![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/99687150/rectangle_large_type_2_cf42af7921ba541570c7858cffab0d8b.jpeg?width=1200)
ほんじゃね。また会う日まで。
あっという間の恋をした人は義足の人だった。
下北沢の地下にある立ち飲み屋さんで友だちとその人は来ていて、また逢いたいなぁって思っていたら偶然その場所で再会できて、翌日には一緒に飲みに行っていた。
月島で待ち合わせをしてもんじゃを食べて、メインの大衆酒場は夕方からだからその時間まで缶酎ハイを買い込んだら隅田川の川辺りに座って、
夕暮れていく空と心地いい風とどんどん好きになっていく人が隣りにいて、私は楽しくててうれしくて仕方がなかった。
きっとだいぶ酔っ払った私たちはコの字型のカウンタに座って、その人はバンドをしていたしわたしも音楽が好きだったから沢山音楽とか色んな話をして、その人はわたしの名前を呼んでは酔っ払った顔で笑いかけてくれて、あんまり好きじゃなかった煮こごりもその人と食べたら美味しくって話は全然尽きなくて、
また逢いたいなぁ、いっしょに居たいなぁって思っていた恋は、彼の家に1度行って、彼が私の家に1度来て、そして、ぱちんと割れて、跡形も無くなった。
「パパはね、昔悪いやつと戦ったから足が無いんだよ。」
もしこの人といっしょにずっと居られたら子どもにはそんな話をしようなんて、恋の妄想列車は疾走していた。
あれからもう何年も経って、会社に向かう総武線で浅草橋を過ぎて両国駅へ向かう途中に一瞬見える隅田川が大好きで、きょうひさしぶりに降りてみた。缶酎ハイを片手に持って。
電車から一瞬見えるから好きだった。
あの人と並んでお酒を片手に眺めた隅田川が好きだった。
あなたの歌声で聞く吾妻さんのこの歌が
好きだったなぁ。
わたしがそれから何年も経って義肢装具の訓練校に行って、義肢装具の会社で今働いているということは、
そのまたつづきのお話。