スパイスたっぷりでイスラム教徒とキリスト教徒の影響を受けたケララ料理(南インド料理/インド料理)
アーユルヴェーダ発祥の地であるケララ州
ケララ州はインドの最南端、南西部にあり、緑が多く、インド人の中でも観光地として人気があります。
インドの伝統医療「アーユルヴェーダ」の発祥地としても有名で、本格的なアーユルヴェーダリゾートがあります。
また、ケララ州は教育レベルが高いことでも有名です。識字率が高いことを知っていたので調べてみたら、インドで一番(96.2%)でした。となると治安も自然と良さそうですね。
他に、ケララに伝わるインド古典舞踊カタカリをご存知でしょうか?(カタックダンスと名前が似ていますが別物です)
元祖顔芸と言いますか(違いますね笑)、目や顔を動かしたり、顔に仮面のように緑のペイントを塗り、カラフルで裾が広がったスカートのような衣装を着て踊る、とても面白いダンスです。
初めて見た時はなんて可愛い衣装なんだろうと思いました☺️
カタカリのイラストのパッケージの紅茶もあって可愛いです。
中東に出稼ぎに来ているインド人はケララ出身が多い
中東には出稼ぎで来ているインド人が多いですが、ケララ出身が多いです。
単純に彼らはより多くのお金を稼ぐために来ており、中東では国籍や永住権を得ることは難しいため、より住みやすい土地を求めてインドの他の場所に行ったり、また別の国に移住をしたりします。
中にはケララに帰って豪邸を立てたと言う話を聞いたこともあります。
もちろん、そんな良い話ばかりではなく…。
カタールでは、交通事故で過失致死を起こしてしまった場合は200,000カタールリヤルを遺族に支払うのですが、以前、出稼ぎに来た人たちがシャツのポケットに遺族の電話番号を入れて車に突っ込むケースが結構ありました。
そのため、カタール政府はポケットに電話番号が入っている場合は賠償金の支払いをしないことにしたという経緯があります。(確か2014年位)
出稼ぎに来ているインド人が一番多いからだと思いますが、インド人が多かったと聞きました。
中東でお馴染みのルル(ハイパーマーケット・小売チェーン)ですが、ケララ出身の人がオーナーです。
こちらはHamad Hospital駅に近いルルですが、左側に見える黄色いライトアップはやはりスパイラルタワーをイメージしているのでしょうか。
ちなみに場所はこちらです。
ドーハでインド系の食材や調味料を色々まとめて買いたい時は、ルルかサファリに行きます。でも野菜や果物を除いた輸入系食材はカルフールの方が安いです。
南インド料理の特徴
南インド料理に属するケララ料理をご説明する前に、簡単に北インド料理と南インド料理の違いをお話しします。
北インド料理はどんな感じかと言うと、恐らく皆さんが知っているインドのカレーです。(ざっくりしすぎですか?笑)
日本にあるインド料理のレストランは大体が北インド料理です。(※数年日本に帰っていないので、もしかしたら最近は日本では南インド料理のお店も増えているかもです。)
誰でも知っているナン、タンドリーチキン、バターチキンやパラクパニール(ほうれん草とカッテージチーズのカレー)など全て北インド料理です。
一方、南インド料理は北インドに比べて味付けが辛い、酸味がある、カレーもシャバシャバしている、主食はお米、シーフード、ココナッツミルクも使うなどの特徴があります。
南北のカレーのテクスチャーの比較のために、下の写真は南インドのフィッシュカレーで、その下が北インドのバターチキンカレーです。
上のカレーはスープっぽいのに対し、下のカレーはドロッとしているのがわかるでしょうか。
ケララ料理の特徴
そんな南インド料理に属するケララ料理ですが、ケララ州は「スパイスの土地」として知られています。特に胡椒が有名です。
ケララから近い、スリランカも800種類以上のスパイスがあると言われ、高温多湿な気候はやはりスパイスに向いているのでしょう。
スパイスと言えばインドを連想する人が多いですが、あくまで私の味覚に頼ると、インドを1とするとスリランカはその1.5倍くらいのスパイスを料理に使っているような気がします。
初めてスリランカでSoo Chaiと言うブランドのマサラチャイを飲んだ時は使われているスパイスの多さに驚きました。色々スパイスが混ざっていて口が渋滞と言うような。
他に、高温多湿で、美味しいスパイスと言えば、カンボジアにあるケップの胡椒もとっても美味しいですよね!
スリランカ料理を食べたことがある人は、スリランカ料理をイメージするとケララ料理に少し近いと思います。(スリランカ料理の方が辛いです)
何とケララは紀元前 3000 年のシュメール人の記録にも記載されていて、古くから中東、そして中国からも人も集まる、香辛料貿易の中心地でした。
シュメール人は、世界史で一番初めに出て来る民族で、今のイラク南部にいました。楔形文字と目が大きくて有名です。
その後も、大航海時代にポルトガル人が拠点を築き、続いでオランダなどヨーロッパ各国が上陸し、香辛料だけでなく、象牙やチーク材(船舶・家具に使われる)の交易が始まりました。
このような歴史背景があり、ケララ料理は南インド料理をベースに、イスラム教徒(アラブ、トルコなど)とキリスト教徒(ポルトガル、オランダなど)、それぞれの料理の影響を受けています。
ケララのムスリムをマッピラと言い、マッピラ料理はケララとアラブの食文化が融合していますが、その見事な融合した食べ物の例としてよく挙げられるのがPathiri(米粉で作ったパンケーキ)です。
アラブ人は主食としてパンを食べますが、ケララ人は主食のお米なしの食事は考えられません。したがって、米で作られたパンのようなPathiriが生まれました。
他にはイエメンのマンディに似たKuzhimanthiや、アラブ諸国等で食べられるハリースに似たAleesaがあります。
また、キリスト教徒の場合はポルトガル料理の影響で豚肉も食べ、(中南米原産の)唐辛子、タピオカ、シチューなどポルトガル人が元々ラテンアメリカから取り入れた食べ物がケララ料理にも影響を与えています。
こちらはタピオカをマッシュして作るカッパと言う料理で、お米の代わりとしてカレーなどと一緒に食べられます。
ケララにもベジタリアンは多くいて、影響をより多く受けたのはノンベジ(ベジタリアン以外)料理です。
有名なケララ料理(南インド料理)
ケララ料理と言えば、何もよりもまず、20種類前後のおかずやご飯、デザートが載った豪華なサッディイヤ(Sadya)が有名です。実際にケララ料理のレストランでも食べて来たので、後でご紹介します。
結婚式やお祭りの時(OnamやVishu)の際にはサッディイヤはもちろん欠かせず、特に夏に開催されるボートレース(Vallam kali)のお祭りの際には64種類以上の品目数となるようです。
動画で100種類のサッディイヤも観たことがあり、用意するのが相当大変そうだなと思っていたところ、やはり前日からご近所さんも総動員して皆んなで一緒に作るそうです。
元々サッディイヤはベジタリアン(つまりヒンドゥー教徒)の料理でしたが、現在ではノンベジの人達にはお肉や魚が入ったサッディイヤの方が食べられています。
Onamなどお祭りの際には伝統的な慣習に従い、完全にベジタリアンのコースで出されることが多いですが、ケララ北部ではコースの中の割合としては少ないけれどお肉や魚も含まれることが多いです。
・朝ご飯
朝ご飯には、ドーサ(クレープご飯)、イドゥリ(蒸したライスケーキ)、ホッパー(お米とココナッツミルクで作るクレープ)、ストリング・ホッパー(麺料理)、ピットゥ(米粉とココナッツの蒸し物)やPathiri(米粉で作ったパンケーキ)が食べられます。
これらはケララだけでなく南インドや(特に北)スリランカ、一部はパキスタンでも食べられています。
特にドーサはインド全体で食べられていて、上記の中で最も知名度が高いです。
ドーサは見た目や薄さなどは日本のクレープに近いですが、もっとカリッとしているものが多く、ドーサを作る際の生地だけでなく、鉄板(Tava)の温度や調理時間等により、それぞれお店のこだわりがあります。
ドーサを出すお店ならまずあるメニューであるマサラドーサは、中はジャガイモのカレーが入っています。
また、ドーサは油やバターで作られるので、日本人の感覚ではドーサは見た目とは裏腹にかなり重めのではないかと思います。
ドーサの生地にアレンジ(全粒粉、セモリナ粉、黒砂糖、玉ねぎ等)を加えたり、中の具材(マッシュルーム、卵、パニール、ほうれん草等)も色々ですが、私のお気に入りはギーが使われたドーサです。
マサラはミックススパイスと言う意味です。
こちらがイドゥリで、お米ともやし豆(ウラド豆)で作った生地を発酵させて蒸したものです。
豆の味はあまりせず、発酵させていますが酸味もそんなに強くないです。
日本の餡饅の、餡以外の部分(名前何て言うんでしょう)よりはどっしり&もっそりという食感です。アフリカのウガリよりは全然軽いです。
ちなみに、イドゥリの右隣にあるドーナッツのようなものはヴァダ(Vada)と言う揚げスナックで、しょっぱいドーナッツと言う感じです。
レンズ豆やじゃがいも、サゴヤシ(大型のヤシで、幹からでんぷんが取れる)などから作られます。私のお気に入りは中に青唐辛子やブラックペッパーが入っているものです。
南インド系のスナックの中ではヴァダが一番好きかも知れません、甘いカラクティーとの相性も抜群です☆
カタールのケララ料理レストラン「MRA」でサッディイヤを食べる
カタールのドーハにケララ出身のオーナーが開いたチェーンのケララ料理レストランがあります。
ケララ料理以外にもインド料理全般や、ケーキやスイーツも食べることが出来るお店で、初めてケララ料理のお店に行く時にハードルが低くて良いのではと思います。
例えばこのグジャラート料理のお店はもう入った瞬間から店内がインドの香りがして、中級者〜向けです。
MRAのお店には「Flavor of Malabar」などと書かれていますが、Malabarとはマラバール海岸のことで、中東でお店の名前にMalabarが付いていたらまずケララ料理店のことです。
まずはソルティーラッシーを飲みます。
日本のインド料理レストランでも砂糖入りのラッシーはマサラチャイの次くらいに人気のある飲み物ですね♪
ヨーグルト、牛乳(とクリーム)を水と割りますが、かなりドロドロした固形に近いラッシーからサラサラのラッシーまで色々です。
たくさん食べるのでサッパリしたいと思い、塩が入ったラッシーにしました。MRAのラッシーはサラサラ系でした☆
早速メインのサッディイヤが出て来ました!
サッディイヤ(സദ്യ) はケララで生まれた料理で、マラヤーラム語を母語とするマラヤーリ(ケララに起源を持つドラヴィダ人の一派)にとって、とても重要なご飯で、マラヤーム語でサッディイヤとは「ごちそう(や宴会)」と言う意味です。
名前の通りすぎますね(笑)
通常バナナの葉の上にご飯が盛られ、ボリュームがあることからランチに食べられます。
今回はシーフードのサッディイヤで、スープ、カレー、炒め物、焼き魚、魚のフレークなどほとんどのメニューにシーフード(魚、エビ、イカ、蟹)が使われていました。
レモンのピクルスとデザート、ライスを除いて16種類が入っていました。
これは別のレストランで食べたパヤサムです。
こちらは同じくシーフードメインの南インドタリーです。
これでも豪華ですが、サッディイヤの後だと普通に見えますね(笑)
ケララのお米が使われていますが、バスマティライスとは全然違います。
MRAにはしっかりと北インドタリーもあり、こちらはバスマティライスが使われているので、違いがわかりやすいかと思います。
…と言いつつ写真ではわかりにくかったので、北インド料理のお店で食べたバスマティライスを載せておきます。
北インドタリーにはチャパティも付いてきます。
インド料理と言うとナンのイメージが強いですが、北インド料理で、さらにどこでも気軽に食べられる食べ物ではなく、中級以上のレストランで出されています。
では(北)インド人が日常的に家庭で作るパンは何かと言うと、ナンではなくチャパティです。ナンを作るのには窯が必要なのと、チャパティに使われる全粒粉は精製された小麦粉(ナン)より安価だからです。
チャパティの方が消化に良いので、私はチャパティ派です。
余談ですが、カタールでは、インド料理と言えば南インド料理が多いですが、(軽食だけでなくちゃんとした料理を出す)レストランでは、南インド料理のレストランであっても南インド料理だけでなく、代表的なメニューに関しては北インド料理のメニューも用意されていることが多いです。
ただし、やはり北インド料理をメインに出すレストランの作った料理に比べると、少し南インド料理風な北インド料理に感じます。(言いたいこと伝わりますでしょうか笑)
余談ですが、MRAはチェーン店ですが、行く度に味付けや量に結構差がある気がします。
毎回美味しいので問題はないですし、「カタールあるある」と言ってしまえばそれで終わりなのですが(笑)
これは違う日に行った時に出されたマライ・コフタと言うクリーミーで濃厚なベジタリアンカレーですが、見た目の色からして上の写真(サッディイヤの右)とは違います。
最後に、開店してすぐにランチに行ったので準備が出来ていなかったのだと思いますが、全て食べ終わった所でウェルカムドリンクが来ました(笑)
ベリー系の味で美味しかったので、メニューのフレッシュジュースも試してみても美味しそうです。
食後に、南インドでよく飲まれているフィルターコーヒー(インディアンコーヒー)を頼みました。
通常、南インドのフィルターコーヒーはこのような金属製のタンブラーに入っているのですが、ここは普通のグラスの様です。
ベーカリーやスイーツも充実
ここのスイーツは美味しくてインドのスイーツやクッキーだけでなく、西洋風のケーキもよく食べます♪
こちらは私の好きなラドゥーと言うインドスイーツですが、また別の記事にしたいと思います。
タリーや他のメニューも頼みお腹いっぱいになってしまうので、スイーツ系はテイクアウトをしています。
見た目が日本のケーキと比べると地味ですが、味は結構美味しいです。(結構甘め)
MRAの場所
ドーハに数店舗ありますが、今回写真を載せているのはこちらの店舗です。
Googleマップには朝6時からと書いてありますが、ランチの営業は12時からです。
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