昨日見た太宰治を殺す夢 #tanka
「糞野郎」呟く俺が包丁で刻むキャベツを心臓とする
万華鏡覗いて「似てる」と謂ふ君はいつも麻を吸いトリップしてゐる
行きずりの女の首を絞めた手で俺は犬猫を優しく撫でる
昨日見た太宰治を殺す夢もう死んでいて残念に思う
優しいと云はれるたびに包丁を突き刺す妄想しつゝ微笑む
黒猫が子を孕むころ死んだ目の俺は殺意を心に孕む
捕まえた弱いお前のはらわたを抉る幸せ 魚の話
堕ちてゆく壊れてもゆく俺の日々 あゝこんなとき無神論を呪ふ
生きてても意味ない俺が踏み切りでニヤリと笑う 夜汽車が通る
死にたいと云ってたお前が死ねないと云ふ では殺すのはどうかと俺が訊く
胎児には十月十日の旅をさせ死者は四十九日の幽閉
俺の血で生き長らえた蚊はどんな最期を迎え血反吐吐くのか
お前の血で非道く汚れたワイシャツと同化してゐるマルボロの箱
「殺すぞ」が口癖のお前が殺された俺は誰より高笑いした
戦争をとめようとせず声だけがでかいクズらの陰に隠れる
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?