4DXは濡れる量が尋常じゃないので気をつけて。
「4DX」とは、映画劇中とシンクロした演出が行われ、まるで作品のなかにいるかのような体験ができるシステム(座席)のこと。
たとえば、主人公が炎に囲まれているときは熱風が観客に向かって飛び、険しい山道を下るシーンのときは座席が激しく揺れる。
もはやアトラクションだ。
私は2021年ごろに『ブラック・ウィドウ』というMARVEL映画を4DXで観に行った。
はじめての4DXだったので
映画開始前からドキドキしていたのを覚えている。
時間になり、映画がはじまる。
スカーレット・ヨハンソン演じる主人公、ブラックウィドウが縦横無尽にアクションをこなすので、座席も激しく揺れていた。
すごい、すごすぎる。
本当に映画のなかにいるような没入感だ。
私の視覚のみならず、そのほかの五感も映画に夢中になっていた。
そして、終盤。
とある爆発をきっかけに雪崩が起こってしまった。
巻き込まれる、ブラックウィドウ。
雪崩の冷たい風が正面から
すごい勢いで顔面にかかってきた。
やっば!!
それと同時に膝のあたりには
すごい量の水がかけられた。
えっ!水まで!!
じんわりと広がる濡れた感覚。
それは明らかにとんでもない量の水で、
「やりすぎだろ」と思うほどだった。
「このあとどうするんだ」と
少しムッとなりかけたとき
どこからか小さな声がら聞こえてきた。
「……ません」
「…すみません」
ん?となりの席を見ると、
40代くらいの女性が私に謝っていた。
彼女の手にはフタが外れたドリンク。
(なんだ、そういうことか…)
「4DX」の没入感あふれる演出によって
私のズボンはコーラ色に染まっていた。
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