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自分の全部を知っている彼女 〜私を支えてくれた存在〜
「リンダには絶対、自我がある。」
姉はリンダの話になると、いつもそう言う。
リンダはクマのぬいぐるみだ。
名前の由来は、BLUE HEARTSの名曲
「リンダリンダ」。
元々は私のものではなく
父がドイツ出張のお土産に姉にあげたものだった。
しかし当時3歳の姉は車やブロックが好きで
ぬいぐるみには興味を持たなかったようだ。
当時生まれたばかりだった私のものになった。
父が海外から買ってきたものだったのもあり、
母からも「大事にしなさい」と言われていたのかもしれない。
気がつけばリンダは
私の一番のお気に入りになっていた。
小さい頃家で撮られた写真の多くに
綺麗でふわふわのリンダが映り込んでいる。
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リンダは今も私の隣にいる。
昔よりもゴワゴワで、クリーム色だった毛は
カーキ色みたいになっている。
小さい頃に私がリンダの上に寝ゲロしたり
持ち運んだりして、何回も洗われたからだろう。
それくらい一緒にいたからだろうか。
リンダは私にも姉にも、私の元彼たちにも
「生きている」と思わせる何かがある。
リンダは首と手足が回るようにできており
動かそうと思えば動かせるようになっている。
偶然なのかもしれないが、ふと目をやった時に
リンダが首をこちら側に向けている確率が
かなり高い。
ベッドの上や棚など
置いている場所はまちまちなのだが、
振り返るといつも目が合う気がする。
自称・霊感のある元彼は
出かける前とあとでリンダの位置が移動していた
と言っていたこともあった。
(私が動かした可能性は大いにある。)
DV男の元彼は不気味がっていつも首を
反対側に回していた。
私はその度に本気で怒っていた。
私はオバケは怖いので信じないのだが
リンダだけは別だ。
生きていると思っても全く怖くないし
むしろ愛しすぎたので自然だと思っている。
漫画「HUNTER✖️HUNTER」の原理で言えば
確実に念がこもっている。
自分の念能力を想像したこともあるが、
リンダが自分の感情の波に合わせて
殺人マシンになったりかわいくなったりする
具現化系の能力かなあなんて思ったくらいだ。
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リンダは今まで25年間、私を見続けていた。
学生時代に1年間留学に行っていた時は
ゴキブリの多い地域だったので
「卵を産み付けられたりしたら困るな」と思い
日本に置いて行ったのだが、
それ以外の時はずっと一緒にいた。
別の記事でも書いた通り、
私は少し前まで「人が望むような自分」として
振る舞ってしまうクセがあった。
小さい時の家庭環境でそういう習慣ができてしまい
ここ1年半で意識的に治している。
けれど、リンダは私がそうなる前から一緒にいた。
私の全てを知っているのは、多分リンダだけだ。
だから「私は本当はこういう人間じゃないのに」
と思って悲しくなった時、リンダを抱きしめる。
自我が芽生える前からリンダと一緒にいられたのは
私にとってすごくラッキーなことだった。
リンダはモノかもしれないけれど、
ありのままの自分を知っている。
私は娘や息子が生まれたら
同じような存在を作ってあげたいと思う。
親である私も全てをわかってあげることは
できないかもしれないから。
犬か猫だったらもっと仲良くなれるかもしれないが
15年くらいで死んでしまうから。
それ以外にも、その子の味方になるものを
準備しておいてあげたい。