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「教養としての金融危機」宮崎成人著
「教養としての金融危機」宮崎成人著・講談社新書2022年1月発行
著者は1962年生まれ、財務省副財務官を経て、現・三井住友信託銀行顧問。
国際金融の歴史は一つの物語である。細部にこだわるより大まかな真実が大事。国際金融とは国を越えた資金の流れ、円滑なときは問題はない。しかしほぼ10年に一度、歪みが蓄積し、機能不全に陥る。
本書は過去100年間の9つの危機を振り返り、その過去の教訓に学ぶ書である。
9つの危機とは
①1930年代大恐慌
②1973年ブレトンウッズ体制の崩壊による変動制相場へ変更
③1978年ドル暴落のドル危機
④1980年代日米貿易摩擦
⑤1980年代ラテンアメリカ発展途上国の債務危機
⑥1997年アジア通貨危機
⑦1998年LTCM破綻によるヘッジファンド危機
⑧2008年9月リーマンショック⑨2010年ギリシャ危機に始まるユーロ危機
次の危機はいつ来るか分からない。コロナ危機、公的債務累積危機、資産暴落危機かもしれない。
どちらにしてもブレトンウッズ体制崩壊、ドル基軸通貨による米国の経常赤字、米国経済成長依存の世界経済が限界にきているのは事実である。
EU危機も、ユーロ体制の持つ基本的な制約が影響している。政治理念優先が経済的合理性を歪曲させている可能性がある。
ウクライナ問題はEUを結束させた。一方で地政学的リスクは拡大している。
ヘッジファンド、デリバティブ等金融技術高度化は一つの国家のみならず、世界的金融危機の再来リスクを拡大させる。
各国は財政の制約から中央銀行の金融政策に依存しがちである。それゆえに中央銀行の役割、責務は今まで以上に重視される。
2021年ユーロ危機を救ったECBドラギ総裁の言葉は一つの教訓となるだろう。
アイルランド、スペイン危機へ繋がるとき、「ユーロを救うためECBは何でもやる!」中央銀行の一言、その覚悟がユーロを救った。
市場との対話、説明、納得が金融、経済でも大切である。中央銀行の信頼が失われたとき、その国の経済、金融は危機となる。
「経済、金融にとって何が今必要であるか?」「市場との調整がうまくできるか?」固定した頑固な考えでなく、臨機応変的柔軟な金融政策こそ、今求められている。
本書は国際金融を学ぶ基本書として最適である。国際金融は訳の分からない魔物ではない。
その国のマクロ政策が規律を確保しつつ、金融のリスク管理を強めれば、成長の速度は多少落ちるが、金融危機は減る。元々金融危機とは、その原因が極めてはっきりしたものである。