#3 バルサスポーツ心理学: リーダーの役割とリーダーが取るべき具体的な行動
はじめに
リーダーの役割
リーダーとは、「他者の思考、行動、感情に影響を与える能力を持つ人物」(ガードナー1995年;ドシル、2004年、p231より引用)
と定義されるように、リーダーシップを定義する中心的な概念は影響力です。
リーダーがチームメンバーに与える影響は良いものもあれば悪いものもあります。ここで注意しておかなければならないのは、良い影響も悪い影響もリーダーが与える影響は常に大きいということです。
つまり、リーダーの言動によってチームは良くもなれば悪くもなるということです。そのため、リーダーはどのように影響を与えるか、リーダーという影響力のある存在にとって何が重要かを知っておく必要があります。
今回は、効果的なリーダーシップにおけるポイントと具体的なリーダーのタスクについて紹介していきます。
リーダーシップにおける5つの重要なポイント
以下、人々に影響を与える効果的なリーダーシップにおいて重要なポイント5つです。
1. リーダーシップはプロセスであるということ。
それぞれへの個別な存在へのリーダーシップがそれぞれ独立しているわけではなく繋がっている。チーム全体への働きかけはもちろん、個人個人への働きかけも非常に重要である。しかし、個人個人への働きかけもひとつのプロセスであり最終的には全てチーム全体に与える影響に繋がっていることを意識し、メンバーによって矛盾がないようにしなければならない。これは内容の矛盾だけではなく、継続的に一貫したアプローチをする必要性がある。
2. 個々の違いを尊重すること。
全グループメンバーに対して平等な振る舞いを取ること。
ただし、それは同じ言葉や同じ行動をとるという意味ではなく、同じようにスペースや機会を与えるということ。
そのためには、個々の違いを尊重する必要があるがそのためにはまず個々の違いを理解する必要がある。
3. 各チームメンバーの能力を最大限に拡大すること。
まず上の二つに取り組まなければならない。
その後、この第3の概念に取り組む。リーダーのよくあるミスとして結果にフォーカスして、この概念であるメンバーの能力を伸ばすということを忘れがちである。
結果は多くの外部要因に影響を受けるが、能力やパフォーマンスの向上は自分たちに完全に依存する。そこの向上こそがリーダーの存在意義である。
4. チームの方向性を定めること。
リーダーにはチームの方向性を定めることが求められるが、結果目標を定めるだけでは不十分である。
長期目標に加え、中期、短期目標を定めた上で、それを達成するための方法論や道筋を明確に示すことが重要である。
5. 楽しみに溢れた環境を作ること。
楽しい環境を作るためにリーダーは、ストレス管理、目標達成、人間関係の構築、トレーニング後のケア等の様々な要素を適切に組み合わせることが求められる。
楽しいという感情は、チームの努力に持続可能性をもたらし、チームの意思や取り組みの姿勢を高いレベルで維持する。
では具体的にどうすればいいのか。次に具体的にリーダーが担うべきタスクを紹介します。
リーダーの具体的なタスク
1.状況予測
リーダーが直面する問題の一つにビジョンの欠如というものがある。
リーダーの主なタスクの一つは前を見ること。常に先を見据え、状況、対立、浮き沈み、成就を予測する。これにはチーム内部、そして外部の様々な状況を把握する必要がある。
そして、リーダーは二つの視点を持たなければならない。
チームの内部の人間としてチームの能力、パフォーマンス向上に集中する視点。もう一つはチームから少し距離を置き、対極を客観的に把握する視点。
このリーダーの状況予測により、チームのパフォーマンス向上の可能性は大きく高まる。
2.行動指導
このタスクを実行するために必要になることは、
第一にメンバーの行動を完全に理解すること。
第二にその行動を管理する可能な方法を理解すること。
行動には2種類ある。
公的な行動と私的な行動。
公的な行動は他者が視覚的に認識できる行動で、私的な行動は目には見えない、あまり目立たない行動。また、思考や感情も私的な行動として定義づけされることもある。
よって、公的な行動だけではなく私的な行動にも注意を向けることを忘れてはならない。
思考は個人だけではなくグループ全体の相互関係にも重要な影響を与えることを理解しなければならない。
そして、それぞれのアイディアによってお互いが刺激を受け合う関係性は理想的であり、チームのパフォーマンスはアイディアの数と方向性に大きな影響を受ける。
つまり、より多くのアイディアが同じ方向を向いた時にチームパフォーマンスは向上しやすい。
行動における感情の役割
感情は個人が利用できるエネルギーの量を決定し、このエネルギーがポジティブかネガティブかを決定します。
例えば、楽しいという感情は大きく、そしてポジティブなエネルギーです。
では、チームのアイディアや思考、感情はどの方向に統一されるべきなのでしょうか。
2つの重要な指標は、パフォーマンスと結果です。
結果よりもパフォーマンスにフォーカスしるべきであるという事実の一方で、競争が必要だというのも事実。また、パフォーマンスと結果というのは補完的です。
これは「結果を出すためにはパフォーマンスを向上しなければならないし、パフォーマンスが向上すれば、結果も出やすくなる」と言い換えることができます。
どちらの視点も必要ではありますが、特に結果に目を向けたときは、チームメンバーの私的な行動(ストレス等)に注意をしなければなりません。
最後に
冒頭でも触れたように、リーダーシップというのはチームメンバーに影響を与えてチームの方向性を定めていくプロセスです。
そのプロセスを効果的に実行していくために、今回紹介したようなリーダーの役割、タスクを参考してみてください。
最後に触れた、行動選択に影響を与える感情には、チームの方向性が大きく作用します。
では具体的にどのように方向性を決めていくか。
方向性は目標と言い換えることができます。
次回は具体的な目標設定の仕方を見ていきます。
ではまた次の記事で!