんだなと思わせておいて、実は依田くんという圧倒的概念的な光も描いていたんですね(ろくろを回しながら)。
 矢敷さんのキャラも捨てがたいんですよ。トラブルメーカーであり、行った行為は確かに許されないもの(だし実際に許されなくてクビになってる)なんですけど、単なる物語上のヘイターで終始するわけではない、というところが魅力的でした。

「……面白くねぇなぁ」
 隣からぼやく声がしたけれど、僕にはそれで十分過ぎるくらい十分だった。
(本文より引用)

 信念や善性から元カノを祝福した依田くんであっても、決して心に何も思うところがなかったわけではなくて。矢敷さんは、そういった「闇」の部分を代弁する存在でもあったわけなんですよ。別れる際、自分に対して礼を言った依田くんに「前から思ってたけどさ、お前、痒いし眩しいよ。あっち行け」と言った科白から察するに、きっと矢敷さんは依田くんの圧倒的な光にコンプレックスのようなものを抱いていて、復讐にたましいを奪われる依田くんを見ることで、彼も自分と同じ人間だと、醜い部分があるのだと確認して、安心したかったのかもしれませんね。光に焼かれ嫉妬に身を焦がす男……〝癖〟やね。
 あとワザマエなのが春永さんの存在ですね。彼女はメインストーリーには直接関わってはこないんですが、もし彼女がいなかった場合、私のような恋愛脳な読者は「元カノは結婚して祝福されたのに、依田くんはずっと独り身なの……? こんなにいい子なのに……😭」となってしまうんですが、エンディングで春永さんがきっちりと依田くんにアプローチをしてくれることで「いやいや……ちゃんと依田くんを見てくれる人もいるに決まってるじゃないですか!」というフォローが効いてくるんですよ。いわば恋愛面での福利厚生が手厚い。




偽造聖剣ゼクスカリバー / 鍵崎佐吉

 魔王を倒した英雄の勇者。彼の目下の悩みは自身の聖剣が光らない事。そもそも聖剣に光る機能なんてものはないのだが、そのせいで他の人に聖剣を見せても微妙にありがたがらないという切実なんだかそうでもないんだかといった問題から、知り合いの鍛冶屋を頼り、偽造聖剣作りを依頼するが……というストーリー。
 いわゆる「勇者と魔王」系のコメディ作品。前半はとにかく絶妙にくだらなさをまとったままゆるい雰囲気で、けれどもきっちりと説得力を持って進んでいくのがいいですね。「まあたしかに聖剣なんだから……光るよな」というのは作中人物だけではなく、読者もなんとなく持っているパブリックイメージだからこそ、くだらないことに悩んでいる勇者であってもなんとなく共感できてしまうんですよ。「差し迫るほど急を要する緊急性はないが、まったくもって共感できないほど遠いわけではない悩み」という題材の選び方が絶妙。
 中盤のパートは、鍛冶屋や錬金術師が「偽りの光る聖剣」を作るために奮闘するわけですが、そこのリアリティの出し方もすごかったです。ファンタジー世界ならではモノづくり。光る聖剣を作るために妖精の粉を使ったり電気を操るモンスターの素材を試したりと試行錯誤をしていくのが読んでいて楽しかったですね。クライアントの無茶ぶりに応えるために創意工夫を繰り返すのは、『魔改造の夜』とかそういう感じの番組を観てるみたいで面白かった。
 そして、後半からの話の展開のさせ方がですねー! ほんとにうまい!!意外な真実が明らかになり、それによってなぜか最終的に一大抒情詩みたいな拡がりを見せるのがすごかったですね。そう着地させて来るか……みたいな。明らかになる意外な事実も、完全なる不意打ちというわけではなく、「聖剣は光るもの」と同じようなあるあるネタから来ているので、まったくもって突飛な話、というわけではないのも巧みですよね。私は初読の時は中盤の偽造聖剣制作パートがめちゃくちゃ力入ってたから、「まがいものが本物を上回る」系のストーリーになるのかと思ったら、まさかそう来るとは……といった感じでした。

『スナックバス江』 / フォビドゥン澁川

 個人的にはニエのキャラが好きですね。浅まし+嫉妬深い女で、ある意味元凶(の一端)といえなくもないキャラクター。独占欲が強くて嫉妬からライバルを排除しようとするというのはいろいろな物語で結構見ますが、自身がやった行いに対してやりっぱなしではなくて、かなり無茶してその責任を取っているのが、他に類を見ないキャラ造形でした。こういう系統のキャラが、最後の最後まで自らの行いの責任を取ること……あるんだ!?




光を、もう一度 / ぴのこ

 めちゃくちゃ好みのノワール。山奥の村で産まれた主人公は、深刻な医者不足のために、幼いころから代々医療を叩きこまれる家系に産まれ、その結果若くして他の医者とは比べ物にならないほど卓越した医術を身に着けたとのこと。ドクターKかな? でもKと違い環境が最悪だったので都会に逃げ、そこで瀕死の裏稼業の男を救ってしまったところから転落人生が始まり……。
 一人称でテンポよく、階段を転げ落ちるように最悪な方向へどんどんどんどんと進んで行くのがよかったです。ノワールを読みたい読者なんて、いってしまえば登場人物の転落人生を読みたいわけですから[出典不明]、もう戻れない地点まで全速力で落ちて行ってくれるのは、読んでいてかなりの満足感があります。
 この手の「失望心中」(いま考えたジャンル名)は最終的に心酔した相手を殺害するに至るだけの説得力が必要になってくるのですが、『光を、もう一度』では主人公の視野の狭さというかたちで説得力が裏打ちされていますよね……。
 主人公はもう他のものなんていらないほどに兄貴に依存しているにも関わらず、たぶんですけど兄貴は主人公のことをそこまで大事には思っていない(主人公の心情を理解したうえで自分に都合のいいように利用している節がある)対比も切ないんじゃ……。
 主人公がここまで兄貴に対して盲目になってしまったのも、おそらくは村の出自(拷問と比喩されるほどの教育)が関係しているとなると、もう兄貴とエンカウントしてしまった時点で『詰み』な感じが否めないですよね。「そんなら俺が与えたるわ。お前の生きる目的、お前の価値、お前が積み上げてきたことの意味。全部や。全部俺が与えたる」という言葉だけでコロッと落ちてしまったの、いったいどれだけまともな扱いをされていなかったんだ……😭
 一応、ぱっと見ただけで裏社会の人間だと分かる初対面の兄貴を見捨てることなく怪我の治療を行ったところを見ると、素朴な善性は抱えていたはずなので、出会う人間が兄貴でさえなければ、別のルートもあったのかもしれませんね。とはいえここまで思い込みが激しい主人公を正しい方向に導くのは、かなり難しいなという気もしますが……。
 たとえばほら、同じ卓越した医療技術を持ち――、正義感が強く正しい方向を指し示せる――、主人公と同様の立場の無免許医師ならば――、彼を光の道へと連れ戻せるのではないでしょうか。それはドクターKなんよ。




灯り持ちのアリー / 五十貝ボタン

 迷宮を探索する冒険者が集まる街。そこで〈灯り持ち〉と呼ばれる冒険者のためにランタンを運ぶ役職の子供――アリーを主人公とした、ダンジョンクロールもの。
 まず、この小説……はちゃめちゃに完成度が高いです。こむら川小説大賞は文字数制限がありまして、今回は3,000字以上10,000字以下。つまり、どんなに多く書いても10,000字までなんですよ。でも私、最初に『灯り持ちのアリー』を読んだ時、ぜったいこれ10,000字の満足度じゃないなと――絶対もっと書かれてるだろと思って文字数確認してしまいましたもん。ちゃんと10,000字に収まっていました(当たり前)。
 10,000字という決して多くない字数の中で、主人公の現状説明。バディとの出会い。ダンジョンの探索。ラスボスとの邂逅・知恵比べ。そしてなんと主人公の出自の謎についてもきっちりと決着がつきます。なんというかこう……一本の映画を見終わった後のような満足感があるんですよね。
 どういう魔法を使ったらこのような芸当ができるのか……コレガワカラナイ。
 たとえば主人公の役職を〈灯り持ち〉、バディを学者にすることで、ダンジョン内で戦闘が発生しない(積極的に避けるため)シチュエーションにしても不自然じゃないような設定を選んでいたりだとか、そういうテクニックなのかな……?

 と思っていたら作者の方が近況ノートで振り返りを公開してくださっていました。うおっ……術式の開示助かる。
 なるほど……、うーん……滅茶苦茶綿密にプロットを練っていらっしゃった。3幕8場構成にカードを使ったシークエンスの整理……ハリウッドの脚本術だ……。
 結局、小説を書くのに魔法ちかみちなんてないんですね。完成度の高い作品を書きたければ、ちゃんと頭を使って丁寧にお話を組み立てなさい――と。
 はい。反省します😢
 あと個人的には、切った張ったの戦闘で解決するのではなく、あくまで知恵比べ・頭脳戦でダンジョンに挑むというコンセプトがすっごい好みでした。小さいころに読んでいた、往年のファンタジー小説――『デルトラ・クエスト』とかの、あたりのあの空気感を思いださせてくれる作風が……ね!




『   』 / 宮塚恵一

 わぁいポストアポカリプス。わたしポストアポカリプス大好き!
 携挙ウイルスと呼ばれる人間が突然光の束になって消失してしまう怪現象が流行し、世界が崩壊してしまった後を描く小説。
 ところでみなさん、ポストアポカリプス作品では、どういった部分が好きですか?
 「人のいなくなった世界を旅しながら、かつての世界の残滓を眺めるところ」?
「世界が終わるに至るまでの、現代社会が崩壊していく課程」?
「秩序のない世界で繰り広げられる暴力」?
「世界を救うために残された可能性の低い希望」? 
 わかります。ポストアポカリプスものを読む読者にとって、是非扱って欲しい、うまみと脂が乗った部位――ありますよね。こちらの小説――これらが全部入ってます。はい。10,000字の制限の中、ポストアポカリプスの「トロ」がぎゅっと全部盛り込まれているんです。主人公であるおじさんと少女の二人組(もうこの時点で年の差が好きな人には刺さりますよ)が、人間のいなくなった崩壊後の世界を旅する様子はもちろん、携挙ウイルスの発生と流行により現代社会がパニックになり壊れていく部分も描かれています。そしてみんなが大好きな最悪治安――生き残るための暴力もありますし、主人公たちにはこの絶望的な世界を救うための、微かな希望が託されています。ポスアポのフルコースや……!
 あと個人的には主人公のジュンとミカのふたりががっつりセックスしてるのが好き。この手のおっさんと若い女の子の年の差ペアだと、どうしても頭の中の恋愛感情警察が「ピピーッ! このふたりの間にあるのは家族愛! 父性愛です!」と脳内で私を逮捕しにやってくるんですが、作者の方が直々に「うるせえ! いいだろ! 男と女の恋愛感情でも!」って言いきってくれたのが嬉しかったりします。いいよね😉




犠牲の坩堝 / 魚崎 依知子

 ううう~~~~!! やりきれねぇ~~~!!!
 読んだ後に感情を揺さぶられる、とてもやりきない・ホラー作品。
 主人公の千春の家の玄関には、古びた壺が飾ってあって、主人公は小さいころから壺があるから「まあお祖母ちゃんが飾ってるんやろ」ぐらいに思っていたが、なんとお祖母ちゃん自身も両親も壺の存在を知らないという――どころかなんとその壺は、千春本人にしか視ることができないみたいで――?
 という始まり方をするホラー。
 まずこの題材の選び方絶妙ですよね……。ホラーの「嫌」さってやっぱり「もしかして自分の身にも起こるの……?」みたいな匂わせを読んでる側にしてくるところにあると思うんですけど、誰しも実家とか祖父祖母の家とかに「これなんのためにあるんやろ……」みたいな謎の骨董品はあるじゃないですか(ありますよね?)。そういう「ああ~あるある」みたいなあるあるネタをホラーのトリガーにされると、「もしかしたら我が家のあれも……?」みたいな不安感が焚きつけられるわけで、それがめちゃくちゃ「嫌」(ここでいう「嫌」は誉め言葉です。念のため)。
 あと胡散臭長髪無精ひげシャツの胸元開け霊能者が出ます。胡散臭くて長髪で無精ひげ伸ばしててスーツのシャツの胸元を開ける霊能者が好きなひとはぜひ読んだ方がいいです。
 読んだ後はひたすらやりきれなさに呻くことになりましたね……。過去に行われた所業はひたすらに悍ましく「そりゃあ……復讐しに、呪いにくるでしょうよ……」ってレベルで可哀そうなんですが、今回犠牲になった千春ちゃんの家族には一切咎がなくて、純粋な被害者なのがなんとも。新葉さんも単なる正義の霊能者ではなくて腹に一物を抱えているわけですが、千春ちゃんを恨むのは筋違いじゃないか? とは思いつつ、過去に家族を失う羽目になった遠因でもあるから、恨まずにはいられない気持ちもわからなくはないんですよね……それに、なんだかんだ言いつつ見殺しにはしないで千春ちゃんの命だけは助けてるわけですし。
 元凶100%お前が悪いな福行の家の呪詛返しをやった人間は、諸悪の根源の癖にたぶん勝ち逃げみたいな形ですでにこの世にいなくて、彼らの犯した『業の負債』を子孫である千春ちゃん一家や新葉さんが払い続けなきゃいけないの……めちゃくちゃ理不尽ですよね。なんか腹が立ってきたぞ👿
「末代まで祟る」という常套句について考えさせられるようになる、良いホラーでした。




二度と開けない / 衣純糖度

 うわ~~~!!! 人間の心を的確に狙い撃ちしてくる怪異だ……!
 東北地方の山にある鍾乳洞で、五名の死体が発見される。不慮の事故というかたちで処理されたが、事故にしては不審な点が多すぎる。五名が鍾乳洞に入ったのは深夜。しかも亡くなった五名は、なんの接点もないバラバラの他人であったとのこと。いったいなぜ、五名は夜遅くに鍾乳洞に入ったのか? そして彼らには何のつながりがあったのか――。
 この作品、一見そんなにホラー色が強くないというか、こう「怖がらせてやるぞ、さあ怖がれ……!」みたいな雰囲気ではない――むしろ、「ちょっといい話なんじゃないか?」という錯覚すらするんですが、実はかなり厄介というか、登場する怪異はめちゃくちゃに最悪度が高い存在なんですよね……。
 ルールに則って攻撃を仕掛けてくるタイプの怪異は、そのルールを把握されることが弱点になります。自ら襲われることを望む人間はいないので、ルールを知られて回避方法さえわかってしまえば攻略は完了してしまうわけです。なので、ルールがわかっても避けることが難しかったり、あるいは下手をするとルールを外れて襲ってくるような怪異もいるわけですが……。
 この作品に登場する怪異は、ルールに外れたことはしてこないし、その実回避方法もしっかり確立されています。にも拘わらずおそらく犠牲者はいなくならないだろうというのが、人間の心という部位の一番弱いところを突いてくるからなんですよね。
 物語の語り部も、全ての真実を知ったうえで、自分から怪異の懐へと飛び込んで行ってしまう……。
 最後まで読んだ後、タイトルを再度見直して「ああ……😭」「だろうな……」となってしまう悲しさよ。
 




空の色 / こむらさき

 せーの、ボーイ・ミーツ・ガール最高~~~~~!!!
 夜の色の肌と髪をした少年の許に、白い肌の女の子が連れられてやってくる。彼女は自分のことを「イケニエ」だと言っているが……? というファンタジー作品。
 読者に対する思考の誘導というか、読んでいると沸いてくる「あ、これってこういう話じゃん……?」みたいな読者の予想をハックして、クライマックスでそれを思いっきり気持ちよく裏切ってくれるのが最高で、読んでて滅茶苦茶にアガってしまいました。
 ノアルとハイネが出会い、少しずつ仲を深めていくんですが、その中で少しずつ不穏のパーツが散りばめられていて、「嫌な予感」を抱かせて来るんですよね。
 ノアルが太陽の下に出られないとか、「私、イケニエなんだって。あなたとお友だちになればお父さんもお母さんも死なないんだって」、という科白とか、ふたりの成長の速度が異なっているとか、ノアルがハイネの血を美味しいと感じてしまうくだりとか、もうとにかく至る所で破滅のジェンガが組み上げられていてですね……。表面上、ノアルとハイネは順調に仲良くなって友達に――どころか友達以上の仲に――なるわけですが、そんなふたりとは裏腹に、我々読者は「あぁ……これは最後にノアルが泣きながらハイネを食べてバッドエンドになるやつやな……」って半ば絶望と共にページをめくるわけですよ(カクヨムにページはないけど)。
 そしていよいよクライマックスと共に明かされる真実。ノアルと生贄についての説明も行われ、いよいよハイネを手に掛けるしかないのか――となった瞬間、「うるせ~~~~~破滅フラグなんか知らね~~~~!!ふたりの育んだ愛がそんなものに負けるわけあるか~~~!!!👊👊👊👿👊👊👊」っていう勢いで全部ぶっ壊して最高のハッピーエンドに突っ走るんですね。
 その爽快感と開放感が素晴らしくて。本作は基本的にノアル視点でずっと進行してるため、屋外に一切出ることがないんですけど、ラストシーンはふたりがそんな暗い場所から太陽の当たる世界へと旅立っていくわけで……。ほんとに読んでてよかったねふたりとも……😭ってなってしまうんですよ。
 いやあ、王道のボーイ・ミーツ・ガールっていいものですね。




海の底、愛はなく / 南雲 皋

 人魚が出てくるノワール・ファンタジー。
 奴隷番号G-871(通称ギャナイ)が雇い主の組織に対して人魚の世話を命じられるところから物語が始まる。最初は言葉も通じない人魚にたじたじであったギャナイだったが、世話をしていくうちに少しずつ人魚と仲を深めてい行って――というお話。
 人魚の描写の実在性がすごくいいなぁと感じました。美しくも恐ろしい超常の存在を魅力的に描いていくのがワザマエ。最終的にまあ、人魚もただ綺麗なだけではない訳ですが、それでもギャナイだけではなく読者も「人魚かわいいなぁ」と思えるように、きっちりと愛着が持てる感じにお膳立てしてもらえるおかげで、クライマックスの「彼女を助けなければならない」というギャナイの行動の説得力も増してくるわけで。
 あとはやはり世界観や設定から感じさせる閉塞的な空気感も素晴らしいと思います。主人公が奴隷という立場もあり、とにかくとことん境遇が悪い。そんな中で、人魚と出会って……仲を深めて、あまつさえセックスまでするんだから……そりゃあ、惚れてしまうのも無理はないでしょうよ(洗脳もあるしね!)。組織が手を広げている人魚関連のビジネスも相当えげつないので、もうほんとに……この世界は地獄だぜ! っていう感じです。大好き。
 オチとしては人魚の洗脳能力を受けて、ギャナイも海へ連れていかれた、ということになるんですが、いかんせん元の生活が奴隷であり酷いありさまだったため「まあなんか……そのままあの組織でこき使われるよりはマシでは?」という気持ちにもなったり。とはいえ、タイトルを見返すと『海の底、愛はなく』なんですよね……。愛はないのか……。なんか、ろくな末路にならなさそうだな……ギャナイくんに救いは……ないのですか😭




スケルトン・ナイトホークス / 木古おうみ

 お、面白い~~~~~!!!!!
 透明病という、その名の通り透明人間になってしまう病気が流行したアメリカ。透明病患者のケヴィンと鍵開けが得意な男ロウがコンビを組んで、泥棒をしながらキャンピングカーで旅をしていくという話。
 前半のロードムービー的なパートがまず面白いんですよ。お喋りな透明人間のケヴィンとどちらかといえば無愛想な方のロウの凸凹コンビが、タランティーノ作品のようにやいのやいのと騒ぎながら、泥棒したりドライブしたりコインランドリーに入ったりと、楽しそうに日常を送るんですよね。透明病に罹った人間の犯罪率が上がり、結果として犯罪を犯してなくても透明病というだけで犯罪者扱いされてしまうという世知辛い状況――そんな中で陽の当たらない夜に隠れながら泥棒に手を染める日々。ふたりの境遇は決して良いものではないんですけど、不思議と暗さはあまり感じないんですよね。「たとえ光の当たらない暗い道でも、お前となら歩いて行ける」男ふたり――〝癖〟ですねぇ……。
 そして後半、そんなささやかな生活がアクシデントで一気に崩れ去ってしまいます。もうふたりで共に暗闇を歩くことはできない。そういった状況に陥った時、透明人間のケヴィンがした選択は、自分ひとりが泥を被り、ロウを再び陽の当たる場所へと押し戻すことだった――。
 しかも、ケヴィンはこの選択を実は、前々から用意していたんですよね。いざとなったら、二度と陽の当たる場所を歩けない(ダブルミーニング)な自分と違い、ロウはまだやり直せる。だから、自己を犠牲にして、ロウを助けた。
 共に似たような境遇から転がり落ちて、暗い道を歩いている時、ひとりはこのままずっと歩き続けるつもりでいたが、もうひとりはなんとか相方に元の道へ戻って欲しかった、と。これは――

『喧嘩稼業』 / 木田康昭

 ケヴィンが、この「自分が犠牲になってロウを助けようとする計画」を、前々から準備していたというのが良いんですよね。アクシデントによって咄嗟に取った選択ではなく(それもまたエモいけど)、ある種順調にふたりが罪を重ねている段階から、すでにロウだけはなんとか戻って欲しかったという、この……そう考えると、最初の段階、ふたりが出会って復讐のために手を組みと決めたときの名乗り、本名を名乗らずにケヴィン(透明人間が出てくる映画の主演俳優名)と呼んでくれとした時点で、最後はこうなることをどこかでうすうす想定していたんじゃないかと、そう思ってしまうんですよね……。「ヒーローでも、ヴィランでも、誰かがそう決めてくれるならいいよ。何処にも存在できない透明人間よりずっといい」って、存在しないことを誰よりも恐れてるのに、自分の名前じゃなくて偽名を名乗るってさぁ……。絶対あれじゃん……!




緋星の君 / 月餠

 あぁああああ~~~~めちゃくちゃ好き……!!! 
 続きが……続きが読みたい!! 
 もっともっと続きが読みたいですわ~~~!!!(カクヨムお嬢様)
 魔術を用いて医療行為を行う、魔術医療師と呼ばれるローズと、その助手のヨダカが活躍するファンタジー小説。
 もう、まずこの主役二人のバディがバチバチに私の好みにハマってですね……いや、だって、そんな……根明元気赤髪少女と、褐色黒髪長髪で笑顔が胡散臭い青年ですよ……?
 しかも青年は滅茶苦茶に暗くて重い過去を持ってるんですよ?
 そして少女は、そんな青年を暗闇から救い出してるんですよ……?

 そんなふたりのバディが、嫌いなやついる……?
 そんなふたりの冒険を、もっともっと見たくねえやついる……?

『東京卍リベンジャーズ』 / 和久井健

 主役のふたりのキャラが好きというのももちろん、設定や描写もすっごく良いんですよね……。
 魔術医療師という設定は、作中で出てきたノバラ病を始めとして、様々なバリエーションのファンタジーやまいを登場させられて、「治療には〇〇という素材が必要だ~」とかやっても物語を展開させられますし、そこに立ち向かう主役のふたりとか、他の魔術医療師とかでもいい出汁が取れそうですし。病気というものの性質上、ストーリーに明確な悪役がいなくても、「命を救うためのふたり」を真正面から書き続けることで無限に物語が広がっていきますからね……。もう私の脳内ではローズとヨダカが難病に陥った人々を助けるために奮闘したり、全力を尽くしても患者が救えずに落ち込むローズをヨダカが励ましたり、自身の『過去』に足を掴まれて絶望したヨダカをローズが救う場面が再生されましたから(妄想)。
 あと個人的にかなり好きだったのが、風景描写ですね。今回の話の舞台となるサントラルカ島や、帰りの列車から見る夜空の景色など、光にあふれた明るいファンタジー世界の風景を短い文字数でバチッ、バチッと切り取ってくれるのがワザマエ。
 ヨダカはやっぱり宮沢賢治の『よだかの星』リスペクトだったりするんですかね? 『よだかの星』には夜鷹の弟として、川蝉かわせみが出てくるんですが、川蝉は「翡翠」とも書けるんですよね(※さも前から知ってた知識ですみたいな文章ですが、今回「よだかの星 ヒスイ」とかで検索して初めて知りました。カワセミって翡翠とも書くんですね。勉強になりました)。ヨダカが過去編で殺した大事な人の名前がヒスイなので、そことも掛けてたりするのかな……?(わからん)

 ちなみに作者の方がTwitterでイラストを公開されてたりします……!
 うわー!!!!(あまりの尊さに光の粒子になって浄化される)





やがて光になる者 / 灰崎千尋

 ある特殊な石が採れる鉱山の街を舞台にした、ダークファンタジー。
 鉱夫である主人公のニフはその街で日々を悠々と過ごしていたが、やがて、周囲で人が失踪する事件が起きて……というストーリー。
 まず私ファンタジーでよくある炭鉱の町みたいなのが好きなんですよね。なんかこう……山間にあって、石畳の道が敷かれていて、レンガ造りや木組みの家が立ち並んでいるような……あの感じが。
 前半はニフの視点から、舞台となる街で生活を送るパートなんですけど、その雰囲気がとてもいいんですよね。ファンタジー飯テロの要素なんかもあったりして、かなり魅力的に街を描いています。
 強い光を放ち続ける石――極光石を採る鉱夫はめちゃくちゃに実入りがいいんですね。長く仕事を続けるうちに石の放つ光に目をやられてしまうというデメリットはあるものの、仕事に行くのは一か月に一度だけでいいし、採掘もさほどハードなものではない。にもかかわらず、一か月毎日女性を買い、毎日酒を浴びるほど飲んでもありあまるだけの給料がでるっていうんだから、そりゃあもう、夢のような環境なわけですよ。ズルない?
 ゆえに鉱夫は誰でもなれるわけじゃなく、厳しい試験と守らなければならない掟があるんですが……。
一、一度に採り過ぎてはならない
一、月に一度は規定量まで採らなくてはならない
一、夜に掘ってはならない
一、生涯、街の外に出てはならない
一、坑道で起きたことを組合の他に口外してはならない
一、消えた者を探してはならない

 はい。もうフラグがばりばりに立ってますよね。特に最後の一文がやばすぎる。というわけで後半のパートでは案の定、ニフの周囲で失踪者が出てしまいます。「消えたものを探してはならない」という掟に込められた本当の意味。街全体が一種の共犯者なのではないかという猜疑心。あれだけ居心地が良かった街が、暗い一面を覗かせるのが怖いですね。『ひぐらしのなく頃に』のような、因習ホラーのような読み味。
 そしてクライマックス、ついにニフはこの街に隠されたトップシークレットを目にしてしまうのですが――このオチも良いですね。やはり上手い話には裏があったという……。
 楽しい鉱山の街から少しずつ不穏さが滲み出す、良質なダークファンタジーホラーでした。




光刃剣 邪獣斬り / 木船田ヒロマル

 慶長の世、郡方奉行の三男坊、沓沢戈門を主役とした時代劇。
 いやあ……これもめちゃくちゃに面白かったです。
 これもある種面白いギミックが仕込まれていて、前半時代劇なんですが、途中からガラッとジャンルが変わって、SFアクションになるんですよね。宿場町の近くの山村で起こった集団失踪事件。調べるために送られてた人員も消息を絶つ……という不穏な内容から、異星人のヒロインとタッグを組んで星間生物兵器を打倒するという筋書きへドライブしたときは、思わず「そう来たか……!」と膝を打ちました。
 この手のジャンルを途中からガラっと変える作品って、注意しないとかなり読者に「騙された感」を与えてしまうというか、「なんだよこっちはAを楽しむつもりで読み進めていたのにBになっちまうのかよ」という不満を産みかねないんですが、そういう不満感が全然生じないのが上手いなぁ……と思いました。
 たぶん前半の時代劇のパートがすごく足腰がしっかりしているのが理由なんでしょうか。文体もめちゃくちゃ剣客小説のそれですし、主人公である沓沢戈門の生い立ちや、オリジナル設定(だよね?)の「万質平よろずただしたいらげ方」設立の過程なんかも、読んでて「ああ、こういう語り口あるある」という感じです。こういった作品の随所に見られる時代劇へのリスペクトが、単なるジャンルの模倣にならず、細部をこだわり抜いたことによる説得力に繋がっているんだなというのが伝わってきます。
 後半のSFアクションパートも、ヒロインであるクルナとダグとの出会い……ファースト・コンタクトものの美味しさをしっかりと味わわせてくれますし、ステフバクとの戦闘も良い……のですが……!
 字数が……! 字数があまりにも足りていない……!😭
 はちゃめちゃに面白かったので、字数を気にせずに40,000字くらいに改訂したディレクターズカット版がぜひ読みたいですね……!





星の砂漠で狼と / 鍋島小骨

 うおおおおおおお!!!(遠吠え)
 虐げられた盲目の巫女ヨンと、支配され自由のない狼男シルファの出会い……別れ……そして再開を描いたファンタジー作品。
 ごりごりに虐められた救いのない不遇少女とさぁ……擦れに擦れた狼男の組み合わせがさぁ……嫌いな奴なんてこの世にいねえだろうが!!!
 このふたりが出会い、一時の間だけ心を通じ併せて、そして別れる……。ほんのわずかな時間だけの邂逅だったかれど、それが、それぞれにとって掛け替えのない心の「救い」になる……。――んだけど、相容れない立場のふたりであったので、シルファの行いによってヨンはさらに窮地に追い詰められてしまう……。
 ヨンに同情して、どうにかして彼女を助けてやりたいと思ったのに、自身の取った行動が原因で、より一層彼女を苦しめる羽目になってしまうシルファ……😭。
 ほんとにヨンに対する虐めが苛烈すぎて、拷問のシーンのあたりとかは読んでてかなり辛かったんですけど、最後には救われたのでよかったです。不遇少女は境遇が厳しければ厳しいほど、救われたときの落差でより幸せになれるということなんでしょうか😭。





深海の花は月を抱く / 悠井すみれ

 いや……これは凄まじい小説だ……。
 一言でいうと、人魚同士の人外百合……? になるのでしょうか。いや、でも、ほんとに、これは、凄まじいんですよ。そう形容するしかないんです。読み終えたあとは、「凄いものを読んでしまった……」という感覚で、鳥肌が立ってしまいました。
 まずはやっぱりアイデアですよね。人魚は人気の題材ですけど、そこから深海魚の人魚というところを持ってくる独創性。「光」が題材のイベントで、光の届かない深海を描くっていうのもあれですし、提灯鮟鱇の人魚ですよ!? 夢鮫の人魚ですよ!?
 このふたりの交流のシーンも良いんですよ……。お互い人魚なんですけど、言葉は一切交わされないんです。ふらりと夢鮫がやってきて、わずかに触れ合うだけの交流(ちょっとえっち)。

 彼女と夢鮫とは、同じ海域に棲む顔見知りのようなものだった。互いを互いの獲物にすることもなく、けれど種の違いゆえに群れることもなく。ただ、並みの魚よりは知性があって、相手の光に見蕩れる感性は持っているから、互いに認識している、というていどの。少なくとも、彼女のほうではそう考えていた。(本文より)

 あるかなしか、という具合の細い異種間交流。で、ありながら実はそれがとてつもないほど、本人にとって気づかないほど大きな、無視できない感情になっていったというのが、こう……良いんですよね。
 ラストシーン。死に際の夢鮫からの言葉のないラブコールに対しての、提灯鮟鱇の応え方も、ね……! めっっっちゃいいんですよ。
 人魚同士でありながら、種族が違うから言葉が交わせない。繁殖もできない。で、ありながらひとつになりたいと望んだ夢鮫。
 そんな彼女とひとつになる方法は、もう、これしかない・・・・・・
 彼女たちが人間であったならおそらく取らない選択肢。で、ありながら単なる魚であったとしたら、そもそも「愛」が産まれることもない。「人魚」だからこその行為。これは、もう……なんと形容すればいいんですかね?
 異種族同士の愛を描いた、凄まじい恋愛小説でした。






すみちゃんに見えた光 / 尾八原ジュージ

 短編ホラーの名手、尾八原ジュージ先生による珠玉の一篇。
 ある特別な「光」を見ることができるという少女、すみちゃんを、友人である朝子の視点から描いた物語。
 「死」を見ることができ、それを操れるというのは『直死の魔眼』のようでちょっとロマンがあるのですが、この物語ではすみちゃんは自身の能力を知っていた母親に利用され、搾取され続けてしまいます。
 その結果、「死」をため込み続けたすみちゃん自身も死んでしまうのですが、オチについては少女が死んでしまう物悲しさや、彼女が仕掛けた「策」の恐ろしさだけではなく、どこかこう……『爽快さ』のようなものも、ひとかけらだけではありますが、感じるところがあるんですよね。
 おそらく、自身の能力を利用され、ただ命を削り取られるだけだったすみちゃんが、最後の最後で自身を食い潰そうとしていた家族に対して特大のカウンターを入れたのが、ある種の叛逆リベリオンを感じさせるからなのではないかと思います。虐げられし者――持たざる者の〝弱者の一撃BUMP OF CHICKEN〟が支配構造そのものをぶち壊す革命となるわけですね……。
「とりかえしのつかないことが、とっくに始まってしまっているのだと、朝子は知った。」という一文が妙に印象に残っています。能力に目覚めてから、掌を返されるようにちやほやされ、金の為に「死」を身体に取り込むことを強要され、きっと孤独で違いなかったすみちゃん。それでも以前は朝子に死が移らないように遠ざけたんですよね。本当は誰よりも側にいて欲しかったはずなのに。そんな彼女が、復讐をすると決めてからは

「いい? ないしょよ。ないしょにしてくれなかったら、わたし、朝ちゃんも連れてくからね」
 すみちゃんはそう言った。蛇がしゅうしゅう騒ぐような声だった。
(本文より)

 といった具合になってしまったのは、やはりすみちゃん自身も能力に目覚めた影響で、以前とは変わってしまった、ということなのでしょうか。しかしよくよく考えてみれば、そもそも朝子に秘密を打ち明けるという事をしなければ、バラされるという余計なリスクを負うことはなかったはずなんですよね。にも関わらず、わざわざ「どうしても言いたい事がある」と朝子に告白したのは、何故なんでしょうか。自身の罪を朝子に知ってほしかった贖罪行為なのか、あるいは、「こんなことをしてやったぜ」という自慢なのか、そもそもそんなに深い意図はなく、子供同士の内緒話の延長線上のような感覚だったのか……。ここのあたりのすみちゃんの心情は、読めば読むほど味わいが変わってきますね……。全編を通して朝子の視点で物語が語られるため、すみちゃんが家族や光や朝子の事をどう感じているのか、というのを考えながら読んでいくのも、なかなか楽しいと思います。
 最後、タイトルの『すみちゃんに見えた光』の回収も見事だなと思いました。読んで行く最中は、「すみちゃんに(だけ)見えた(特殊な)光」だと思うんですが、ラストシーンで実は「(朝子が見た、まるで)すみちゃん(のよう)に見えた(青白い)光」の意味合いも兼ねていたと言う、日本語の助詞を利用したダブルミーニングだと明かされるのがめちゃくちゃ熱いんですよね。
 ……まあ、察しわるわる読者の私は、読んでてリアルタイムに気づけなくて、読了後10日以上経って、ふとTLにタイトルが流れてきた時に初めて気づいたんですけどね!!!!!
 😭察しが悪い!!!!!!!





乳首を虹色に光らせたトナカイさん / 春海水亭

 クソワロタ。
 いや、その……この作品については兎に角まず一度読んで欲しい。絶対に笑ってしまうので。逆にいま笑えない場所にいるのなら、絶対に読まないでください。お葬式中とか。
 クリスマスの夜、トナカイが風邪を引いてしまってプレゼントが配れないサンタさん。そこに現れた青年は
乳首を虹色に光らせていた――というあらすじ。どういうことだよ。
 第七回こむら川小説大賞、テーマが「光」という事でチンポや乳首を光らせる作品が結構あったりするんですよね。凄い大賞だ。でもまさか、チンポと乳首両方を光らせてくるとは……。なんなら肛門も光ります
 とにかく会話のテンポが小気味よく、ボケとツッコミ、さらには地の文も入り乱れて、流れるように笑いを繰り出してくるので、最後までするすると一気に読めてしまうんですよね。三択苦労す、じゃないんだよ。
 このあたりのコメディ作品の、こう……技術なのかセンスなのかはどうやって身につけるものなんですかね? そもそも春海水亭先生は滅茶苦茶な数のオモロ短編をカクヨムで発表しまくってるので、まずそれぐらい短編を書いてから言え、という話になりそうですが。とにかく毎日纏と練だ。
 これは余談なんですが、乳首を光らせる青年と股間を光らせる青年が、どちらが自己犠牲をするか議論をするシーンにて、

「いえ、私が行きます。股間を虹色に光らせておきながらここまで高潔な人間がいるでしょうか。彼はここで死なせるにはあまりにも惜しい人間です」
「そもそも股間を虹色に光らせている人間の参照例が一件だけなんだけれど……」
(本文より)

 という場面があるのですが、実は春海水亭作品には過去にもチンポが虹色に光る強者がいたんですよね。
 まあ、そいつは憎めない部分がありつつも、人の彼女を寝取るような奴なので、全然高潔な人間ではないのですが……。
 そちらの短編もはちゃめちゃに面白いので、まだ読んでない方は是非とも読む事をオススメします。題材がNTRということもあり、若干シモネタに寄ってはいますが……トナカイで笑ってしまったなら大丈夫でしょう!!😊






太陽はカンヴァスの中に輝く / 朽尾明核

 ワシの書いた小説に似とるなぁ……
 これワシの小説じゃないか?


『チェンソーマン』 / 藤本タツキ






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