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中と外の時間軸

「この前、○○というBARでカクテル飲んだけどあなたの作ってくれたものの方が美味しかったよ」

と言われることが稀にある。しかしそれを真に受けることはほぼ無い。
「本当にそう思ってます?」とか疑いたくなる捻くれた性格だ。とは言ってみるものの、僕も人の子である。どこか片隅では嬉しいと思ってもいる。
それでも。
コレってやっぱり考えてしまうのですよ。
「そのバーテンダー、幾つくらいでした?」
とか。
年齢が(上であれ下であれ)同程度であれば思うところはさしてないけれど、これが10くらい下のバーテンダーと比較されてしまっていたのであれば考えなければならないものがある。

歳で全てわかるわけでは無いけれど、やはりそれだけの差があると比べるのに経験値のバランスが良くないし、見た目が邪魔にもなる。
例えばあなたがあまり口に合わないカクテルをどこかのBARで飲んだ時、それを作ったバーテンダーが若かったら「まあ仕方ないか…」と思えるかも知れない。
良くも悪くも見た目は大事なのだ。言い訳にも評価にも繋げられる。

ただ、根っこの話として、飲み手が求めるのは”その時、その瞬間での一杯”(と、その他もろもろ−これを書くと大変長くなるので割愛)なので作ったバーテンダーが若かろうとそうでなかろうと実際は関係ないし、おそらく「仕方ない…」と思いつつ心底は思えないだろう。当然。
その時に口にしたものが美味しければまた訪れるだろうし、その逆ならその後の結果もまた同じくなる。
「カウンターに立ち、お金を稼いでいるのであればプロフェッショナル。”若さ”を理由に弁解はできない」というのは尤もである。だってそのグラスに対してお金を払っているのだから。

そういう意味では、その飲み手の好むものを作るどこかの−経験値も年齢もわからない−バーテンダーと比べられるのも止む無しと言わざるを得ないけど、やっぱりなんだかなあと思ってしまう。

僕なんかはどこまで行ってもカウンターの中の人なので、そういう評価は飲み手として当然と思いつつもできないのです。
歳若いということは今の自分と同い歳になるまでのアドバンテージがあるという考え方をする。
もし、どこかのBARで若いバーテンダーが作ってくれた1杯に僕が仮に首を傾げたとしても、その彼(或いは彼女)には僕の歳になるまでの時間があるのだから、それまでにまとめられればいいじゃないか、と。
カウンターの中と外ではそういう時間軸のズレが生じる。ひょっとしたらそう考えるのは僕だけかもしれないけど。

…今回の話、僕が若いバーテンダーと比べられた事を前提に書いてきたけど、自分より確実に歳上のバーテンダーと比べられ、冒頭のような言葉をかけられた場合はどうだろうか…きっと更に穿った、捻くれた見方をするだろうな。

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BAR illud
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