地元の人の家でサウジアラビア・ナジュラーンの郷土料理ラクシュをご馳走になる(ナジュラーン料理/サウジアラビア料理/アラブ料理)
サウジアラビアの最南端にあるナジュラーン地方
ナジュラーンはサウジアラビアの南西部にあり、イエメンと国境を接しているため、イエメン文化の影響が大きい地方です。
https://goo.gl/maps/wbKDKp6AbphGDKSw5
実際、1937年まではイエメンの一部で、ナジュラーン地方の中心都市もナジュラーンと言いますが、イエメンとの国境まで10数キロと言う近さです。
中心部であっても、賑わいがありつつものどかな雰囲気ですが、近年では急激に人口が増えています。
街でイエメン人も結構見かけたり、ナジュラーンの人の性格もとても親切で、良い意味で田舎気質な所がイエメン人に似ているなと感じました。
サウジアラビアと言うと、石油王だったりギラギラした(笑)イメージが強いかも知れませんが、おそらくそれは首都リヤドのイメージに近いかと思います。
歴史的にはナジュラーンは、アラビア南部から地中海にかけての古代の交易ルートの中継地として栄えていて、乳香やインドの香辛料、宝石などが取引されていました。
乳香とは、熱帯地域に育つ常緑低木であるカンラン科ボスウェリア属の樹脂の塊で、お香のように焚くととても良い香りがします。オマーンやイエメン、東アフリカが乳香の産地として有名です。
可愛い泥作りの家
ナジュラーンと言えば、可愛い伝統的な泥作りの家が有名で、行く前から私の中のナジュラーンのイメージは泥作りの家とヤシの木でした。
わざわざ探さなくても、町の中で自然と泥作りの家を見つけることが出来ます。
手が加えられてまだ実際に人が住んでいる家や、泥作りの家の隣に新たに現代風の家を建ててくっつけている家、もう住んでいないけど自分の祖父が住んでいたから残されている家など色々あって、見て回るのがとても楽しかったです。
ちなみに泥作りの家は、サウジアラビアのアスィール地方(南西部、ナジュラーンの北)、イエメン北部やその他マーリブ(イエメン西部)でも見ました。
ナジュラーンにはムスリム少数派のシーア派がいる
他に面白い点と言えば、ナジュラーンにはムスリムの中で少数派であるシーア派(イスマーイール派が多いが、ザイード派も少しいる)が住んでいることです。
サウジアラビアでは、国教はスンニ派(その中でも最も厳格なワッハーブ派)であり、シーア派は信仰、教育や修業を含むあらゆる場面で差別の対象となっています。
サウジアラビア東部にもシーア派(十二イマーム派)がいますが、人権と言う観点からはナジュラーンのシーア派に対する扱いは東部よりも10年位遅れています。
また、現在はいませんが、かつてナジュラーンにはユダヤ教徒やキリスト教徒もいました。
ナジュラーン料理の特徴
ナジュラーン料理は、イエメン料理の影響が強いこと以外に、メインディッシュの中に小麦粉を含むことが多く、他にはミルク、蜂蜜、デーツもよく使われます。中にはスープや野菜を含むものもあります。
地元の農家によって育てられている小麦粉(ナジュラーン地方の主食)が使われており、ナジュラーンの農業の歴史は長く、4000年と言われています。
もちろん主食としても食べられますが、メインディッシュの中に、パンや小麦粉を手で押し固めてボール状にしたものなど、小麦粉を使ったものが入っていて、別添えではない所が面白いです。
また、家庭で食べる時やお祝いの時には、ラクシュ(後で詳しくご紹介します)など郷土料理の一部はマトラフ(アラビア語でمطرحと聞こえました)と言う、蓋の付いたカラフルな籠のような入れ物に入れて出されます。
お隣のアスィール地方でも使われますが、ラクシュのためではなく、炒め物やスープを作る時に使うと聞きました。
こちらはAl Qadahと言う、革の紐でデコレーションされた木製のボウルで、小ぶりなスタンドと言う見た目です。
Al Wafdと言う、手でお椀型に成形した厚焼きのパンをお肉のスープに浸した料理を出す時に使います。
ちなみに下の写真はイエメンのオールドサナアで見かけたものですが、やはりデザインがかなり似ていますね♪
街で見かけるのはナジュラーン料理と言うよりサウジアラビアどこでも食べられるような、アラブ料理(サウジ料理、イエメン料理が多い)のレストランやフライドチキンなどのファーストフード系が多いです。
なので、ナジュラーン料理を食べたい場合はお店を事前に探すか、現地の人と仲良くなって家庭料理を食べさせてもらうのが良いと思います。
地元の人の家でラクシュをご馳走になる
ナジュラーン料理の中でも最も有名なラクシュと言う食べ物を食べたいと思い、行く前に色々リサーチしましたが、マトラフ(可愛いカラフルの籠の入れ物)まで一緒に出してくれるお店は確か2,3軒くらいしか見つかりませんでした。
実際にナジュラーンに着いた後、街の人にどこでマトラフ付きで食べられるかを聞いてまわった結果、親切な人がお昼に家に招待してくれることになりました。
ラクシュ(Raqsh, رقش)は、通常、全粒小麦で作った薄いパンのことを言いますが、そのパンを使った料理名のことも全部「ラクシュ」と言います。
なので色々なバリエーションがありますが、一番愛されているラクシュがこのような見た目のタイプです。
主に冬やラマダーンなどのお祝い時、休日に多く食べられるもので、下に何層もの薄いパン、その上にお肉、茹で卵、生のピーマンやレモンにフライドポテトを載せて完成と言う不思議な料理です。
今回は羊とピーマンですが、チキンときゅうりなどのバージョンも見かけました。チキンの方がメジャーな気もします。
ちなみにお昼に誘ってくれたご主人はピーマンが嫌いで避けており、私は旅行中でビタミンが必要だったため優先的にパプリカを食べたく、なんだか上手く収まりました(笑)
昔の海賊はビタミン不足で病気にかかったり、亡くなったりしていたので、特に長期で旅行をしている人はビタミンはしっかり摂りましょう☆
作り方ですが、ラクシュをカットして、Al Madhanと言う石の鍋に敷き詰め、お肉と野菜(ニンニク、玉ねぎ、じゃがいも、トマトなど)から取れた出汁のスープを注ぎます。
完成時には、スープが完全にパンに染み込んでいて、スープを飲んでいる感覚はありません。パンは硬くもなく、柔らかすぎもせず、と言う感じの硬さです。
味は優しく、出汁とスパイス(黒胡椒、クミン、ターメリック、乾燥コリアンダー、赤唐辛子などをお好みで)、少しの塩(スプーン小さじ一杯)で味付けしていて、全く癖がなく、お腹が重たくなることもなく消化にも良かったです。
お肉の骨の部分まで黄色く、ターメリックが良い色を出しています。
ラクシュに限らずサウジアラビア人は手で食べることが多いですが、私は手に日焼け止めを塗っていて石鹸でも落ちるか微妙だったため、スプーンで食べました。
他にはお肉とスープのみのラクシュや、ギーとミルクを使った甘いバージョンのラクシュもあります。
夜ご飯の時もわざわざまた呼んでくれて、その親切さは少しイエメンっぽさを感じました。
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