立花 塵
歌詞や詩です
俺は蝉という存在を信じていない。 理由は明確で、一度も生身の姿を見たことがないからだ。 夏になると忙しなく響き渡るあの鳴き声も、本当に蝉が鳴らしているのだろうか?あんなにうるさいのに、俺は一度も蝉の姿を見たことがない。「うるさい」という言葉に当てる漢字は「五月蝿い」よりも「八月蝉い」の方が断然合ってる。まあ、蝉はこの世に存在しないが。 俺は自分の目で、確かに見たものしか信じることが出来ない。 だから東京事変の存在も信じていないし、モナ・ リザも信じていない。 信じているも
「糞野郎」呟く俺が包丁で刻むキャベツを心臓とする 万華鏡覗いて「似てる」と謂ふ君はいつも麻を吸いトリップしてゐる 行きずりの女の首を絞めた手で俺は犬猫を優しく撫でる 昨日見た太宰治を殺す夢もう死んでいて残念に思う 優しいと云はれるたびに包丁を突き刺す妄想しつゝ微笑む 黒猫が子を孕むころ死んだ目の俺は殺意を心に孕む 捕まえた弱いお前のはらわたを抉る幸せ 魚の話 堕ちてゆく壊れてもゆく俺の日々 あゝこんなとき無神論を呪ふ 生きてても意味ない俺が踏み切りでニヤリと笑
『166 Me』 一七十センチのあの子に恋をした四センチの差は遠く、遠く 『Theater』 君がその結いた髪をほどくのは劇場の席にもたれる時だけ 『Camera of Veronica』 「時をとめる力があるの私には」シャッターを切る君の口癖 『Disperse』 さくらさくら美しく散り美しく君の記憶の一部となろう 『Pray』 「来世でもずっと一緒よ約束ね」君の小さな小さな祈り 『Dream Seventeen』 微睡みが包む窓辺の夢のなか君は綺麗な
ペンデュラムウェーブみたいに揃ったりずれたり僕とあなたの寝息 ファインダーを覗いてわたしを撮るときの君のウィンクにずれる目線 コーヒーを飲んでる君の体温に近づきたくて貰うひとくち あなたから貰った服がいつの日かどうでもいい日の部屋着になった 騙されるふりが得意になったから映画を信じてみたくなった かたちだけ恋に似た熱に浮かされているだけ丸い気球みたいに 現実がドラマみたいに劇的で綺麗だったら冬は越せずに もう何もこの世に残せなくなったらサンクトペテルブルクにゆく
目を開ける。カーテンを開ける。太陽が照っている。 「太陽が照っても家から出なきゃ意味ないのにねー」とひとりで呟く。その言葉は虚しくも宙を舞い、秒速、たぶん100万キロくらいで俺の布団に落下する。その勢いと重みで俺は身動きが取れなくなり、さっきまで起きようとしてたのに、「こんなん無理じゃん」と思いまた目を閉じる。 目を開ける。カーテンを開ける。太陽が沈んでいる。 「ども、ども、太陽またね」とひとりで呟く。今度はその言葉が俺の口周りから風船みたいに膨らんでいき、そこに留まる。な
人は誰しも「欲しい」と望んでも手に入れられなかったものってありますよね。 大金や名声を筆頭に、豪邸、ブロンドの恋人、食洗機 etc… それらは、欲しいと心から願って努力しても中々到達できないことが多く、ほとんどが諦め、妥協できるポイントで満足して(した気になって)しまいます。 しかしながら、それらを手に入れている人達がいることも確固たる事実として存在しています。 私はそれを見ないふりしているわけではありませんが、どこか他人事のように感じてしまう時があります。 いえ、そう感じ
あたたかい色が似合うって言ったのに 君の爪の色はセルリアンブルー 「空とおんなじ色よ」って言ったから 「それもそうか」って笑ってみたりした 結いてる君のその長い髪の毛は どんな時にほどいて毛先を振るの 映画館のシートにもたれる時? それとも首のほくろを隠したい時? 思いがけずぬるい風が吹いた 君のプリーツスカートが揺れている 靴下を濡らして部屋を歩き つけた足跡の歩幅が君らしいね 煙突の煙でひこうき雲がみえないや だからいま君の瞳を見つめる理由ができた
酔った日に点滅してる青信号を急いで渡る君の可愛さ 痣だらけの僕の躰を眺めては「木漏れ日みたいで綺麗」という君 「これ見て!」と君のスマホを覗く時ぶつかる頭の音は煌めき 「電話したい」「嫌だよ」「なんで?」「夜中だもん」「分かった」「…やっぱ少しだけする?」 秋風が吹いてきたから君のこと忘れちゃってもいいんだよね? 死にたいと言ってた君が死ねないと言った夜、僕は死にたかった 永久歯抜けてしまった日の朝に吾子に生えし乳歯は輪廻のよう 禁煙を君がはじめてから壁の染みは
私は普段からカメラを持ち歩くようにはしているが、日常的に写真を撮るわけではない。むしろ撮らないことの方が多い。今日は撮るぞと意気込んで決めたとしても、結局は1枚も撮らないような日が何度もある。 しかし、ふとした時に「撮らなければ」と強く思う瞬間が訪れる。それは風景であったり人々であったり物体であったり様々なのだけれど、まるで神様の御告げのようにその時は突然降りかかり、その刹那に私はシャッターを切る。 瞬間の衝動を切り取ることは覚悟がいる上に失敗が多い。とてつもなくしんどい
僕らは反射している 透明な過去や現在や 少し遠い未来に 雨の音は静かに 脳細胞溺れさせる あの時みたいに サブリミナルのよう 君の裸は 黄色いサブマリンに乗って 君の瞳の中を泳いでみたい 僕らは傾斜していく 夕暮れの微睡みに 溶けていく部屋とアイス 君の匂いは確かに エンドルフィン満たされる これから先もずっと サプリメントのよう 君の口付けは アポロ何号かに乗って 君と僕の口の中だけが宇宙 僕らは愛を忘れる 黝い傷や嘘や 少し甘い涙で 僕らは愛を憶える カラフ
「私達これで最後よ 君との日々を永遠抱きしめるわ」 半袖シャツがなびいて胸元大きく開いた 「君の言葉は燦然と煌めくけど いつか色が褪せるわ」 波音が過ごした日々の色をさらって流れた ソーダのアイスが溶け落ちた 夕焼けも溶けて 翳りがシャツの染みを隠す どうか見つけないで 心はきっとまだ少し隠れていたいから 「私達はまた会えるけど それは二人のいのちが止まった時よ」 群雲の涯ての扉を開け放ってしまいたい 「どうか幸せであるように 君がいない街でそっと祈る
俺は不幸である。 不幸であるというか、幸せを感じたことがない。 これはなにも、「なんで俺だけいつも不幸なんだ…」とか、「ほら、俺はこんなにも不幸なんだよ」等のように、不幸自慢でも被害者意識をひけらかしたいわけでもない。 俺は物心が付いた時からなんとなく、うっすら、ずーっと不幸なのである。 不幸な人間だからこそ、俺はデフォルトとして真っ直ぐ純粋に、自暴自棄である。 全くもって「死にたい」とは思わないが、死にたさの測量計は常に目盛りを刻んでおり、喫煙や短眠・アルコールで
俺の名前はバナユキ。 どこにでもいる至って普通の会社員だ。 平日は仕事をして、休日は好きなことをして過ごす。 ささやかだけど、おおかた不自由なく毎日を過ごしている。 しかし、そんな俺にもひとつだけ悩みがあった… その悩みとは… ニキビや肌荒れが酷く、全くモテないこと 昔は綺麗な肌だったのだが、最近は仕事でのストレスが重なり、日に日に肌がボロボロになっていた。 そんな俺の顔を見て女の子はみんな、「肌が汚い人はちょっと…」と言い、遠ざけられてしまう。 どうしよう…このまま
本日、ナンバーガールが二度目の解散をする。 私は黄昏時にひとり佇み、煙草にそっと火をつける。 陽を輪郭に纏った群雲は、いつもより流れが速い。 流れの速さの原因は風か、時か、自転か。 それとも全てか。はたまた無か。 いつも見ている風景さえも、ナンバーガールに支配されている今日の日は世界の理や法則を無視して、私の情緒に付属する。 音楽を再生する。 音楽機からイヤホンに伝わり、耳介に伝導する。そして鼓膜を通った音楽を蝸牛が感知し、やがて脳に伝わる。 頭の中の思い出が蘇る。
「なんで彼女と別れたの?」と聞かれるたびに、聞いてきたやつの顔面を8発ほど殴りたい衝動を抑え、「価値観の違いで〜」「俺が自分勝手で〜」等とよくある言い分を話し、毎回死にて〜と思いながらも気丈に振る舞い、「女の人紹介してくださいよ〜誰かいないんすか?合コンしましょ〜」と全く思ってもいない言葉を発し馬鹿なふりをする挙動まで含めて、はじめて『失恋』と呼ぶのであれば、俺はもう二度と恋愛なぞしたくない。極めてだるい。 よく考えれば、恋愛というシステムは意味が分からないことばかりだ。
軽朝、目が覚め、ふと窓の外に目をやると、ユテームグロスのオミエをビリビリに引き裂いている人が見えた。 まさか、そんなことが人間に出来るなんて…… そもそも、こんなこと、人類には不可能なはずだ。 サイカムエテボやマイログフェティなら100歩譲って分かる。あの、ユテームグロスを素手で、だ。 私は夢を見ているのかと思い、もう一度枕に顔を埋める。その間、ワイコームなことばかり考えていた。 今一度、ユテームグロスのオミエを引き裂くことが出来るか考えてみる。 東京極学校時代、私は工学エテ