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#7 バルサスポーツ心理学:チームの"生産性"を下げる2つの要因とリーダーが行うべき3つのアプローチ

はじめに

ひとえにリーダーシップと言っても、それを発揮する場面は様々です。
リーダーシップには主に3つの局面があり、それぞれの局面がリーダーに対してある程度、チームのハイパフォーマンスを引き出すための道筋を示します。

さらに、これらは組織の優先順位に基づいて順序づけられているため、自然とリーダーに優先順位を教えることとなります。

その局面とは
1. 生産性
2. グループの雰囲気
3. 個人の成長
です。

これらを明確に分類し理解することで、チームの状況が望ましくない時に、どの局面に問題があるのかを明確に把握することが出来ます。
それにより、以下のことが期待できます。

  1. チームパフォーマンスが向上し、より良い結果の達成。

  2. チームメンバー間、もしくはリーダーとチームメンバー間のすれ違いの解決。

  3. モチベーションのないメンバーのモチベーションの回復。

ハイパフォーマンスリーダーは1つの局面にとどまらず、前述された3つの局面全てをカバーする、包括的な知識を持つことが求められます。

今回はこの3つの局面のうち、生産性について紹介してきます。



生産性とは

チームの生産性とはチームがその能力において達成できる最終的なパフォーマンスレベルと現状の比較で考えられます。

また、生産性はリーダーシップの主要な局面ではありますが、生産性の向上は非常に複雑な課題です。優秀なメンバーが揃っているからといって生産性が際立って向上するわけではありません。

「現在の生産性」=「見込まれる生産性の最大値」-「欠点のあるグループプロセスによる損失」
だと表されます。

つまり、生産性を向上させるためには様々な問題によるマイナス要素を解決していくことが重要だということです。このマイナス要素は大きく、「モチベーションの欠如」「連携の欠如」の2つに分類できます。

モチベーションの欠如

モチベーションの欠如は主に、「チームの他の誰かがやってくれる」と感じている時、つまりチームにおいて自分の必要性が感じられない時に起こります。

メンバーがモチベーションの欠如によって、100%の努力をしていない場合、それはソーシャルローフィング(社会的手抜き)と呼ばれます。

ソーシャルローフィングが起きる主な要因は以下の通りです。

・チームメイトのモチベーション不足を察知し、努力を怠るという確信。
・努力が認識されず、チームのためのハードワークが感謝されていないと感   じること。
・自分が頑張らなくてもチームメイトが補ってくれるいう感覚。
・チーム内での存在感を消すことで、努力を怠ることのデメリットを避けられるという思考。

連携の欠如

生産性を考える上でもう一つのマイナス要素である「連携の欠如」はチームメンバー間の結束が弱い時、またはチームとして意味のない戦略が採用された時に起こります。

連携の欠如が起きていると、チームのモチベーションは高く表面上は生産的でもソーシャルローフィングが起きてしまうことがあります。
それを避けるためにも専門的で具体的な焦点が必要とされますが、以下にそのための3つの中心的な概念を紹介します。

・役割
・目標
・強化

後にこの3つについて具体的に説明していきます。


ハイパフォーマンスとは

上記の3つの中心的な概念を説明する前に、「ハイパフォーマンスとは何か」を確認していきます。
ハイパフォーマンスという単語は過去記事でも何度も使用してきた単語で、この記事シリーズの中心となりますが、ハイパフォーマンスとポジティブな結果を混同する人が少なくありません。

ハイパフォーマンスを構築する主な要素は各個人の自身との戦いです。特にスポーツにおいては常に相手との競争で勝負結果が出ますが、相手に勝つという結果はハイパフォーマンスを意味するわけではありません。

もうひとつ、ハイパフォーマンスの主な構成要素はストレスのかかる状況への慣れです。

スポーツ競技において、批判の声や観客の視線等、様々なストレスがあります。それらにハイパフォーマンスを妨げられないようにするためにも、どんな状況においても一貫して注意の先をコントロールするスキルが必要です。

上記のストレス要素や相手のパフォーマンス、天気、審判の判定など様々な外部要因があり、それらは影響力を持っていますが、最も重要なことは内部要因を改善し成長させていくことだということを理解して注意の先をコントロールする必要があります。

つまりハイパフォーマンスとは、自分自身と戦い打ち勝つために100%の努力をし、困難を乗り越え目標を達成すること。そして、ストレス状況でも注意の先をコントロールして自身の成長、パフォーマンス向上にフォーカスすることを意味するのです。


役割の設定

役割とは各メンバーがチーム内に存在するそれぞれの立場で何が求められているか、何を期待されているかを明確にするものです。

このフェーズにおいてリーダーは非常に重要であり、各メンバーに与えられる役割は明確であり、具体的な行動を含んでいなければなりません。

「副キャプテンという名前だけの役割を与えるのではなく、キャプテンが先頭に立ってみんなを鼓舞するから、副キャプテンは全体を見てチームが勢い任せにならないようにバランスを取る。そのために常にコミュニケーションを大事にし、各メンバーの意見の聞き役に周りキャプテンとの間のズレを調整していく。」
あくまでも一例であり、簡潔なものですがこのようなイメージです。

そして、その役割は各メンバーの特徴に適したものである必要があります。
当たり前のことではありますが、意外にもこれを実行するのは簡単ではなく、各メンバーのことを深く理解する必要があります。

今後の記事で各メンバーを理解するための個人ミーティングのガイドラインも紹介する予定なのでぜひフォローをお願いします!

そして、役割を決めた後はそれをチームメンバーに伝えていく作業があります。その際、チームメンバーがその役割を正確に理解し、それを受け入れているかどうかを確かめる必要があります。

チームメンバーがその役割を受け入れるかどうかにおいて、役割の伝え方は非常に重要です。
もし、リーダーがその役割が誰でも出来るありふれたものとして伝えた場合、もしくはそう捉えられかねない伝え方をしてしまった場合、チームメンバーがその役割にコミットするのは困難になります。

そして、その後リーダーはチームメンバーがその役割を全うするためのサポートを提供する意思を示すことも忘れてはいけません。

役割において最後のステップは、各メンバーがそれぞれの役割を適切に実行できているかを確認することです。

チームメンバーがそれぞれの役割を正確に理解し受け入れていても、それだけでは十分ではありません。彼らは「それをどのように実行するか」を知っていなければなりません。

リーダーは役割の設定を通じてチームの生産性を向上させることが出来ます。そして、その役割設定は以下の3つを明確にすることが重要です。

・何をするか
・何をしたいか
・どう実行するか

メンバーが「何をするか」をメンバーの「何をしたいか」と一致させるには前述の通りリーダーの伝え方が非常に重要です。
メンバーが与えられた役割(何をするか)の重要性に気づき、その役割に対して前向きになる(何をしたいか)ことが必要です。


目標設定

目標設定のガイドラインは過去記事でも紹介します。そちらの記事もぜひご一緒に!

今回はチームの生産性を上げるための短期目標の設定について少し深掘りをします。

最もありがちなミスは結果目標だけを設定して、パフォーマンス目標を設定しないことです。
結果目標とパフォーマンス目標に加えて個人目標とチーム目標があり、それらを掛け合わせた以下の4パターンの目標が存在します。

  1. チームの結果目標

  2. チームのパフォーマンス目標

  3. 個人の結果目標

  4. 個人のパフォーマンス目標

その後は目標に対しての進捗の評価も重要です。
これも結果目標とパフォーマンス目標でしっかりと分けて考えなければならず、結果目標は定期的に現状と照らし合わせて調整する必要があります。
パフォーマンス目標は結果目標の評価と照らし合わせて評価するべきではなく、特に結果が望ましくない状況では怯えを生み出します。
反対に結果がポジティブな場合、パフォーマンスが良くなくてもそこの修正を怠りがちです。そういったエラーを避けるためにもパフォーマンスの評価は結果とは切り離して行わなければいけません。


強化

強化とは、チーム内で望ましい行動をより確固たるものにすること。つまりその行動の定着化、もしくは望ましくない行動をなくすことを目的としています。

基本的には、チーム内の望ましい行動には報酬を与えその行動を定着化させ、反対の行動には罰を与えその行動が減るように働きかけます。

この場合の報酬や罰について詳しい説明は以下の記事の「行動の強化ポリシー」の段落でしていますので、そちらもぜひ参考にしてください。

ただしこれは常に同じレベルで行われるべきではありません
報酬が望ましい行動のモチベーションになること、その反対に罰が望ましくない行動の予防原因となるとメンバーの主体性が失われてしまいます。

チームの初期段階では、報酬や罰により行動強化を図り、その後徐々にその存在を薄めていくことが推奨されます。

また、強化を行う際はリーダーが感情的に行なっているわけではないということをメンバーが理解することが必要不可欠で、そうでなければメンバーは公平性を疑ってしまいます

そのためにも、明確な基準を事前に設定しておく必要があります。


最後に

今回はリーダーシップの3つの局面のうち、一つ目のチームの生産性について紹介しました。

モチベーションやチーム内での人間関係をメインに、生産性は様々な要素に左右されます。

それらの要素を正確に把握し、状況を理解し、的確なアプローチをするためには、それぞれの概念を理解することが必要不可欠です。
今回紹介した内容がその理解に、そしてチームの生産性、パフォーマンス向上に役立てることを願っています。

次回はリーダーシップの3つの局面の一つであるグループの雰囲気について深掘りしていきます。

最後までお読みいただきありがとうございます。
ではまた、次の記事で!

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