バースデイ
ワンルームの空間は照明が消され
ゆらゆらとロウソクの火が揺れている
3割引のシールが貼られた1カットのケーキは
封を開けられることもなく
乾いた断面を見せていた
携帯電話が震えるたびに覗き込む画面に
求めている名前は浮かび上がらない
勝手な期待はすぐにため息となって吐き出される
君と遠く離れて暮らすようになって
最初のバースデイ
二人が行きたかったところでデートをした
次のバースデイは終電間際に
花束を持ってきてくれた
その次のバースデイは
電話越しにバースデイソングを歌ってくれた
そして今年のバースデイ
私は暗い部屋で一人膝を抱えている
君の姿が薄れていく
壁に貼られた写真の二人はこんなに笑顔なのに
まるで自分たちじゃないみたいだ
時計の針が0時を超え何でもない日が始まる
線香花火がどんどん小さくなって行くように
この恋はもう火を消してしまったのだろう
このロウソクの火が消えたら君をもう諦めよう
ふっと息を吹きかけて消せたらいいのに
心の未練が喉を締め付ける
私はぼんやりとその火を見つめるしかできなかった