ウィンターブルー(冬季うつ)とは?原因・対策を解説
今年も冬がやってきました。クリスマスやお正月など、楽しみな予定を心待ちにしている方も多いでしょう。けれども一方で、このような悩みを抱えている方はいませんか?
「毎年寒くなると、気分が沈む…」
「何もしたくない。ずっと寝ていたい」
冬の気分の落ち込みは「ウィンターブルー(冬季うつ)」というメンタルの不調です。精神疾患とまではいきませんが、多くの人が経験するメンタルの症状として医学的にも認められています。
今回は、ウィンターブルーの症状・原因と対策法をお話しします。簡単な対策ばかりなので、気軽に試して穏やかな冬を過ごしましょう!
「ウィンターブルー(冬季うつ)」とは
「寒くなると落ち込む」のは気のせいではない
ウィンターブルー(冬季うつ)は、医学的には「季節性情動障害(SAD)」と呼ばれています。2年間以上、特定の季節にうつ病の症状が出た場合にSADと診断されますが「受診まではしないけど、気分が重い…」という方も多いはずです。
日本人を対象にした調査では、2.1%の人がウィンターブルーを経験しているという結果があります。特に女性の割合が高く、また20代前半に症状が出始めるパターンが多いです。
後ほど詳しくお話しするのですが、ウィンターブルーには日照時間の長さが関係しています。そのため高い緯度にある国々、特に北欧諸国でよく見られる症状です。日本でもより緯度の高い東北・北海道の人たちが起こしやすいといわれています。
10~11月から症状が出始める
ウィンターブルーは秋の終わり頃、早ければ10月半ばあたりから症状が現れます。
主な症状は「過食・過眠・体重増加」です。ついつい食べすぎ・眠りすぎてしまって体重が増える、というのがウィンターブルーの特徴です。一般的なうつ病では食欲の低下・不眠・体重減少が多く見られるのですが、ウィンターブルーの場合は真逆の症状が起こります。
気分の落ち込みや倦怠感、意欲低下も多い症状です。「頭が働かない・集中できない」「外に出たくない」という方もいます。
また過食症状では、お菓子・パンなどの甘いもの・炭水化物を欲するパターンが多いです。これは症状のベースとして「気分の落ち込み・頭の働かなさ」があり、甘いものや糖質を摂って一時的にでも幸福感を上げよう・頭を動かそうとしているためといわれています。
原因は「日照時間の変化」
ウィンターブルーの原因ははっきりと解明されているわけではありません。けれども定説として「日照時間の変化」が関係しているといわれています。
人間の脳は、朝起きて日光を浴びると「セロトニン」を分泌し始めます。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれる物質で、安心感・幸福感を感じやすくしたり頭をしっかり動かしたりする働きがあります。午前10時前後が最も活発に分泌される黄金タイムで、お昼過ぎからは減少していきます。
冬になるにつれ日照時間が短くなると、どうしてもセロトニン分泌量が減りがちです。さらにセロトニンは、夕方から分泌される「メラトニン」の材料でもあります。メラトニンは夜になると自然な眠りに導いてくれるのですが、日中にセロトニンが十分に生産されていないと分泌量が減り、体内のリズムが狂ってしまいます。規則正しい生活がしづらくなって、より不調に…という悪循環が生まれるのです。
また、単純に寒いと身体がこわばりますよね。筋肉が緊張状態になりやすいのも心身には大きなストレスです。寒いとより孤独を感じやすい方もいますし、大雪・強風などの激しい気候を不安に感じる方も多いでしょう。冬の時期は想像以上にストレスフルなのです。
「無理をしない」という大前提
ウィンターブルーへの対策をお話する前に、まず前提としてお伝えしたいのが「無理はしないでOK」ということです。
たくさん食べてたくさん眠って、厳しい冬を乗り越えるためのエネルギーを蓄えるのは、生物としての本能でもあります。多くの生き物にとって、冬は食糧が少ない季節です。秋のうちに栄養を蓄えておいて春まで冬眠する動物もいますよね。
人間は冬眠をする動物ではありません。でも、厳しい冬が命に関わるのは同じ。たとえばたくさん眠って活動量を抑えることで、寒さによる死を防いでいるとも考えられます。
ウィンターブルーの症状は「冬の間は無理をしないで!」という身体からのサインかもしれません。できるだけ頑張らず、普段よりもリラックスできるように工夫して過ごしましょう。
ウィンターブルー対策におすすめの冬の過ごし方
対策① 積極的に日光を浴びる
幸せホルモン・セロトニンが最も分泌されるのは、午前中に日光を浴びた場合です。実は、室内の照明器具の明かりは弱すぎて、セロトニン生産には不十分です。さらに、セロトニンは視覚的に日光を感じることで生産されるもの。明るい部屋で眠っていても効果がないのです。
朝起きたらまずカーテンを開けて、部屋の中に陽光を入れる習慣をもちましょう。太陽の光であれば、曇りの日でも比較的効果があります。部屋を選ぶときに陽当たりのよさを重視するのもよいですね。
対策② 身体を温かく保つ
近年よく耳にする「温活」も、ウィンターブルー対策に効果的です。寒さは我慢せず、身体を温かく保つようにしてください。
特に首元・手首・足首やお腹、下半身を温めるのがおすすめです。靴下やアームウォーマー、マフラー・スヌード、膝掛けなどを活用しましょう。腰・お腹にカイロや湯たんぽを当てると快適です。
そのほか、毎日湯船に浸かったり温かい飲み物を摂ったりすると温活としても効果がありますし、なによりリラックスにつながります。身体を温めると、心も安らぐもの。「気分が落ち込む、なんとなく苦しい」と感じたときは、「どこか冷えてないかな?」とチェックしてみてください。
対策③ トリプトファンを含む食材をとる
必須アミノ酸の一種「トリプトファン」は、セロトニンの材料になる物質です。短い日中でよくたくさんのセロトニンを生産するために、冬の間は積極的に摂っていきましょう。
トリプトファンは、穀物や肉・魚、納豆・豆腐・みそなどの大豆製品、牛乳・ヨーグルトなど乳製品に多く含まれています。卵やバナナ、ナッツ類など数多くの食材に含まれているため、積極的にトリプトファンを摂るようにすると品目の多い健康的なメニューが実現できるでしょう。
ポイントは、食事の際は「植物由来の食品」から食べることです。肉・魚に含まれている「動物性たんぱく質」は、トリプトファンの摂りこみを阻害する働きがあります。上に挙げた食材の中では大豆製品やバナナ、ナッツ類を最初に食べてから肉・魚を食べるのがおすすめです。
対策④ 人との関わりを大切にする
何事もおっくうなときは、周囲の人と関わるのも面倒に感じますよね。けれども、人間の「幸福感」には人とのコミュニケーションが大きく関係します。
「友人・同僚とおしゃべりしたら、なんだかスッキリした」という経験がある方も多いはずです。ウィンターブルーで実際に会う元気がなくても、チャット・電話で話すだけで気分は変わります。
また、スーパーの店員とレジでやりとりするだけでも幸福度は上がるという調査結果もあります。人に会う気分になれないときは、必要最低限のコミュニケーションを丁寧にしてみるのもおすすめです。
まとめ
ウィンターブルーについてお話しました。
冬になると気分が落ち込む、無気力になる、ずっと倦怠感がある…このような症状を経験すると、寒くなるたびに「あぁ、また辛い季節が来るなぁ」と不安になる方も少なくないでしょう。季節の変化に身構えながら過ごすのは、苦しいことですよね。
けれども、冬はクリスマス・お正月などイベントごとが多い季節です。友人と鍋を囲んだり、旧友・親戚などと久しぶりに会えたりと、冬ならではの楽しみもあります。ウィンターブルーには十分対策をして、無理のない範囲で冬を楽しんでくださいね。