見出し画像

孤独と芸術 14

原意識まで潜る―考察

 では、どのようにして原意識から“美”を物質世界に落とし込むのか。その為には、芸術家たちは顕在意識よりさらに深い意識へと目を向ける必要がある。
 もうここからは科学的な根拠も私が実際に経験したこともない話になる。しかし、それは太古の昔から今にかけても人類の歴史の中で古今東西問わず、ずっと普遍的に起きていたことなので想像するに容易いのではないかと思う。
 さて、芸術家たちの生涯を追ってみると、その多くは幼少期、特に家庭に大きなトラウマを抱えている者が多かったりする。後述するが、この幼少期の環境は人格形成に多く影響を与え、精神的な病・障碍は実はこのときのトラウマが克服されないまま異なる形で現れているものなのではないかと私は考えている。もちろん、環境だけでなく先天的な性格(癇癪持ちなど)によって精神的に不安定な者も多い(フィンセント・ファン・ゴッホ、太宰治など)。
 実際に、ハンガリーの精神科医ケーリ(Szabolcs Kéri)は、創造的な人と統合失調症の人には共通する“neuregulinl”という遺伝子の変異があることを突き止めた。この遺伝子がある人は、統合失調症になりやすい反面、豊かな創造性があることを示す。【日経 サイエンス 2013年 06月号 天才脳の秘密 より】

 先ほど述べた「孤独感」。私はまさにこれが創造の原動力になると考えている。
意識が別個に存在する(と錯覚する)顕在意識にあるとき、人は誰とも完全に分かち合えることができないという「人は生まれながらにしてみな孤独」だということを悟る。

画像1


 しかし、潜在的には全てのものは一つだということ知っているので、本能的に他者とわかり合おうとする。本能的に求める他者との繋がりとは、顕在意識のみでの繋がりではなく、もっと深い関わりを求めることである。

画像2

 それを手伝う手段が大きく分けて二通りある。一つは、瞑想・ヨガ・修行などで長い時間をかけて精神統一を行うこと。悟りの境地に達すると、人は「自我がなくなる(すべては一つという考えになり、自我は全体の中に溶け込んで一体となる)」、「欲がなくなる」、「『今』しかなくなる(未来も過去も思考によってのみ生まれるものであるため)」といったことが起こると語る。この「自己感覚がない状態」は、同時に「万物と一体になる感覚」であることを表す。私は、この“悟りに達すること”を、原意識への到達そのものなのではないかと感じる。(しかし、私はまだ悟りを開いていないので未知の世界である)
 そして、そのもう一つは、麻薬などといった薬物の力を借りていわゆる“トリップ”することである(もちろんこちらも未経験なので未知の世界である)。日本での幻覚剤の使用は法律上禁止されているが、ここではひとまず麻薬の使用に関する善悪の観念は隅において頂きたい。
 先ほど挙げた「瞑想」「ヨガ」などといったものと「麻薬」というものは一見、正反対に位置するもののように思える。しかし、頭ごなしに情報をシャットダウンせずによくよく調べてみると、それらは酷似していた。
 その中の一つ、幻覚剤を使用した者に起きる「自我の死」という現象がある。

―「最初は自分が死ぬという感覚に恐怖を感じるものの、徐々にトランス状態に入り、自分という感覚の全体が消え失せ、後には何も残らないといいます。ただ、自分という存在が溶けて、宇宙の存在のすべてとつながっているという超意識を感じるのです。
【‘Ego Death’ Is the Trip Competitive Psychedelic Users Are Chasing
https://news.nicovideo.jp/watch/nw4208295 より引用】

 まさに瞑想によって達する悟りの境地と同じようなことが幻覚剤の使用でも起きていることが経験者の話から推測できる。

―自我の死には必ずしもLSDやマッシュルームなどの幻覚剤は必要なく、精神的な瞑想によっても経験できるといいます。自我の死は、仏教においては「涅槃」と呼ばれ、長い間の厳しい修行によってやっと到達できる領域なのです。

―元心理学研究者で、幻覚剤の支持者であったティモシー・リアリー氏は、自我が死滅する体験を「完全なる超越」と表現しています。「そこは言葉も、時間も空間も、そして自己すらも超越した世界。ただ純粋な超意識と恍惚な自由に包まれているだけなのです」。

 調べれば調べるほど、「悟り」と幻覚剤使用による「自我の死」の相関は次々と発見できた。この意識の変化は、脳の機能と結びつけると理解が容易い。通常の状態では、脳はフィルターを通して多くの情報を処理し、統合・統制している。しかし、幻覚剤を使用して“ハイ”になった状態では、このフィルターの部分が外れ、普段では素通りするような些細な情報でさえも直接脳を刺激するようになる。
 スピリチュアル的観点から見ると、脳の役割はチューナー(受信機)である。普段の生活では、脳の周波数は物質世界に合わせているため霊的な存在は見えにくくなっている。
 しかし、麻薬を使うと脳内ホルモンが乱れ、受信機が正常に動かなくなり、違うチャンネルに繋がっている状態になるのである。
 又、科学者たちはfMRIスキャンなどの最新技術を使って、瞑想中の脳内でなにがおきているか、より深い理解を得ようとしてきた。こちらも同様に、瞑想中の脳は普段行っている「情報処理」が停止している状態であることがわかっている。
多くの成功者は(瞑想によるものだとしても、薬によるものだとしても)この経験を有しており、スティーブ・ジョブス氏も自身の伝記で若い頃はマリファナやLSDを毎日使っていたと明かし、このように綴っている。
―「LSDの摂取は、人生で行ったことの中で最も重要な2-3の出来事のうちのひとつだ。サイケデリックの経験がない人には、まったく理解できないだろういくつかの事柄がある。」【伝記 スティーブ・ジョブス より】

 瞑想と同じような効果を期待できる幻覚剤。幻覚剤への依存から脱するためにヨガや瞑想を行い、精神の安定を得る者もいれば、真の悟りとは何かを自身が知るために幻覚剤を使用する僧や宗教家もいる。又、双方の効果を相乗的に生み出すため、大麻ヨガなどといった合わせ技も存在している。
 実は、今世界では次々に大麻をはじめとする薬物の解禁・合法化が進められているのだ。私は、法律をないものとしたとき、薬物の使用については否定も肯定もしない立場である。しかし、僧などが長年の修行を積んで辿り着く領域にそれほど簡単に行き着くというのであれば、やはりそれほどの代償がある。それが「依存」だ。


いいなと思ったら応援しよう!