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「みずほ銀行システム統合・苦闘の19年史」

「みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史」著者・日経コンピュータ編集・日経BP発行

みずほFGは、2019年3月期6,800億円の減損処理をした。大半は次期システムのソフトウエア開発費である。次期システムとは「MINORI」である。みずほFGはシステム投資に4,000億円超の投資を投入した。

著者は、2002年4月1日のみずほ銀行開業日のATM障害、口座振替システム障害。そして2011年3月14日の大震災義援金振込障害から10日間の大規模システム障害の経過を明らかにする。

1999年8月一勧、富士、興銀の三行合併発表に始まる旧三行のシステム統合計画の失敗、新勘定系システム「MINORI」開発までの19年間のシステム開発の歴史をたどる。同時にシステム統合の問題点を明らかにする。

新聞記事では合併各行の対抗意識、縄張り意識とか、各行のシステムが別々であることに原因があると報道された。しかし別個のシステムそのもの、またはITベンダー各社に問題があるわけではない。

第三者委員会は四つの原因を挙げている。①無理なシステム統合をさせた経営陣のIT軽視、IT理解不足。②システム運用の不手際。③システムリスクのチェック、監査の不十分さ。④危機対応能力の欠如。

著者は、真の原因は経営の企業統治の問題であり、システム部門等の各部門の責任ではない。むしろ現場は精一杯努力した。障害の原因は経営陣のガバメントに大きな責任があると言う。

この本を読むと、今起きている日本のコロナ対策の政府対応に同じ危うさを感じる。他山の石とすべきである。

即ち、緊急対応の遅れがトラブルの拡大を招き、トップの危機管理能力不足、リスク管理軽視、問題先送り体質が大きな国家的損害をもたらす。

システム更新の成果についてみずほの担当役員は言う。「人が育った」と。確かに19年間の苦闘の結果、多くの行員の足腰は強くなり、個々の能力も向上しただろう。

システムは稼働と同時に陳腐化が始まる。そして想定外の障害、災害は必ず発生する。みずほ経営陣の危機能力、統治能力は十分に育っただろうか?

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