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チョ・ナムジュ 著「ソヨンドン物語」

昨夜は夫が、フランスでの海外協力隊での任務を終えた高校の同級生が帰国されので、飲みに出かけました。

おかげで夕食時以降一人時間を自由に使えることができて、読み始めていたこの作品を読み終えました。

舞台はソウルにある架空の町〈ソヨン洞(ドン)〉。近年の不動産バブルやマンション購入、過剰な教育熱、所得格差といった社会問題が、住民の悲喜こもごもとともに描き出されーー資産価値にこだわる者の果てしない欲望と苦悩。持たざる者の苦労と、未来への希望。韓国中間層の現実をリアルに描いたハイパーリアリズム連作小説。

Amazon内容紹介

【目次】
春の日パパ(若葉メンバー)
警告マン
シェリーのママ、ウンジュ
ドキュメンタリー番組の監督、アン・ボミ
百雲(ペグン)学院連合会の会長、ギョンファ
教養あるソウル市民、ヒジン
不思議の国のエリー
作家の言葉
日本の読者の皆さんへ
訳者あとがき

チョ・ナムジュさんといえば、著書「82年生まれ、キム・ジヨン」がベストセラーとなり、多くの国で翻訳、映画化にもなったのでご存じの方も多いと思います。

私も韓国ドラマから韓国の文化に興味を持ち始め、音楽とともに文学作品として読んだのも彼女のこの作品が初でした。

今回は不動産ブーム、過熱化した教育熱、所得格差を、連作短編集という形で書かれています。

登場人物もソヨン洞のマンションを介してつながっており、意外な場面で意外な人物が再登場する。

「訳者あとがき」抜粋

このつながりと登場場面により、登場人物の人物像が変化するあたりも秀逸です。

そしてこの作品以降、彼女の作品の翻訳本が出るたび、読んできましたが、

この小説を書いている間はずっとしんどく、つらく、恥ずかしかったです。

「作者の言葉」より抜粋

と書かれていて、韓国の中間層の苦悩を著者自身が深く感じていることが窺えます。

「私が伝えたかったのは、個人ではどうすることもできない時代と社会の不幸を前に、我々はどんな選択をできるのか、どんな態度をとるべきかという悩み、さらには人間らしさを失わずに生きる方法に対する問いかけでした」

「日本の読者のみなさんへ」より抜粋

バブルがはじけて以降、地方では感じませんが、日本でも都市部では想像を超える金額のマンションが売り出され、子どもの教育も保護者の所得と比例していると聞きます。こういう問題提起が得意な著者ならではの作品は今後も楽しみです。

本書は2022年1月に韓国で刊行された作品です。

今年ハン・ガンという韓国の作家がノーベル文学賞を受賞しました。今文学の世界でもアジアの中で一歩先を行っている気がしますね。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今朝も寒かったです。週末です。秋を満喫できるといいですね。

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